黒『堕天』
黒38
【分岐3】
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
許されたいのか。
許されたくないのか。
分からない。何も分からない。
答えの出ない問いが頭の中を回り続ける。
回る。回る。回る。
回って、回って、回って。
そして、
ふと、ある考えに思い至った。
”罪”とはーーなんだ?
正しくない行いをした結果として問題にされるもの。
正しくない行いとは何か?
法律に触れること?
やってはいけないとされること?
他人に迷惑をかけること?
悪事を働くこと?
分からない訳じゃない。
世間一般的な常識として、それは理解している。
だが、
そもそもの問題として、
”悪”とはなんだ?
悪を悪として定義づけているモノはなんだ?
法律か?道徳か?一般常識か?民衆か?
それって結局のところ、人それぞれ個人個人の価値観を基準として判断しているだけじゃないのか?
悪を正義に置き換えてみると分かる。
人それぞれに正義はある。
自分が正しいと信じる正義が他の誰かと同じ時もあるだろう。だが、逆に相反して分かり合えない事もある。
己の信じる正義が他人の正義と合致しているとは限らない。
何故か?人それぞれの価値観や倫理観が違うからだ。
個人で考える正義は異なる。
それが合致することもあれば、相反することもある。
それらも全て人の考え方の違いの差だ。
正義がそうなら悪も同様に個人で悪を悪とする判断する基準は違っている。
一般常識。
植え付けられた道徳観を元にする考え方の基準が悪を悪として決定づけている。
その価値基準を作ったの誰だ?
人間だ。
人間自信が正義と悪を作り上げた。
これは正しいことだと正義を作り。
これは悪いことだと悪を作った。
人が人を殺すことは悪だ。
人が牛や豚を殺すことは悪か?
その殺すこともちゃんとした理由があって、人が生きるため食料にする為に殺す。仕方がない。必要なこと。ならばその行為は正義が?正義であることもある。しかし、それを悪とする者も中には居る。
見方によって全て変わる。
それぞれの主観でしかない。
正義も悪も人が勝手に作り上げたものだ。
だから、そもそも正義も悪も元から存在してなどいないんだ。
俺の考えは間違っているか?
おそらく、
間違ってると思う人も居るだろう。
間違ってないと思う人も居るだろう。
やっぱりそれは主観の問題で、自分自身の価値基準で判断している。
だというならば、
これは許されるか、許されないかの問題じゃない。
正義などない。
悪などない。
罪などない。
そもそも何も存在していない。
あるのは何をしたかという行動の事実だけだ。
頭の中が晴れていく。めぐった思想が集約していく。
そして、俺はひとつの答えを導き出した。
この問題の解決点は何が正しくて、何が間違っているかじゃ無い。
解決しなければならない問題。
それは当人達が納得出来るか出来ないか。
そこが問題なんだ。
どうしたらいいか、じゃない。
俺自身がどうしたいか、だ。
何をどうしたら俺は現状に納得できるのか。
疑問を持ち。悩んだ。
その時点で俺は既に納得出来ていないんだ。
全てに納得しているのなら考えることは無い。
ただ現状に甘んじていればいいだけ。
だが違う。
今のままで良いと思っていないんだ。
なら、やるしかないだろう。
正しさを振りかざす偶像に立ち向かえ。
女神なんかじゃない。
天使なんかじゃない。
聖女なんかじゃない。
アレはただ可愛いだけの女の子だ。
ちゃんと向き合って叩きつけるんだ。
自分の想いを。
ずっと一緒に居て考える時間すらなかった。
だが、今、こうして1人にされて、改めて考えて、思考をまとめることが出来た。
そして、その考えはまとまった。
立ち向かう。
自分から会いに行こう。
彼女の元に。
こうして俺は開き直った。
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