第7話 まずは彼女と対話する④
「一条先輩ってどんな人なんだ?」
本題は済んだとばかりに琴吹へと尋ねる。まるで気楽な世間話をするようにしているが、しかしそれは『次の策略』のために必要な情報収集であった。
琴吹もなんら疑問を
しかし、その際のやり取りを詳細に記載するとなると、俺の精神衛生にとても良くない。誰が好き好んで、自分の彼女を奪っていった
よって、要点だけまとめさせてもらう。
琴吹と間男──一条先輩は、今から
んな漫画じゃあるまいし。
色々とツッコミたいことはあったがグッと我慢する。
がんばれ俺、負けるな俺。
そうして出会っちまった二人だが、同じ学園に通う学徒であったことが判明すると、少しずつ交流を深めていくことになる。出会いが出会いであったこともあり、琴吹は一条先輩とふれあう
そう、彼氏である俺に対しては覚えなかった、胸のドキドキをだ。
琴吹は「まさか、これが恋って感情なのかな……って、戸惑った」としんみりとした様子で独白していたが──
じゃかあしぃわっ! それは恋なんかじゃねえ!
と、言いたくてしょうがない。
泣くな俺、くじけるな俺。
そのように、ゆっくりと
そしてついに、その日が訪れる。
それは今から四日前のことだ。
琴吹は一条先輩から愛の告白を受けた。そして驚きに頭が真っ白になりながらも、思わず「私も好きです」と了承してしまったのだという。その後は彼の導くままにホテルへと向かうことになり、ついには超えてはいけない一線を超えてしまったのだと──
なんつうか、もう、吐きそうである。
いや、これ頑張れねぇよ……俺。
話を聞けば聞くほどにダメージが蓄積し、最後には撃沈してしまった俺である。だが、それでもなんとか踏み堪えた。こういう時はエロいことを考えるのがいい。ジョニーに助けを求めると、
そうして、なんとか気を取り直すと言った。
「そうか……なんか悔しいな」
「……ごめんなさい」
すると何を思ったのか、とってつけたような謝罪の言葉を吐く、琴吹。
──まったくだよ、こんちくしょう。
そのようにして、情報収集の時間は終わる。俺はすでに
「琴吹さ、最後に一つだけ──」
「うん」
「さっきは
「……うん」
実に断りにくい
「そしてあとは……たまには声をかけてもいいか?」
「え?」
「実はさ、本当はこれが一番に言いたかったことなんだけど……俺は別れてしまったとしても友人として君と接したい──やっぱりダメか?」
「ううんっ、そんなことない!」
そしてこれまた断りにくい要求をしてやると、いとも簡単に頷いてくれる琴吹である。
そうして、彼女に告げておこうと思った事柄は全て伝え終わる。
本当に苦しい戦いであった。
「ありがとう──今日からは恋人じゃなくて友達同士だな」
そう言って俺は、やるべきことはやったと屋上の扉に手をかける。このまま、ここから去るつもりでいた。すると、唐突に「工藤くん!」と呼びかけられる。
琴吹が改まった様子でこちらを見ていた。
「その……本当にごめ──」
「もう謝らなくていいぞ、俺は許してるんだから」
笑って言ってやると彼女は「ぐぬ」と言葉を詰まらせている。
すると、しばらくしてから「ありがとう」と笑顔でお礼を言われた。
──うーん、そんな
とりあえず、計画の初手が上々の運びとなったことを喜ぶ。
俺は冗談めかしながら彼女に告げる。
「もし、一条先輩に泣かされるようなことがあったらすぐに言ってくれ。そんときは一発殴りに行ってやるから」
「うん、そのときは……けど、大丈夫だよ」
「そか」
そうして俺は扉を開き、屋上を後にした。
青空の下から急に屋内に入ったために、目が慣れておらず、とても暗い場所にいるように感じる。
そんな薄暗い校舎の階段を下りながら、俺は
「さて、お次は──一条先輩には『浮気』をしてもらうことにしよう」
琴吹は大丈夫だと言ったが、俺としてはぶん殴る気満々なわけで。別れさせ工作において、男性の方に新しい女をあてがうのは
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