第5話

 みんなもう寝ちゃったのか…今日はいろいろあったから疲れたんだろうな。


 異世界にも月はあってキレイなんだな。


 …なんか暇だ、オレはロボットだからかな、全く眠気がない…このまま一人で過ごすってことか…仮に誰かが居ても口のないオレは喋れないからコミュニケーションは取れないんだけどね。


 そろそろ口も欲しいところだ…。


 ん?さっき大岩の横の茂みが動いたぞ。


 まさかガロウ族の奇襲か⁉️


 いや、そんな感じじゃないな…あれはなんだ?


 …近づいてみるか。


 ううん…やっぱりこの短い足じゃ全然前に進まない…。


 …やっと到着した。ところでこの動いているのはなんだ?


 三角の布?水色と白の縞々しましま…これってまさか…。


 「カサカサッ」


 オイオイオイオイ、どうしてホルンがこんなところにしゃがんで下半身を丸出しにしているんだ。


 どうして顔を真っ赤にしてオレを見つめるんだ!


「……ケモ神様のエッチ」


 エッチって、どうしよう…見ちゃいけないモノを見てしまったんだよな。


 顔を背けようとしても、この足じゃうまく旋回できない。


 さっきからあたふたして足をバタバタしてるだけだ。


「…ケモ神様、もう終わったよ」


 …いったい何が終わったんだ…下半身を丸出しにしてホルンお前は何をしていたんだ。


「ウチって昔からパンツを全部脱がないとおしっこできなくて…でもまさかケモ神様が覗きにくるとは思わなかったよ」


 ってオレは覗き魔みたいに扱われてるの⁉️


 それは誤解だよ。覗く気なんて全然なかったんです。冤罪です。


「……でも、ケモ神様だったら見られても良いかなぁ……みんなを救ってくれた勇者様だしね」


 勇者だからって覗きはダメでしょう…。


「ってのは冗談っ♡」


 冗談かいっ!この娘は男心を弄んでいますよ!


「ねー、もう真夜中だし…ケモ神様、一緒に寝よう」


 おいっ!オレの足元で横になって寝るな!


「…んん…ムニャムニャ……」


 もう眠っちまった…もともと眠気はなかったが、ますます眠れなさそうだな…。



  ところでこの異世界はどんな世界なんだろう……。


 ホルン達みたいな獣の耳が生えた獣人はいるし、ガロン族のように人の声を出せる大きな狼もいるし、改めてオレがいた世界とはかなり違うな。


 はたして前世のオレみたいな人間はいるのだろうか……?


 もしかしてこの異世界では前世のオレみたいな人間は希少だったりするのかな……。


 オレのパーツもダンジョンの宝箱から見つかるし、実際にダンジョンってどんな場所なんだろう。


 行けることなら一度は覗いてみたいかもしれない。


 アニメやゲームにありそうな不思議でワクワクする体験ができるかも。


 でも逆に危険なモンスターもたくさん出現して、とんでもなくデンジャラスな場所かもしれないな。


 そうなるとか弱いホルンは連れて行かないか。


 とにかくこの異世界は、オレにとって謎の多い不思議な世界ということか。


 ―――しかし、朝までが長い……。


「バンッ!」


『鉄壁のスキルを発動』


 ホルン!寝ぼけてオレに蹴りを入れやがった。


 しかも鉄壁のスキルが発動するってことは、ホルンの蹴る力はまぁまぁの破壊力があるってことだよな。


 ……また蹴られては困るし、少しホルンから離れるか。


 ―――しかし、朝までがホントに長いなぁ……。

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