黒end




薄れ掛けの意識を絶叫が貫く。



「苦しんでない苦しんでない苦しんでない苦しんでない苦しんでない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくないッ!」



喚き散らしながら那由多は何度も何度も俺の頭を身体ごと床に叩きつける。



「何が何処がなんで何故何がなんでなんでなんでなんで私が苦しんでる苦しんでる苦しんでる苦しんでない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくない苦しくないッ!」




「…………苦しんで、ない、ヤツが、そんなこと……言わないだろ……」




「ーーーーッ」




なんとか声を振り絞る。



那由多はピタリと動きを止めて俯いた。その表情は見えない。



「…………もう…………終わりに、しよう」



「…………」



「ずっと、許さないで、いるのは……苦しいだろ」



「…………」



「許す、ことより……大変だ」



「…………」



「原因を、作った。俺が、言うことじゃ、ないけどさ……」



「…………」



「那由多…………」



「…………」



「本当に、ごめん……」



「…………」



「…………」




長い、長い……沈黙が、訪れた。




「……………………」




「……………………」




沈黙の末に、




「……………………そうですね」




那由多は口を開いた。




「もう…………やめましょう…………」



「……………………」



「御託を並べて、誤魔化すのは、やめましょう」




那由多は俯いていた顔を上げる。




「正義くん」





笑っていた。





「私は……………………」





那由多は、今までに一度も見たことの無い笑顔で、






「私は、あなたの、全てが、欲しい」






それは、



女神とは似ても似つか程に邪悪で、



天使のとはかけ離れた醜さで、



聖女に有るまじき狂気に溢れていて、






「あっ、そっか」






ドス黒い感情に染まった笑みで彼女は笑っていた。






「それだけなんだ」























失敗があるとするならば。



おそらく、俺が白井那由多のを見誤っていたのだろう。



那由多は紛うことなき本物の怪物クリーチャーだった。























はじめからこうしていればよかったんですね。



ぜんぶちからづくでおもいどおりにしていればよかったんですね。



ただしいのはわたし。



わるいのはあなた。



そんなことかんけいなくて。



あなたにわたしはなにをしてもいい。



だってわたしがそうしたいから。



わたしのおもうまま。



すきにしていい。



りゆうなんてどうでもいいんです。



わたしのおもったことをすきなようにするんです。



くちとくちをかさねたければかさねればいい。



したとしたをからみあわせたかったらからみあわせればいい。



だえきをのませたければそそげばいい。



だえきをのみたければすいだせばいい。



なめたいところがあればなめればいい。



なめられたければなめさせればいい。



まじりたければまじればいい。



たべたければすきなだけたべればいい。



だってぜんぶわたしのものなんですから。



わたしのすきにしていいんです。



つみだとか。



ばつだとか。



つぐないだとか。



しょくざいだとか。



ゆるすとか。



ゆるさないとか。



そんなこともうどうでもいい。



わたしはわたしのしたいことをするの。



ここであなたとふたりきり。



もうそれだけでいいの。



ほかのことはもうどうでもいいの。



ただあなたといっしょにいらればいいの。



ぜんぶあなたのおかげです。



あなたがきがつかせてくれたんです。



あなたがほんとうのわたしをときはなってくれたんです。



これがほんとうのわたし。



わたしはあなたがほしかっただけなの。



いろんなきれいごとをならべていたけど。



ほんとうはただあなたがほしかっただけなの。



それにきがつかせてくれた。



わたしのこころのなかはこんなにもまっくろだったの。



あなたとおそろいのくろ。



とってもすてきないろ。



わたしとあなたすごくおにあいですね。



うれしい。



もっともっとまざりあいたい。



あなたとまざりあってひとつになりたい。



もうそのことしかかんがえられない。



かんがえたくない。



ずっとあなたのことだけをかんがえていたい。



それだけでわたしはしあわせなの。



このせかいにはわたしとあなただけ。




しあわせ。




しあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせ。






しあわせで。





そして。





くるしい。




くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい。




しあわせでくるしい。



しあわせだからくるしい。



くるしいからしあわせ。



しあわせはくるしい。



くるしいのはしあわせ。



くるしい?



なら。



しあわせでしょう?



しあわせですね。



このさきもずっとこのしあわせはつづいていくのですね。



もっとくるしんで。



もっとしあわせになりましょう。



もっと。



もっともっと。



もっともっともっと。



もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと。



わたしにしあわせをください。



わたしをもっとあいしてください。



わたしをもっとおかしてください。



すべてあなたでみたしてください。





あはっ。





「あははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハははははははハハハハハハハハッッッッッッーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


























おしまい











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