第4話  舞子、婚約する!

「あ、舞子さん、ドレスアップしたら、更に綺麗になったね。じゃあ、食道へ行こうか、両親と食事だよ」

「え! ご両親ですか?」

「そうだよ、挨拶がてら行こう」

「チャールズ様のご両親ということは、国王様と皇后様ですか?」

「そうだよ、大丈夫、緊張しなくて良いから」

「緊張します-!」

「いいから、行こう!」


 チャールズは舞子の手を握った。舞子は、チャールズと手を繋いだことで安心した。チャールズは、安心感を与えてくれる。こんな男性は、今までに出逢ったことが無かった。



「お父様、お母様、僕の婚約者を紹介します! 舞子さんです」

「おう、私は国王のメルヴィンだ」

「私は、王妃のカトリーヌよ」

「舞子といいます、よろしくお願いします」

「まあ、座ってくつろぎなさい」

「舞子さん、座って」

「失礼します」


「チャールズって、面食いだったのね」

「そうじゃな、本当に美しいお嬢さんだ」

「あの、私、平民なんですけど、よろしいんですか?」

「ああ、構わん、構わん」

「チャールズは第2王子だから、好きにさせているのよ」

「と、おっしゃいますと?」

「第1王子のアイザックは、もう結婚しているのよ。子供はまだだけど」

「私の後継者は、第1王子のアイザックじゃからなぁ」

「ということは、チャールズ様は第2王子で、王位を継承しないので、妻が平民出身でもいいということでしょうか?」

「まあ、そういうことじゃ」

「でも、それだけじゃないのよ。王族の男子は18歳で結婚しなければならないのだけれど、チャールズは“本当に愛せる人としか結婚しない!”って言って、なかなか結婚しなかったのよ」

「そうなんですか?」

「そうなのよ、もうすぐ二十歳になるから気にしていたのよ」

「では、チャールズ様は今、19歳ですか?」

「もうすぐ二十歳だよ」

「舞子さんは、お幾つ?」

「あ……26歳になりました」

「まあ、年上の妻というのもいいものじゃろう。カトリーヌも、私より3つ年上じゃからなぁ」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

「よし、挙式はチャールズの誕生日にしよう。来月、1ヶ月後じゃ」

「では、舞子さんは花嫁修業ね」

「はい、よろしくお願いします」


 舞子は躾が厳しく、幼い時から華道、茶道、書道、料理、社交ダンスなどを習わされていた。“こんなこと習ってどうするんだろう?”と思っていたが、こんなところで役に立つとは思わなかった。


「舞子さん、チャールズが結婚することになって本当に良かったわ。ありがとう」


「お話が盛り上がっているところ申し訳ありませんが、舞子様には何か秘密があるようですぞ」

「なんだ、ハクオウ。そんなことを言うためにそこで控えていたのか?」


 チャールズが面倒臭そうに言った。


 舞子を斬ろうとしたオジサマだった。座りもせずに脇に控えていたことには、舞子も気付いていた。だが、ここまできて文句を言うとは思わなかった。


「どうしたのじゃ、ハクオウ?」

「舞子様は、私が斬ろうとしても斬れませんでした。魔道の心得があるのかもしれません」

「本当なのか? 舞子さん」

「はい、本当です」

「どういうことかな?」

「私は異世界、この世界とは異なる世界からやって来ました。うっかり、寿命を全うせずに死んでしまったので、女神様? にこちらで寿命が尽きるまで生きるように手配してもらったんです」

「陛下、やはり怪しいですぞ」

「私は、寿命が尽きるまで死ねないようになっているんです」

「それで斬られても平気だったのか?」

「平気じゃないですよー! 鉄で叩かれたら痛いですよ-!」

「舞子さん、異世界から来たという証拠はありますかな?」

「こちらをご覧ください」


 舞子は携帯電話を取りだした。

 写メを1枚撮る。


「いかがですか?」

「なんと! 私が写っておる」

「こんなことも出来ますよ。国王陛下、何か喋ってください」

「チャールズ、舞子さん、婚約おめでとう」

「ほら」

「おお、私が動いておる、声まで聞こえる」

「それは、魔道では?」

「違います、科学です。私は、科学が発展した世界から来ました。この世界も、あと何百年かすると、このような技術が取り入れられるようになります」

「うむ、私は舞子さんを信じる」

「私も舞子さんを信じますわ」

「ということだ、ハクオウ、今後舞子さんを否定するようなことは絶対に言うなよ」

「わかりました」


 ハクオウは黙った。ハクオウの、舞子に対して敵意を表さなくなっていた。ハクオウはハクオウなりに、舞子のことを認めたようだ。



 舞子は食事を終えると豪華な部屋に案内された。


「サヤカさん、何、この豪華な部屋は?」

「こちらは今日から舞子様の自室になります」

「めっちゃ広いんですけど。ベッドも豪華だし」

「慣れれば、きっと広いとは思わなくなりますよ」

「そうなのかしら?」

「では、朝になれば起こしに来ますので」



 サヤカが去ると、舞子は着がえもせずにベッドに寝転んだ。ドッと疲れが出た。いつの間にか、舞子は眠ってしまった。これが、舞子の転生初日だった。







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