白end
「さて懺悔の時間です」
正座なう。
対面には1億点大天使スマイルの那由多。同じように正座でピタリと膝と膝が触れ合う至近距離。
本日の懺悔が始まる。
「まずは本日の正義くんの視界に写った女性の人数ですね。何人でしょうか?」
「分かりません」
「86人です。正義くんの目の動き、視界の範囲から計算しました。1人につき1分ですので本日は1時間26分ですね。よいしょ」
可愛らしい呟きと共に那由多は正座している俺の太ももの上に跨り腰を下ろした。その腰に手を回してずり落ちないように支える。
那由多の女神のように神々しく美しすぎて可愛すぎる顔面を見つめる。
ただ見つめる。
いつまでも見てられるが、正座した太ももの上に乗る重量感があり柔らかさと弾力を兼ね備えたデカケツが重しとなって脛に蓄積ダメージが加わる。所謂、石抱のようなもの。
足のしびれに耐えながら見つめ続ける。
ゆっくりと時間が流れる。
特に会話もなく沈黙を保ち、この世の何よりも美しい聖女様のコバルトブルーの瞳を魅入られたように見つめ続ける。
痛みで罪が清算され、腕の中の柔らかい温もりから許しを得ているようだ。心が浄化され豊かさを得る。幸せだ。
「そろそろ時間ですね」
「まだ。もう少しだけ」
「ふふっ……。仕方ありませんね。いいですよ」
まだ見つめていたい。その気持ちを口にして受けいられる。
結局、当初の予定した時間をすぎ2時間近く見つめ続けた。
「次ですね。本日、正義くんが私以外の女性と言葉を交わした文字数です。何文字でしょうか?」
「分かりません」
「236文字です。1文字につき1回です」
那由多は太ももの上から名残惜しげに腰をあげてくれたので、俺は痺れすぎて殆ど感覚のない足を崩す。
そしてすぐその崩した足の上にと那由多は腰を下ろした。
背中に手を回して抱きしめる。那由多の大きく実った2つの太陽の果実が潰れて形を変える。
口を口に寄せて、ほぼほぼ触れ合っている状態で囁く。
「愛してる」
囁きながら唇を押し付けて離す。
「愛してる」
それを繰り返す。
「愛してる」
1回、1回、しっかり想いを込めて愛の言葉を捧げながら、口付けを繰り返す。
「愛してる」
発する言葉は全て貴女に愛を捧げるためにあるのだと、この口は貴女と愛を交わすためにあるのだと、私の愛は全て貴女のモノなのだと、それを伝えるように何度も何度も囁きと口付けを繰り返す。
「愛してる」
236回のキスを終えて、触れ合いっぱなしだった顔を離す。
「しっかりと正義くんの想いが伝わってきました。よく出来ましたね。偉いです」
「ありがとうございます」
柔らかな微笑みと共に頭を抱きしめられて那由多の胸に沈み込む。赤子をあやす様に優しく頭を撫でられた。幸せだ。
「それでは最後に、正義くんが本日溜め込んだ穢れを全て吐き出しましょうか」
立ち上がり、手を引かれて、ベッドへと誘われる。
押し倒されて仰向けにベッドに転がった俺の上に那由多は覆い被さるように跨った。
「貴方の穢れは私が全て絞り尽くしてあげましょう」
手と手を繋ぎ、指と指とを絡める。俺の上に全身を密着させてのしかかりながら、那由多の顔が降りてくる。
「……んっ、ちゅっ、ちゅぱっ……じゅる、じゅぞっ、じゅるるっ……!」
深く混じり合う唇と唇。舌と舌。唾液と唾液。
唇を押し付けあって、舌を激しく絡ませ合って、混じりあった唾液を飲ませ合う。
息が荒れていく。熱い吐息が交わって全身が火照る。どうしようもない劣情が猛り狂っていく。
「さあ、正義くん。あなたのすべてを私に捧げなさい。あなたのすべては私のモノ。私のすべてはあなたのモノです」
理性が途切れる。
本能のみの動物と化す。
お互いを喰らい尽くす事しか考えられぬ化け物となる。
極光の輝きで全てが白に塗りつぶされていく。
何もかもが塗りつぶされた真っ白な世界。
自分で考えることなど何も無い。
全て身を任せていればいい。
自分の意思など必要ない。
望まれるままの存在であり続ける。
それが俺の罪。
その罰。
なんの不満も無い。
幸せだ。
ただ、ただ、幸せだ。
許される必要なんてない。
許されなくていい。
このままずっと許されなくていい。
生涯をかけて償わなければならない。
償い続けても決して報われることは無い。
報われなくていい。
報われてはいけない。
清算は終わらない。
贖罪は終わらない。
懺悔は終わらない。
消える罪などこの世にありはしない。
忘れてはいけない。
忘れることは許されない。
犯した誤ちは取り返しはつかない。
向き合い続けろ。
おしまい
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