>青の男の手にあった輪は解け、伸び、鮫へと巻きついた。
> 男は不動の姿勢のまま、腕だけを使い鮫をとらえ、腕だけを振って鮫を宙へと戻した。
アクションの流れ的に不可解です。
鞭を巻き付けるのはよいとして、それをどうやったら宙に戻す=上方向の力を与えられるのか。一読して何をしたのか見えてきません。鮫の頭が落ちてるのも理解不能です。
普通の鞭ではありえない能力を描く意図なら、傍点を振るとかで特別感を演出すべきです。
私なら、ここは鞭で「打つ」ことで、鮫を逸らします。これなら「痛みで鮫が逃げた」「鮫が動くほどの一撃」と、わかりやすい絵面なので。
>飛翔鮫フライングシャーク、二足鮫ウォーカーシャーク、土龍鮫トレマーシャーク
ここはワクワクしますねw
問答無用のアポカリプス感。
「俺はB級作品だ!」という自己主張が詰まってますw
>鮫は人語を介さないが、
ここの「介する」は微妙に違う気がします。
「白人は日本語を介さない」て言わないですし。
【介する】間におく。なかだちとする。
「解する」の方がニュアンスは近いような。
>どころか、精々三〇ほどの鮫を息絶えさせただけだった。
えっ、結構倒してますね。
空飛ぶ大型鮫相手に、石と刀でこれは出来過ぎでは……三匹くらいでいいんじゃないです? 銃座や大砲とかあるなら三十もアリですが。
>問題は、奴らは人とは違う行動原理を持っているということだった。
ここも疑問。
「ボスの命令で動く」って、人と同じ行動原理でしょう。
>「娘を助けてくれて、ありがとう」
この展開なら、冒頭で鮫をしばく場面で娘を助けた方がわかりやすいかと。
>「なぜ? おまえは勇敢な戦士だった。自力で生き残れたのはおまえと、あとふたりか三人か」
ははあ。これが三十倒せた理由かもですね。
そうなら、前段の説明の方に「村人には数名の戦士がいて」的な説明があった方が納得しやすそう。
>「子種はもらうからね、よろしく」
このキャラは好きw
>無骨な誘惑女が去ってから一刻ほど後のち——
> 草木もようよう眠ろうかという刻限だった。
ここで溜める意味がわかりません。
普通に繋げていい気が。
>二輪へ跨り
ここで「へ」って使いますかね? いや、使うこともあるのか?
……調べてみましたが、とりあえず用例は見つからなかったので指摘だけしときます。間違ってたらスミマセン。古語的なやつ?
>「あんたみたいな強い男は、女を孕はらませる義務がある。好もうと好むまいと。でなけりゃ、人類は滅ぶ」
世紀末ぽくてお気に入りの台詞なんですが、多少オーバーにも感じます。思うに、この時点で男の強さのアピールが足りてないのが原因かと。冒頭のバトルで超人的な強さを見せつけてれば納得の台詞なんですが。例えば男一人で襲撃した鮫を全滅させたとか。読者がたまげるような超絶テクとか。
娘を助けられた戦士女くらいなら、直接の恩があるし違和感ないんですけどね。
> 男は右手に鞭を、左手にボウガンを持ち、立ち上がった。
両方とも遠距離武器(鞭は中距離?)なのはオススメしません。
片手くらいは近距離武器の方がバランスいいかと。
>あの村にいる間中、耳鳴りが酷かった。
よい伏線ですね。
>鮫、鮫、鮫。飛翔鮫。
よいw
>かわし、鞭を叩き込み、よけ、巻き付けて、叩きつけて、打つ。叩いて、矢をつがえ、蹴り、体をずらして、打ち、踏みつけ、裂く。
こういう簡略表現は、まずしっかりとバトルを描写し、「男に何が出来るか」を伝えた上で出すべきものです。
男がどんな能力を持っているのか、なぜ鞭で鮫を倒せるのか(普通は倒せませんよね?)、という部分の説明があった上でないと読者は置き去りになります。「よくわからんけど、なんか強いんだね」という印象です。例えば鞭とボウガンで「裂く」ってどうやって?とか。踏みつけて裂くって、男はよほど怪力なの?(そんな描写はない)とか、疑問が先に立ちます。
鮫の方の描写も少ないので、ここも冒頭時点で描写が欲しいところ。サイズ感とか脅威とか。
>『おまえはなんだ』と鮫は問うた。
ここは何語でしゃべってるのか、テレパシー的なものなのか。一言説明が欲しいところ。
>ボス鮫が巨体を、取り巻き以上の速度で駆り、男へと突進してくる。ひらり、と交わしたかに見えた、男の左腕は、ない。
> 食いちぎられている。
バトルの表現は色々考えられますが、ひとまずこの書き方だと迫力不足ですね。ボス鮫の重量感、鋭い歯並び、その突進を軽やかにかわす主人公、だが──という感じで、まずボス鮫を上げて、主人公を上げて、その上で「食いちぎられている」に繋げた方がインパクトが出ます。主人公の反応(驚きでも痛みでも無表情でも)があれば、なおよし。食った腕はどうなってるのか、呑み込むのか吐き捨てるのか、という描写もあれば残虐さが見えてなおよし。
>交わしざま、鞭の一撃が鮫の目を襲う。が、よけもせず、また痕跡も残らなかった。
鞭は近距離だと使えない武器なので、交わしざまにどう反撃したか絵面が浮かびません。
ここも「鮫を一撃で仕留めるほどの鞭」など、主人公の強さを押し上げる説明を加えた上で、「痕跡すら残らない」とした方が、ボスの異常さが際立ちます。
>『よせ! なにをする! それはおまえの母親だろう!』
ここら辺のボス鮫の人仕草は、正直まったく共感できません。
これだけ人間臭いのに、主人公と久しぶりに(多分)会ったであろうに驚きも挨拶もなく、何故か母親(人骨)に執着してるし。断片からキャラを読み取ろうにも理解不能です。人間に理解があるでもなし。何を考えてるんだ、この鮫。
>「鮫のくせに滑稽な。遺骨ひとつ取り戻すために何人を殺した? おふくろだって浮かばれまいよ」
ここら辺の台詞も、物語の背景が浮かんでこないというか。このボス鮫は、人類襲ってる鮫全体のボスなのか、一部隊レベルのリーダーなのか。鮫が人間を襲う理由がそもそもこれなのか。村長は骨の価値を知ってたぽいのに、なぜさっさとくれてやらずに守り続けてたのか。そもそもどうやって鮫が人と子供を作れたのか(まあこのレベルだと浪漫で済ませていいですがw)。
別に事件の概要について説明が欲しいとまでは言いませんが、想像力で道筋を補える程度の情報の断片は欲しいところ。
>鮫が怒りをそのまま体に乗せて、男を食いちぎらんとする。男は鞭を振るい、伸びた鞭はピンと張り詰めた。伸びた鞭ごと鮫の顎あぎとは男の上半身を捉えたが、脳天を突き抜け、鞭は屹立していた。
ここのバトル描写は、情報の出し方の順番が不自然。
漫画のコマ割りで考えればわかると思います。
私ならこう書くというコマ割りの順番は、
鮫が怒りにまかせて襲いかかる>鮫の顎が大きく開き、男の上半身を呑み込む>無数の牙が男を切断する寸前、男が鞭を使う>鞭が張りつめ、変化する>鮫の後頭部から鞭の先端が飛び出す>鮫の動きが止まり、絶命する
「鮫に呑まれる」を限界ギリギリまで引っ張り、危機を演出した上で逆転に持ち込む方が躍動感が出ます。
それともう一つ。
「鞭が剣のように使える」はよくある要素なのでそこは否定しませんが、「そんな使い方がある」と読者が納得できる伏線は、事前のバトルで提示しておくべきです。これは同時に前述した「何故鞭で鮫を倒せるのか」のアンサーにもなるはずです。
>飲み込まれていない左腕で口を押し開くようにして。
ここは一見してわかりづらいです。
食いちぎられた左腕が飲み込まれず口の中に残っていて、その腕で口を開けたのかな?と思いました。「新たに生えた左腕」とかの方が明快かと。
>それは父親から受け継いだ、異形の力。無尽の生命力を持つ、鮫固有の力だった。ボス鮫でなければ、精々が歯の再生ぐらいしかできないだろうが。
ボス鮫の再生シーンがカットされてるので、ここは逆に違和感が先に立ちますね。まあ全身再生もどうなのとは思いますが。
バトル的にはこの異形の力を使って勝利してこそ燃えるし意味があるという気がします。鞭の技は何のバックボーンもなく、テーマ足り得ないので。武器は、そのキャラの背骨なので、ここはこだわりがあってもよかった気がします。鮫を材料として作った鞭なので、ボス鮫遺伝の能力で自在に動かせる!とか。
>いまは鞭を持たない右手に懐から出した銃を構えて、
あれ、銃のある世界観だったんですね。
でもここは正直余計と言うか。鞭より銃の方が強いのかよ?ってなるのでマイナス感。せめて止めはボウガンにすべきかと。
>道具として使ってしまったが、そうしなければ勝てない相手だった。
バトル内容的にはそう思えないのが残念。
ボスの強さをもっともっと演出すべきでした。
>いや、あんなに人間臭い鮫はそうそういないのではないか。きっと、おふくろが死んでから何も口にしていなかったのだろう。でなければ、脳天を貫かれたぐらいでアレが死ぬはずがない。
ここら辺もまったく理解できないところです。
そんなヒューマニズム溢れる鮫が、なんでその妻の息子は余裕で食い殺せるんですかね?
主人公にしても、ボス鮫を倒す動機が謎のままです。
こんだけ話の通じる相手なら、遺骨返してグッバイすればよかったんじゃ。別に世界を鮫から取り戻すために戦ってたんじゃないですよね?
>男も朗らかに笑い、食べ、飲んだ。
朗らかなのは、ちょっと意外。
寡黙なキャラかと思ってたので。
拝読。
とりあえずバトルを中心に突っ込むだけにしようと思ってましたが、読み返すと色々気になって、結局全体的に指摘対象になってます。
ストーリーはまあ、菊地秀行というか吸血鬼ハンターDのパロディ、オマージュの範囲なので、事細かな注文はつけません。鮫と人間のハーフでシャーピール!くらい振り切ってもよかったくらいでw
ただ、スロさん独自の味付けが、かえって物語の理解を阻害し、最後まですっきりしなかったのはあります。具体的には父親のヒューマニズム要素とか。
Dもそうですが、あれは主人公の寡黙さと貫禄で理屈を振り切ってる部分が特徴で、そこの貫禄が今作だと足りてない。敵が外道で勧善懲悪路線なら描写不要ですが、冷徹でもない主人公と人間臭い鮫の闘いなので、読者的に引っ掛かるのでは、と。同じ話でもこれ、主人公がDみたいなのなら「よくわからんが非情だからなこいつ」で許されたのかもですがw
最後の女との絡みは追加し過ぎだと思います。
女との絡みは中盤の子種要求くらいの方がバランスがいいかと。
というか、その分をバトルに注いでもらいたいですw
バトルについては、まあ色んな書き方があるので正解はこれとは言えないんですが、私の好みを基準に指摘すると。
・主人公の強さの裏付けがない
鮫ハーフだからと最後にわかりますが、それが戦いで生かされてる描写がない。
・鮫ならではの強さの描写がない。
ロレンチーニ瓶とか、鮫設定はもっと使えそう。
飛翔鮫の息子なら空飛べてもいいわけで。前述しましたが鮫素材の鞭とか。とにかくこの主人公ならではの能力やバトルを渇望します。
・描写が平坦
まあ菊地バトルもやや平坦ですが、大コマ演出がとかく上手いのが特徴です。今作だと「食いちぎられている」とかは上手いとこです。が、それ以外の部分で躍動感に乏しく、盛り上がりに欠けます。理屈で読者を納得させつつ、理屈抜きで燃えさせるのがよいバトルのコツだと思います。
・バトル上の伏線がない
最後の脳ブチ抜きは、まあわりとよくあるパターンなんですが、演出と伏線がちゃんと置かれていればもっと映えると思いました。そのためにも前段でしっかりと主人公を紹介するようなバトルが欲しいところ。冒頭を軽くするなら、中盤でもう一バトル入れてもいいくらい。そういえば手袋の伏線はなんだったんでしょう? てっきり掌に顔があるのかと思いましたがw
・全体的に
前段で超人的個性的なバトルを見せ、後半で出自が判明することでそれを納得させた上で、その能力の延長線上で強敵であるボス鮫を倒す。この流れが理想的だと思われます。武器、技、能力、性格、個性の全てをそこに向けて調整しておくのが、バトル書きのコツです。
──とまあ長々と書いてきましたが、菊地フォロワー的な小説は滅多に見かけないので、そういう意味では楽しめました。鮫と言う材料や世界観は好きです。ボス鮫の設定は何とかしてほしい。
バトルについては、私がマニアすぎるだけなので、まあ話半分くらいで。私が書いたらこの五倍の文量をバトルに費やすと思いますしw
B級作品の追求、という意味では成功してますが、完成度重視の私的には物足りない。そういう意味で星2です。
作者からの返信
うひょう、すげえ!
ありがとうございます、梶野さん。
これ返信も気合い入れないとなんですが、缶ビール片手に散歩中です😅
アクションのとこは自分でもわかるぐらいテキトーすぎたんで、ちと梶野さんの意見参考に書き直してみようかな、というのはありつつ、バトルには絶対必要であろう距離感やスケール感、なんも考えず書いてて……お恥ずかしいかぎりで。
ボス鮫は、まあハート様ぐらいの感じなんで、そこらへんも追加が必要かなあ、とは思いつつ。
そもそも箱の中身、直前までまでどうしよどうしよ、と悩んだ挙句、本来であれば裏設定であるべきJが鮫と人のハーフであるも、もろ出しちゃいました、という行き当たりばったり感。
まあ、また後で個別の解答? 返信用意します!
体調不良とかあったなかで、細かいところまで見ていただいたようで、ほんとありがとうございます。
神風、期待してるでよ!😉
うーん、「ヴァンパイアハンターD」と「ゴルゴ13」を足してサメで割ったようなストーリー? 途中の女性からの誘いに乗っていたら、はっきり「ゴルゴだぁ」と書くところでしたが w。
劇画調のほどよいコンパクトさと、後味のいいドラマが魅力的です。「あんたみたいな強い男は、女を孕ませる義務がある」という至言を吐く女性とか、最高です 笑。が、さすがにラスボスのサメが自分の父親だったというのは、まあ謎要素のままで終わらせるにしても、なんか読み手の方で勝手に設定を補完できるような材料があったなら、と思わないでもありません。逆に言うと、設定的な点を除けば、書かれてある文章全体、アクションシーンから濡れ場寸前のやりとりからラストシーンから、ケチのつけようがないええ日本語やと言えるんですが。
まあそれにしても、この流れだと、「子種をや」ったことにしておいても、全然不自然ではないと思いました。二、三行で短く説明するにしろ、長めに叙述するにしろ。
作者からの返信
ゴルゴ! そのイメージはなかったですけど、そうか、ノリ考えるとそう、なのか……?🤔
いやまあ、菊地秀行、『バンパイアハンターD』の精神的パスティーシュですw(文体とかではなく、の意)
アイアムユアファーザーネタはもはやわりと定番ですが、特に長く続ける意図はないよー、という意味でしょっぱなのボスですw
流れや展開次第では、濡れ場やってもよかったんですが、あれえ、こいつ絶対やらねーな、となっちゃったもんで。手袋を外さない、イコール鮫肌だからネタも特に御開陳されることなく……メタ的には、運営のチクリチクリが効いてたのもあったかもしれませんw
濡れ場もね、華なんですけどねえ。いや、でもJはやらねえな、とw 父親がボスだと、一緒に生活してたのか問題とか、鮫のスケール問題とか、あとで読み返して自分でも🤔な箇所あったんですが、まあそこはご愛嬌ということでw そーゆーところが気になり始めると、テノヒラ状態になっちまうので。
しかしタイトルの時点で、読み手が気づくかどうかは別として、主人公は鮫とのハーフである、というのを明言しちまってるようなものなんで、そうと思わない読み手への配慮が欠けていたような気もします。
いつもながらの力の入った感想、ありがとうございましたッ!(安西先生に対するように)
編集済
面白かったです!
めくられまくっていて、勉強になりましたwww
今回はエロ味が少ない方で良かったように感じました。
なんか鮫親子と村の親子の関係を考えると、男女薄めの方がスッキリ読めて。
追記
これが俺の本来の作活の場、カクヨム。
それが、あんな名状し難い部活に関わったばっかりに!!
俺のカクヨムを返せ!的な?www
追追記
活動サイクル的になんですねw
今どきのティーンみたいなハマり方w
作者からの返信
こちらこそ、梶野さんにちゃんと感想の返事し損ねてたの思い出せてよかったです助かりました。
てか、このあとぐらいからおかしなことになってんのやであなたのせいでwww
追記返信:ちゃうちゃう。三月だけ張り切って出てきて、惰性で五月ぐらいまでいて秋には休眠して、また三月になると動き始める感じw
多分部活なかったら、こんなに頻繁に出入りしてないわw