第8話 自己紹介

『いやーマジごめん。仮眠取るつもりが熟睡しちまってよぉ。悪い悪い』

陽気に謝罪するみっちー。

『おいオメー遅刻すんなって言ったよな?念押しまでわざわざしたよな?』

 あからさまに不機嫌な河島さん。

 ───空気はまがう事なく地獄だった。

「そのー……みっちーも悪気はなかったと思うんですよ。ここはどうか………」

『いや、どう見ても悪気ありありじゃねーか。コイツ自分本位の理由だと白状してるんたぞ』

無慈悲に助け船が撃沈される。

 正直みっちーの遅刻癖は擁護のしようがないほどにヒドい。

 ランクマでもザラにあるから気持ちはよく分かる。

『あ、河島さんお久っす。なんか不機嫌そうっすね。もしかして俺のせいだったりします?』

『逆にどうしてそれ以外あると思った?』

 ここまで底抜けに明るいと、もはや一周回って尊敬するわ。

『すんません河島さん!今日は初回なんで大目に見てはくれませんかね?』

『それ言う側なのどっちかというと俺の方じゃね?』

『そこをなんとか!!』

『…………チッ、結果で示せよ。それでチャラにしてやる』

───突如、河島さんから怒気が霧散する。

『マジすか!?』

『ただし、次はねーからな』

 …………許された、のか?

『やっぱり河島さんは優しいっすね。ヨシッ!遅刻した分以上に活躍するぞぉ、俺!』

『相変わらず調子のいいヤツだなお前。……はぁ、そんじゃ、改めて自己紹介だ』



『俺は"雑魚狩りの河島"です。多分言わずもがな知っていると思いますけど、このチームでモンスターを務めさせていただ………もう敬語はメンドウだから省かせてもらうわ。このメンツ集めた創始者だ。呼び方はなんでもいい。以上』

 丁寧な入りからとは思えないくらい雑に終わらしたな。

『次は俺!"みっちー"です!ヒューマンでタンクやってます!やきとりとは婚約者フィアンセ的な関係です!遅刻した分挽回すんで任せて下さい!!』

さらにみっちーが続く。

「────ってオイ!俺はホモじゃねーわ!」

『あ、じゃあゲイ?』

「同じだわ!」

『あんまそういう同一視このご時世やめた方がいいぞ』

「お前が振ったんだろ!」

『おーおめでとさん。後で末永くやってもらって構わないから次いけ次」

河島さんがどうでも良さそうに巻きで進める。

 今ので場が和んだ───かは分からないが、幾分か自己紹介しやすい空気になった気がする。

「"やきとり"です。役職はストライカーで、趣味は「Morganite」とボードゲームです。えーと、あとは………そうだ!これからよろしくお願いします!」

我ながら緊張していた割にはしっかり自己紹介できてた気がする………!多分だが。

『おいやきとり、なんかもっと面白いこと言え』

「河島さんそれ普通にパワハラっすよ………」

次までに考えとけとかいう河島さんのハラスメントはさておいて、自己紹介は続く。

『………ん、"コトねこ★彡"』

「………もしかしてそれが自己紹介?」

あまりに端的過ぎてラグとか通信障害を疑ったわ。

『アンタがあのコトねこ★彡!?モンスターで今一位の!?』

みっちーがモブみたいなリアクションをかます。

『………ふっ』

『ウォォォ!!スゲェェェ!!サインくれ!』

『一万』

『いや、金とんのかよ!?』

 本当にこんなのが、あのコトねこ★彡なのか信じ難い…………。


『……あのさぁ、このお遊戯会みたいな仲良しこよし、まだ終わんねーの?』

────突然、不快な舌打ちとともに嫌味な言葉を放たれる。

「誰だ……!?」

『黙って聞いてりゃ下らないコントばっかかよ。やっぱり"あまつかぜ"行きゃ良かったわ』

クソデカいため息とともにタラタラと嫌味を吐かれる。

 この声で分かった。さっきの二人組の暗い男の方。

 名前は────────。

『僕は"kS1n@JAPAN"。お前らみたいなのとは違って────

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