遊戯篇-支部長室
日本魔装自衛隊東京支部、支部長室にて。支部長の
猫宮は猫獣人の特徴である猫耳と尻尾を揺らし、小柄ゆえに地面に届かない足をぶらぶらと遊ばせて座っている。
それに対して魔楽は背筋を伸ばしてホテルマンのように立っている。彼が着るスーツはそのハンサムさを際立てて、妙な色気すら放っていた。
猫宮はノートパソコンの画面をじっと眺める。見ているのはネットニュースである。数々の記事が流れ中、一つの記事を見つける。
『米国との合同軍事訓練、新型アンドロイド「A-rise」の稼働実験成功へ』
彼女は苦虫を潰したような顔をして悪態を吐く。
「たとえ機密事項だとしても、不快だね。」
「刹那部隊の件ですか。」
「…合同軍事訓練と称した『MoD』の本拠地への攻撃。本拠地の破壊には成功したけど幹部らは逃亡。そして、本隊とは別に動いていた特殊部隊コードネーム『刹那』。彼等の活躍がなければ今回の結果は得られなかった。しかし、彼等は敵が放った自爆攻撃に巻き込まれて全滅。誰もこの尊い犠牲を知らない。そんな悲しい事ないよ。」
「人は忘れられた時が本当の死と云いますから。せめて我々だけでも覚えていなければ。」
「…そうだね。とりあえずマスコミの対応ありがとね。」
「いえいえ。仕事ですから。でもお会いしたかったですね。史上最強の魔導師と呼ばれるお方に。」
「そうだね。彼とまた会いたいよ。」
仕事柄、泣かないと決めていた彼女だが、そんな理性が働く前に彼女の目尻は仄かに濡れていた。
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