第13話 つづいて協力者と計画を練る②
「その琴吹とかいう女をひねり
「ぜひとも、やめて欲しい」
「あら、そう?」
とんでもない提案をしてくるヤベー女に断固とした拒否を突きつける。いったい何をするつもりなのか分かったものではない。
「俺が彼女を『ネトル』からどうか見逃してやってくれ」
「そうなると、私のプライドが許さないんだけど?」
「もちろん、君の得になるよう動くから」
「ふーん、具体的にはどのように?」
疑わしげにこちらを見つめてくる彼女に説明する。
「俺は浮気した一条先輩の姿を、琴吹に見せつけることによって二人の仲を引き裂こうとしている」
「それで?」
「加えてだ、きっと傷つくであろう琴吹に優しい言葉をかけにいくつもりだ、俺が」
「それはなんとも、こっすい手だこと」
「でも、有効だろう?」
俺が言ってやると、彼女は「まあ……そうでしょうね」と渋々ながらも首を縦に振る。俺もそこは否定されない確実なところだと思っていた。
人に裏切られた人間というのは不安定だ。
そして琴吹がそうなったとき、俺は優しい言葉を彼女に投げかけることで『この人だけは私を裏切らない』という認識を持ってもらうつもりだった。
その関係は恋愛じゃない、ただの依存だと、異を唱える人もいるかもしれない。
しかし依存し合う関係ほど恋愛感情と誤認しやすいものもない。
最初こそ、俺がいなければ何もできなくなるほどズブズブに依存させるつもりだが、徐々に徐々にその感情を恋愛の方へとシフトさせていく所存である。そうして俺の『ネトリ』計画は完遂されるのだ。
そのためにこそ俺は、琴吹からの印象を良くしようと躍起になってきた。
絶対に成功させる。
そんなふうに意気込んでいた。
「それがいったいどうして、私の利になるのかしら?」
すると高梨が尋ねてくる。
俺は
「うん、その過程として琴吹には一条先輩への想いを断ってもらうつもりだ」
琴吹には一条先輩をキッパリとフッてもらう。
あなたのことはもう好きではありません、とそう告げさせるのだ。
「そうすれば、一条先輩だって男の子だ。こっぴどくフラれれば気分も落ち込むだろうさ。あんなのでも男の矜持くらいは持ち合わせているだろうし」
「そこに私がつけ込んで、サトルを
「そこで傀儡とか言えるのが怖いよ……せめて『愛の奴隷』とかさ」
その方法としては先ほど述べたとおりである。
落ち込んでいる人間ほど、他人に依存しやすいものはない。
用済みの一条先輩への後始末は、目の前の美少女に一任する気であった。
「俺の計画の概要としては以上だ。成功すれば、君は邪魔な
「なるほど……ね」
俺が「どうだろうか?」と問うと高梨は「少し考えさせろ」と、黙り込んでしまう。
俺は彼女の返答を待つ間、様々なことを考える。
いまだ計画には漠然としたところが多い。そして計画を実行するまでの間に、どれだけの労力と時間がかかってしまうかも未知数だった。もしかしたら、俺が『ネトリ』を完遂させるよりも前に、一条先輩が学園を卒業してしまう可能性すらあるとまで思っていた。
しかし、高梨という協力者を得ることができれば、今よりもっと展望が開けるようになる。なにせ彼女は一条先輩のことを慕いながらも決して自然な恋愛感情を持たず、彼の心を射止めるためには手段を選ばない少女である。
これ以上の人材はいない。
本音を言ってしまうならば、一条先輩の『浮気相手』の確保というのが計画において一番困難な作業になると思っていた。どうやっても見つからないことは、もちろん想定していたし、その際にはプロの『別れさせ屋』に依頼することさえ考えていた。その高額な依頼料を捻出するために、また頭を悩ませていたぐらいだったが……もし高梨が協力を申し出てくれるなら、その問題はすべてクリアとなる。
喉から手が出るほどに彼女が欲しい。
そう思ってしまうくらいには俺は彼女に期待していた。
なのでなんとか良い返事をもらいたい。
そのように
「いいでしょう、協力するわ。私がやらなくちゃいけないことは何かしら?」
どうやら俺の『ネトリ計画』は着々と進行しているようである。
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