第14話 愛してやまない骨壷

東堂さんの豪邸についた。

というより私の自宅なので帰宅と言った方が正しいのか。

あーややこしい。

部屋に飾ってあった東堂さんの"妻"だと思っていた女の写真は、私が過去にインタビューを受けた時のものや表彰された時のものだった。

あ、そうだ。

じゃあ、あの骨壷はなんだったんだろ。








…………。






あぁ、そうか。






明希あき……」




私が22歳の時、明希は18歳でいなくなった。

早くに両親を亡くした私の、たった一人の家族だったのに。

生意気だけど、愛してやまないたった一人の可愛い弟だったのに。


育った養護施設を出てすぐに働き始めた会社で、初めて企画を任されてそれが通りそうだった。

ろくに睡眠も取らずに、企画書の訂正、修正、書き足し、削り、全て楽しそうに毎晩自宅に持ち帰っては夜中までやってた明希は本当に輝いてた。

やっと完成した企画書は見事通り、養護施設出の18歳の企画書が通るなんてのは異例中の異例だったらしい。


でも。

いざ、その企画書が形になろうとしていく矢先で明希は担当からあっさり外された。

企画内容自体は認められたものの、なんの実績もないワケあり家庭の18歳が発案しましたと取引相手にプッシュするには企業側としては『心象が悪い』と判断した結果らしい。


その時、発案者としてプレゼンを任された男はこれを機に部長に昇進。

その後、その男は何かにつけて明希に仕事を回してくれてたようだけど、もうその頃の明希の心は疲弊しきってて、これをやる気がないと解釈したらしかった。


「心が弱すぎる」


「もっと社会人としての自覚を持て」


「頑張れ」


と激励の意味で声を掛けてたらしいけど、明希にとってはプレッシャーの何物でもなくパワハラに近い感覚だったと思う。


それでも明希が遺した手紙には、その上司について感謝の言葉しかなく、しかもとても前向きに特攻隊かよと思うほどの文面で。

最期は元気よく


「行ってきます!」


と締めくくられてあった。

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