紫40




小さい頃の私。


大人しくていい子。


悪く言えば内気で自己主張が苦手で、根暗で陰鬱としていた私はそのせいで友達はまったく居ない。ダメダメな私はいつも一人ぼっちで遊んでた。


そんな一人ぼっちの私はみんなから虐められていた。


何をやってもやり返してこない。言い返してこない。私はみんなの丁度いいサンドバックだったんだ。



「オマエら、ヤメロよ!イジメなんてみっともない!」



そんな私をいつも助けてくれたのがかけるくんだった。



「大丈夫だ!俺がオマエとずっと一緒に居て、守ってやるから!約束だ!」



嬉しかった。こんなダメな私のことをちゃんと見てくれて、それで守ってくれる。


私が翔くんのことを好きになるのに時間はあまりかからなかった。


それからも翔くんは約束通りずっと一緒に居てくれた。いつも傍で私を守ってくれた。


それで、私も今のままじゃダメだって思った。このままダメな私のままでは居られない。翔くんと一緒に居て恥ずかしくない存在になりたくて、それで自分を変えようと頑張った。







月日は流れて、私と翔くんは高校生になった。勿論、二人一緒に同じ高校に入学した。


ちょっと勉強が苦手な翔くんは受験勉強に苦労したけど、それでも2人で同じ高校に通いたかったから翔くんは頑張ってくれた。


頑張り屋さんな翔くんの事が私は大好きだった。



「私、翔くんのことが好き。もう今のままの関係じゃ嫌なの。だから私と恋人として付き合ってください!」



私から告白した。


鈍感な翔くんは私がどんなにアピールしても反応はイマイチだった。


明るくて正義感が強い翔くんはみんなの人気者だ。翔くんを好きだって言う子はいっぱいいた。


それに危機感を覚えて、他の誰かに取られたくなかったから、だから私から告白した。



「あっ、えっ!?そ、その……俺もオマエのこと……その、なんていうか、好き?だから……えーっと、よ、よろしくお願いします!」



照れたように笑う翔くんはちょっとだけ可愛かった。


こうして私と翔くんは付き合うことになった。


翔くんは私を選んでくれた。嬉しかった。



「これから2人で楽しい思い出いっぱい作ろうね!」



幸せだ。大好きな人と一緒になって、これからもずっと一緒にいられる。


きっとこんな幸せな日々がずっと続いていく。


楽しい高校生活を送って卒業したら、一緒の大学に行って、社会人になって、それで結婚して、子供も出来て、おじいちゃんおばあちゃんになっても、ずっと仲良くて。


そんな幸せな人生が続いて行くんだ。


ああ、わたし、しあわせだ。



かけるくん。だいすきだよ。






「やめろォオオオオッッッ!!!」





かけるくんのこえがきこえる。



あれ?わたし、いま、なにしてたんだっけ?





「頼むッ……!もうやめてくれっ!なんでこんなことするんだよ!お願いだ……!もう、もう……やめてくれっ!」





あたまがふわふわする。


なんだろ。これ。


すごく、きもちいいな。





「かけるくん、これ、みてぇ。これ、すっごくきもちいいの。かけるくん、のなんかより、とっても、きもちいいの」


「ああっ……あああ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッ!!!」





かけるくん?


なんでないてるの?


こんなにきもちいいのに。


おかしいなぁ。


あれ?


わたしもないてる?


なんで?


こんなにきもちいいのに。


なんでないてるんだろ?


あっ。


そっか。


きもちいいから、ないてるんだ。


かけるくんもきもちいいんだね。


きもちいいから、ないてるんだね。


うれしいな。


それなら、もっときもちよくならないと。





「はひッ……はははっ、ハハハハハハハハッ……!」


「あっれぇ?彼氏くんの方も壊れちゃったかなぁ?目がイッちゃったね?うわっ、そんなヨダレたらして……イイ表情だね!素敵っ!」


「こっちも、もうダメだなコレ。完全にイカれた。薬の量が多すぎたか?おい、村崎。また新しいの探しに行くぞ」


「ちょっと待ってねぇ。動画編集して那由多ちゃんに送り付けるから……はい、おっけー!んじゃ、行こっか黒田!」





あれ?


もうおわり?


きもちいいのおわり?


もっといっぱいしたいのに。


あっ。


かけるくんがいる。


かけるくんでいっか。





「あれ?かけるくん?あんまりきもちよくないよ?ねえ。もっとがんばって?かけるくんはがんばりやさんでしょ?ほら、ねえ。もっとがんばって?ねえ?ねえ?ねえ?」


「……………………」





これからもかけるくんとはいっしょ。


ずっといっしょ。


ああ、しあわせだな。


こんなしあわせがいつまでもつづきますように。









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