三村夫婦は狂っている。
剛史は自分の書く小説と現実の区別がつかなくなっていて、華恋はそれに付き合い、剛史殺害が愛のかたちだと思っている。
読んでいて、どこからどこまでが剛史の作品なのか、ひょっとして全部がそうなのではないかという錯覚に囚われた。
その背景にあるものが現実離れしているようで、ぬるま湯日本で暮らしているから気付かないだけなのでしょう。
ドキドキ、ハラハラの展開で、おもしろかったです。
さすがたまごさんです🐷
作者からの返信
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通り、日本は安全で豊かなためにぬるま湯状態ですが、暗殺業のスナイパーこそいないものの、極一部の政治家と経済人が組んで利益を上げていたり、爆破予告で右往左往することは珍しくありません。オウムというテロもありましたし……。
爆破予告で右往左往したのは私の経験談です。もっとも予告があったのはホテルではなく企業が入ったビルで、避難先はファミレスではなく路上でした。(>_<)
考えてみれば、昔は企業を狙った爆破事件が多々あったようです。日本人が安穏として居られるのは、平和だからではなく、危機の経験を早く忘れることができる(?)からかもしれません。ある意味、特殊能力ですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。<m(__)m>
十四章以降の大転換で、さてはこういう話だったか、とのけぞりつつ、なおもちゃぶ台返しが続きそうな不安定感にじりじりしながら、ようやく読み切りました w。
話を土台から二度、三度とひっくり返すことこそなかったものの、妄想と幻想と現実がここまで入り組んだ形になっていると、終盤はほとんど夢の中の話というイメージですね。こういうのもマジックリアリズムというのでしょうか。作家の内情やら屈折した心理やらをためらいなく俎上に載せているところといい、明日乃さんの新境地という印象があります。まあ、二度は使えない手だと思いますが。作家自身の自殺(と再生)をそのまんま作品化したような物語など ^^。
さて、多視点でも、本作のような形でどんどん視点を入れ替えるタイプの小説と言えば、たいていは人物ではない、とあるものが主人公扱いとなって物語としての統一感を保つ、という形になっている例が多いのではないかと思います。舞台となっている館そのものであったり、一丁の銃であったり。が、本作はそういうタイプではない。引っ張り要素となっている謎はいくつかあるのですが、その謎がきれいさっぱり解消して、というオチでもないし、正直、書き手の側がその謎を話の中心に置いている感触がないような気さえします。
普通ならその「軸の弱さ」を指摘するところだし、私も途中まではそういう感想を引きずりながら読んでいたのですが、改めて振り返ってみると、別にそういう評価の仕方をしなくてもええんではないかと思うようになりました。
ジャンルとしてみると、本作はエンタメ作品と言うより、文芸色のにじみ出た、エンタメ風幻想文学という感じです。が、思い切りわかりやすい呼び方をするなら、明日乃さんご自身がおっしゃった通り、これは三村夫婦の物語であり、スナイパーがどうしたとか、グランドホテル形式の人間模様がなんだという話は、壮大なおまけだと思われます。私に言わせれば、上で申した通り、本作は一作家の自殺と再生の物語ではないかと思うんですが、いずれにしろ、こういうとても簡潔な本題にバカでかいガジェットがくっついたような構造だと、結局はこの夫婦の顛末をどう受け止めるか、という問題に尽きると思いますし、少なくとも私はその部分にチェックを入れるところなどありません。
まあ総合的な感想としては、正直半分ほど、うまいこと煙に巻かれたなあという気がしないでもないのですが 笑。
とてつもない国際陰謀劇とその見事な結末を期待すると肩透かしに遭いますけれど、「……という見せかけの、でもおまけ部分にも妥協していないホームドラマ」として捉え直すと、明日乃さんの魅力がふんだんに詰まった、全方位的にバランスの取れた長編と言えるのではないかと思います。少なくとも、私がこれまでに読んだ明日乃作品の中では三本指に入れられると感じました。
会心の一作と称してよろしいのではないでしょうか。と書きつつ、私自身は、次の明日乃さんの会心作がさっそく気になってもいるのですが w。
作者からの返信
丁寧なコメント、ありがとうございます。
物語の半分以上が、三村剛史の小説の中身なので、それを真剣に読んで損したと感じる読者もいるのではないかと考えています。が、しかし、その小説こそが作者の経験や思想であり心情……。私がこの小説で書いているものが、私の会社員時代の経験であり、現代社会に対する不信や怒りであるように……。なので、損したとか騙されているとは考えて欲しくない。……いや、騙しているという点は当たっているのかな。
なにはともあれ、戦争であれブラック企業であれ、新自由主義であれ、権力者や強者が好き勝手出来ている現実を見せられるのは辛いのです。それで些細な反逆をば……。それが私の場合、小説です。
この作品は、これまでのものと同じように社会的なものに対する苛立ちを書いているという点では同じなのですが、私のプライベートな部分により近く足を置いている作品です。もともとが、私が見る夢の宿泊施設がホテルミラージュなのです。そこに住む可笑しな人々と私の精神状態を、少し形を整えてみたらこんな小説になったのです。
言い訳ばかりの支離滅裂な返信になってしまいました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次作は異世界ファンタジー……、まだ数千文字しかかけていません。投稿小説にありがちな、終わりの見えない長編小説を想定しているのですが、どうも、最後を想定しない人生のような小説にしっくりきません。
ライバルや敵のインフレもどうかと思うし……。(>_<)というわけで、期待を膨らませずのんびりお待ちください。
これからも御贔屓に、よろしくお願いします。<m(__)m>
とても面白かったです。
謎が大好物なので、謎に魅かれて読み進んできました。
このお話は「人間」と「愛」の話だったのですね。
けれども、それこそが最大の謎なのかもしれないなあ、と思いました。
作中の小説のに登場する沢山の人々と、その背景。
そのどれもが説得力を持って書かれているので、同じ人間ながらこうも隔たりがあるのかと、まるで真実のように私自身が錯覚してしまう事もあってw
ミラージュのタイトルが改めて響きました。
余談ですが、現実に生きている中で感じた様々な思いもXなどへの投稿となると直接的過ぎてアレですが、小説の形をとると自分の中でも客観視するプロセスがあって良い吐き出し方法だなあと最近思ってます。
私などの場合はその程度ですが、たまごさんの小説ではそれが更に読者を魅了する物語にまで昇華されてて、凄いなあと感じました。
ワクワクするお話をありがとうございました。
作者からの返信
コメント、ありがとうございます。励みになります。
この物語の難しさは、剛史の作品を単なる小説ではなく、剛史自身のこととして読んでいただけるかどうかでした。もし、剛史の小説が読者を欺くためのフェイクだと受け取られると、全体が薄っぺらなものに感じられてしまうのです。
『彼の小説の登場人物=彼』であり、『彼=私』なのです。それで、できる限りの言葉を尽くしたつもりです。
まだまだ未熟な作家ではありますが、これからも御贔屓に、よろしくお願いします。