第5話  舞子、花嫁修業!

 次の日、舞子が何をどこまで出来るのか? 国王と王妃の前で披露することになった。舞子は、まず花をいけて見せた。舞子は華道の心得があったのだ。その腕間に、国王、王妃、チャールズは感嘆した。


 次いで、舞子はチャールズとテニスをしてみせた。舞子は、中学時代テニス部で、県大会のベスト8に進出したことがある。実は、チャールズよりも上手かったのだが、チャールズの顔を立てて少し手を抜いた。また、国王、王妃、チャールズの3人を驚かせた。


 そしてダンス、社交ダンスも経験者の舞子だった。舞子は恥をかかなくてすんだ。母親が教育ママで、子供の頃からいろんなことを習わされることに反発した舞子だったが、今は母に感謝するようになっていた。


 ピアノも演奏してみせた。クラシック。国王親子のリクエストに応えて何曲も演奏した。国王親子に喜ばれた。国王には、


「いつまでも聞いていたくなる」


と言われるほど好評だった。クラシックの曲だが、この世界には無い曲だったので新鮮さもあったのだろう。やることなすこと、舞子にとってプラスになる。舞子の印象はどんどん良くなっていった。


 だが、まだ書道を披露する機会は無かった。


 とりあえず、1番重要なのはダンスだった。そのダンスで合格点を貰えたのでハードな花嫁修業をする必要はなくなった。後は、パーティー会場などでの立ち居振る舞い、貴人に対する立ち居振る舞い、要するに王太子妃としての立ち居振る舞いをぼちぼち学ぶだけだった。挙式まで1ヶ月。楽な1ヶ月になりそうで、舞子は安堵した。



 そんな舞子に、国王夫妻が笑顔で話しかけた。


「舞子さん、料理は出来るのかな?」

「はい、平民の食事ですが」

「一度、舞子さんがいた世界の料理をたべてみたいのだが」

「わかりました、作ります」


 “何にしよう?” 考えた舞子は、片っ端から作ることにした。食材と調味料は揃えてくれる。


 寿司、オムライス、カレー、シチュー、ハンバーグ、お好み焼き……。テーブルの上に乗せきれないくらいの料理を提供した。どれも好評だった。きっと、庶民の味が新鮮だったのだろう。サヤカは、料理の食材と調理法をメモしていた。真面目な娘(こ)だ。


「いやぁ、これは美味い」

「いつでも作りますよ」

「この寿司というのはいいな、発想が良い」

「シチューはこちらにもあるけど、舞子さんの世界のシチューとは少し違うわね」

「うむ、この“お好み焼き”というのもいいな」

「お好み焼きに似ていますが、こちらはモダン焼きです。こちらもどうぞ」

「うむ、美味い。時々、作ってくれると嬉しいな」

「はい、本当に作りますよ。いつでもお命じください」

「じゃあ、時々頼むよ」

「お願いしますね」

「はい!」

「ところで、国王、王妃両陛下にお願いがあるのですが」

「なんだい? 言ってみなさい」

「チャールズ様にもお願いなのですが」

「何? 言ってごらん」

「サヤカを侍女ではなく私の友人として扱うことをお許しください」

「なんだって?」

「なんでそんなことを? 舞子さんは寂しいの?」

「チャールズ様がいらっしゃるので寂しくはありませんが、この世界でも女友達が欲しいんです。ダメでしょうか?」

「いや、構わないよ。ねえ、父上」

「ああ、構わん。サヤカ、侍女兼舞子さんの友人として、舞子さんと接しなさい」

「は? はい!」

「よろしくね、サヤカ」



 サヤカはかなり恐縮していたが、数時間後、大浴場でキャッキャと騒ぐ仲の良い2人の姿があった。







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