第1話 all-night
───高校二年の夏。
一般的には青春において、最高にして最大のビッグイベントが起きるとされているそんな期間。
俺は、ある意味運命的な出会いを果たした。
『Morganite』
世界に轟いたアプリゲーム。
話題は話題を呼び、いつの間にか総プレイヤー数1000万のビッグタイトルゲームの一つに成り上がっていた。
ゲームシステムは、モンスター陣営一人VSヒューマン陣営四人の非対称型対戦ゲーム。
勝利条件は簡単。
ヒューマン陣営は三人以上生き残ってモンスターを討伐すれば勝ち。二人は引き分け。逆に、三人以上倒れたらモンスターの勝利だ。
だが、そこに至るまでの道は単純ではない。
モンスター陣営にはキャラ選択、プレイヤースキル、索敵能力、戦術、判断力。
ヒューマン陣営には連携、射撃センス《エイム》、判断力が必要であり、スキル構成、武器、装備だけで勝敗の明暗を左右することも少なくない、非常に奥が深いゲームだ。
始めたのはリリースして一年ほどのあの夏。
『Morganite』の全国大会決勝を見たあの日からゲームを始めて、約二年間今の今までやり込んできた。
ランクは最高ランク帯の
『オラッ!!体勢崩した!"やきとり"あと頼んだぞ!』
ヘッドホン越しに活気溢れた男の声が伝わる。
「おっけ任せとけ」
そう応えると、俺は画面のモンスターに神経を尖らしてハンドガンを定める。
今対峙しているモンスターは『海底の生存者』。
クトゥルフ神話モチーフのタコのような化け物で、禍々しい目玉が印象的だ。
見た目に反して、いやむしろその超越者みたいなモンスターだからこそ、ファンの間で根強い人気があり、使い手も多い。
性能面では触手を使った遠距離攻撃が強力だが、逆に言えば近距離に潜り込めればこちらに利がある。
──勝負は
冷静に、まるで何千回目の慣れた動作のように。
今なら例え家の床が抜け落ちようと、狙う先は一切ブレない自信がある。
食らいやがれ、と心で呟く。
パキュン───────────!!!
激しい発砲音とともに、爽快な命中音が鳴り響く。
討伐完了の合図。モンスターが悲鳴を上げるとともに倒れ込む。
『ナイス〜!これ勝ったのデカ過ぎ謙信』
さっきと同じ男の声。
「なんだよそれ。それより、ナイスシールド。やっぱ上手いな"みっちー"」
『とーぜん!俺ってば最強〜!!』
「ああ、お前は間違いなく最強だよ」
VCを繋いでいるのは"みっちー"。
同じ
明るく気さくな性格で、親しみやすいヤツだ。
実力の方も申し分ない。むしろ俺より格上の手練れだったりする。
それこそ、プロチームにもスカウトされるほどのランカーだ。
そんなみっちーが、なんでアマチュアでやっているのか。
………理由は簡単だ。
『喰らえ俺の高速屈伸───!!』
───煽り厨だからだ。
『プロ入りは煽れないからヤダ。あと練習ダルい』とかいうふざけた理由で誘いは全て断ったらしい。
ランカー以前に人として終わってる野郎だった。
試合中は煽る上ふざけるし、対戦後の煽りも毎試合欠かさずやってる。
おまけに遅刻魔サボリ魔。擁護のしようがない。
それが比較的許されてる上、それでも組みたいというランカーから引く手数多なのは、そのムードメーカーな性格と、実力から裏付けされたものだろう。
「おい、煽ってないで次行くぞ」
ちなみに、みっちーはゲーム上だけの友だちで現実で会ったことはない。
本人曰く、俺とはそう歳は離れてない、イケてる好青年らしい。
『ん?ああ。でもお前時間大丈夫?』
みっちーが思い出したように尋ねる。
時計に目をやる。針は3時を指している。
ランクマの時間はとっくに終わっており、今やっているのはマルチ戦だった。
「あー……。まあ、このぐらい"普通"だろ。夜更かしなんて誰でもするもんな」
そうだ。大学生なんて夜更かしして当然、オールなんかもザラにある。
目的なく遊べる夜は大学生の特権だ。
眠る時間なんて惜しいったらありゃしない。
「むしろ、みっちーこそ眠たくなってきたんじゃないか?先に落ちてもいいんだぞ?」
ジャブ代わりに軽い挑発をかける。
みっちーはノリがいいタイプなのはわかっている。
『バカ言え。こっからが本番だ。そっちこそ寝落ちすんなよ!』
こんなド深夜なのにも関わらず、みっちーの威勢のいい返事が返ってくる。
「上等だ。どっちが先に落ちるかチキンレースだ!」
───こうして、俺たちは夜通し何の目的もなく、ゲームの世界へと潜って行ったのだった。
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