第3話:とりえず初デート。

僕は居酒屋「笑屋」の看板娘「西山 花音にしやま かのんちゃん」に私と付き合って欲しいって

告られた。


花音ちゃんは現在、某大学に通う女子大生の20歳。

一般的大学生と同じで、田舎から都会へ出て来て大学に進学した。

だから、今は郊外のマンションで、同級生の仲のいい友達とシェアしている。


で、夜は居酒屋「笑屋」で看板娘をしていて、僕を見つけたみたい。


なわけで僕は彼女と連絡先を交換した。

付き合うかどうかはまだ保留中。


まあ、付き合うって言ったって、僕は仕事が早く終わると「笑屋」に出かけるから

改めてデートの段取りを組まなくても花音ちゃんとは店で会える。

だけど、やっぱり店では一般の客と同じ扱いだな。

付き合うって意思表示もしてないし・・・。


ビールや、ハイボールを持ってくるたびに、花音ちゃんに耳元で囁かれる。


「まだ迷ってるんですか?」って。


他の客の手前、店に中で花音ちゃんを独占するのはまずかろう?

でもまた僕のところにやってきて耳元でぼそっと言った。


「明日の朝、連絡しますから」って言われた。


で、次の朝、僕のスマホの着信音が鳴った。

ほとんど業者からしかかかってこない僕のスマホ・・・ましてやこの朝早くに

かかってくるのは花音ちゃんしかいないわけで・・・。


「もしもし・・・花音です」


「はい、北村です」


「私、今日学校お休みですから午前中会えませんか?」

「お昼から友達とお買い物に行くし、夕方からバイトだけど午前中なら時間

空いてるので・・」


おお、今日は?・・・ああ土曜日か?

サラリーマンみたいに規則正しい生活してないから日付の感覚が鈍る。


ネット販売以外とくに用事がある訳じゃないから花音ちゃんとデートになった。

まあ、僕は自営で自由だから平日だろうが日曜だろうが関係ない。


昨夜、店にいた時、花音ちゃんは「連絡しますから」って言ってたけど、ちょっと

半信半疑な部分もあったんだ・・・だけど、ちゃんと連絡してくれたんだ。

ちょうどよかった・・・僕も花音ちゃんに言っておかなきゃいけないことがあるからね・・・。


で、某駅前で待ってると時間どおり彼女がやってきた。

コンビニの角を曲がって・・・。

遠くからやってくる私服の彼女を見て店にいる時とはまた違うって思った。

こうして改めて彼女を遠くから見るとひときわ際立ってるなって改めて思った。

思いの外、背が高くてスレンダーでけっこう足も長いじゃん。

髪が長いのも僕の好みだし・・・。


そう思うと、ちょっとドキッとした。


こんな綺麗な子に彼氏がいないのはおかしいだろ?

なんで僕なんだ?


それはちゃんと聞いておかないと・・・実は彼氏持ちなんです、なんて

言われたらお友達にだってなれない。

まあ彼氏がいたら、わざわざおじさんに付き合ってくれとは言わないか。


「お待たせしました」


「いやいや僕も今来たとこ・・・」


なんで待ち合わせの時、決まったようにアホなセリフを言うんだろ?


いいおじさんは若い女の子とデートなんかしたことないから、手に汗握るは

アドレナリンは出るわ、緊張するわで大変。


ぎこちなく花音ちゃんをエスコートしながら、ちょうど昼前だったので商店街

の中のレストランに入った。

お互い向かい合わせに座って食べたいものを注文した。

で、料理が来るまでに花音ちゃんに聞いてみた。


「花音ちゃんの過去のことを掘り下げたいわけじゃないけど、今まで付き

合ってた彼氏とかいなかったの?」


って言ったものの愚問だと思った。

こんな可愛い子に彼氏いない歴何年なんてことあるはずないだろ。


「ああ、言いたくなかったら答えなくていいからね」


「高校時代は、好きな人がいましたけど遠距離は私、無理だから別れました」


「遠距離か・・・僕も経験あるわ・・・そうなんだ、彼は田舎に残ったわけか?」


で、花音ちゃんは大学に入って以来ずっとひとりなんだそうだ。

しばらくの間、田舎に残した彼との思い出を断ち切れずにいたらしい。

お互い傷ついたんだね。


ま、それはそれとして・・・、

花音ちゃんは改めて僕とお付き合いしたいと、その場ではっきり言った。

僕に対する想いはブレてないんだそうだ。


同じことを何度も彼女に言わせて申し訳ないって僕は思った。

まあ、それも心に引っかかってて・・・。


つづく。


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