25




まさに腫れ物を扱うかの如く。


先週の1件に加えて大変目立ちやがる聖女様直筆サイン入り公式ファングッズである盗聴器内蔵型の首輪×2


俺に声をかける生徒など居るわけがなく、皆一様に遠巻きで見てくる。「アレには関わったらアカンやつ」という空気感がヒシヒシと伝わってくる。


実際問題、話しかけられたら話しかけられたで面倒な所もある。会話は白井に全部筒抜けだし。下手なことを言えばおそらく電流が流れる。余計なことを言わないことに越したことはない。沈黙は吉なり。


それにひっきりなしに送られてくる白井からのメッセージの返信が忙しく他に構っている余裕がない。まるでスマホに目を釘付けにせんとばかりに連投される。


だが幸いなことにそれは授業が始まる時間になるとピタリと止まった。ちゃんと授業は真面目に受けろと言う事だろう。まあ、休み時間になると着信と同時に再開するが。


どうにかこうにか白井に言われたことを守り、今のところは電流を流されることもなかったのだが……。



昼休み。



人との接触を避けるために何処か人気のない所で昼食を取ろうかと思案していると……。



「黒田ぁー!今日は1人?愛しの愛しの那由多ちゃんはお休みなのぉ?」



他者を煽り散らかした満面の趣味の悪い笑顔を浮かべた、胸糞悪い女が現れた。



「村崎……」



村崎零菜。他者を玩具にして遊ぶのが大好きな悪趣味な性悪女でーー。


ーービリビリビリッ!



「オ”ッ……!」



電流が流れた。少し声が漏れたが歯を食いしばって耐える。話しかけられるだけでアウトかよッ。



「んんんー?どうしたの黒田ぁ?そんな気持ちよくってザーメンぶちまけちゃうのを我慢してる時みたいな顔しちゃって?」



俺の様子が少しおかしい事にあれれー?ととぼけた顔をする村崎。こちらを心配する様子はなく、むしろ面白いの見つけちゃったかも?と悪趣味な笑みを濃くする。


これは非常によろしくない。



「ん”ッ……。は、話しかけて、くんな」


「えええっー?なんでぇ!?その言い草は酷いんじゃなぁい?黒田が冷たいよォ!零菜と黒田の仲でしょ?そんなこと言わずに零菜とお話ししよーよー!零菜ね、黒田に聞きたいこといぃーぱっいあるのにぃー!」



ふぇーんとわざとらしい泣き真似をしたかと思えば、演技がかった口調で語る。その口元は堪えきれない愉悦で歪んでいる。村崎の全ての仕草が実に癪に触った。



「ねえねえ黒田ぁ?零菜が話しかけてから、ずっと苦しそうでマヌケな顔してるけど……どうしたのかなぁ?なにかしてるのぉ?」


「な。なんでもない……いいからどっか行け……」


「それにその首輪なぁに?那由多ちゃんの名前書いてあるけどファングッズか何かかなぁ?そんなの付けてて恥ずかしくないの?きっしょぉーい!そこら辺も詳しい話きかせてよぉ!」


「ぐっ……この女ァ……。なんでもない。俺はオマエと話すことなんかない。さっさと帰れ」



会話中も電流が絶えず流れている。かなりしんどい。これでさらにこの女の相手をするのは、もはや地獄だ。


だが追い払おうとしてもコイツがそう簡単に引き下がるとも思わない。


どうする?もうこの場から走って逃げるか?



「ふーん……」



スッと村崎の目が細まる。


村崎は俺の様子を観察するように視線を動かし、そして、ある1点で村崎の視線がピタリと止まった。



「これかなぁ?」



そうは言ったが村崎の言葉には確信めいた何かがあった。


村崎の手が伸びる。それは迷わず一直線に俺の胸元に向かう。


抵抗する間も無く、スルリと俺の胸元からボールペンが抜き取られた。



「あー!やっぱりぃ!ねえ黒田ぁ!このペンにカメラついてるよね?なになに?これ?なんでこんな物もってるのかなぁ?」






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