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「んちゅうっーーーーーーーーーーーーーーーーー………………………………………………ぷはっ!」



ながい、ながーい、キスを終えて白井はやっと唇を離した。散々したというのに、まだ名残惜しげな表情をしている。



「首輪はちゃんと着けましたね?絶対に自分で勝手に外してはいけませんよ?」



前日購入した白と黒の盗聴器が内蔵された首輪。黒い首輪には白地で『白井』白い首輪には黒字で『那由多』とハッキリくっきり目立つように書かれている。白井の直筆サインだ。一部界隈でプレミアムが付きそうなそれは日本とも首にはめられていた。



「あとコレも持っていってください。これも外したり動かしたりしてはいけませんよ」



そう言って白井は俺の胸ポケットにボールペンを挿した。ただのボールペンでは無い。小型カメラが内蔵されたボールペンである。これで俺の視界を共有するらしい。



「それとコレが今日のお弁当と水筒ですね。これ以外を口にしてはいけませんよ。ちゃんと残さず食べてくださいね」



手渡された弁当の包みと水筒をカバンに仕舞う。



「最後に定期的に電話をかけてメッセージを送りますね。電話にはワンコール以内に出てください。メッセージは3秒以内に既読を付けて30秒以内に返事を返してください」



定期的に……?流石に授業中には掛けてこないよな……?



「いいですか?私との約束が守れなかった場合は罰として電流が流れます。それでもダメなら私が自ら制裁に向かいますので」



俺の服の下には既に目立たないように遠隔操作が出来る電極が取り付けられていた。白井の意思でいつでも俺をビリビリ制裁することが出来る。どんなものかと試した時はかなり痛かった。正直、二度とビリビリされたくない。



「それでは黒田くん。悪いことをしてはいけません。人様に迷惑をかけてはいけません。ちゃんと学校に通い。真面目に授業を受けなくてはなりません。あと私以外の女性で欲情してはいけません。会話してもいけません。見てもいけません。一切、関わってはいけません。いいですね?」


「……分かったって」


「分かってません。卑怯で嘘つきの黒田くんを私は一切、信用していません。だから、私は黒田くんを監視して、悪いことをしようとするなら先んじで止めなければならないんです。その為にビリビリするのを取り付けているんですからね?それは分かっていますよね?」


「分かってるって」


「…………。ポチッとな」



白井が何かボタンを押した。



ビリビリビリビリビリビリッ!



「お”ッお”お”お”ッッッ、お”ッ、お”ッ、お”ッ、!?!?!?!?!」



脳天を貫く電撃が全身を駆け巡った。


余りの衝撃に思わず叫ぶ。



「ふふふっ……。黒田くんは実に汚ったない喘ぎ声を出しますね!」


「お”ぼぼぼぼぼぼぼッ!どめ”ッ、どめ”でッ……!」


「もう、仕方ないですね。黒田くんはもう少し我慢というものが出来ないのでしょうか?」


「はぁ……はぁ……。いや、これは無理。洒落になってないが……」



電気ビリビリマジでくっそ痛い。イタズラお遊びレベルのソレじゃなくて完全に拷問で使われそうなレベルの電流が流れる。こんなのマトモに耐えれるようなもんじゃ無い。



「それでは黒田くん。いってらっしゃい」


「……はい。いってきます」


「あっ、最後にもう1度キスしときますね」



チュッと触れるだけのキスを最後に俺はようやく家を発った。笑顔の白井に見送られて学校に向かう。



月曜日。


白井はやることがあると言うので学校を休むそうである。俺にはちゃんと学校に行けと言っておいて本人はコレだ。みなまで言わずとも理不尽極まりない。


学校まで休んでやること何だろうかと思ったが、下手に聞くと、とんでもない藪蛇になりそうな気がしたので聞かなかった。



この数日間、白井とは誇張なしで四六時中ベッタリとくっついていた。体と体が触れている時間の方が圧倒的に長かった。すっかり俺の日常は白井に侵略されている。


こうして1人になったのが久しぶりな気がする。いつもと変わらぬ通学路が新鮮に感じた。


これから俺はどうなってしまうのか。


まあ、なるようにしかならないか。


とりあえず、アレか。ビリビリはマジで痛いので白井に言われたことは守ろうと思った。









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