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デカい店『ドンドンホケキョ』
ここに来れば大概のモノが揃う兎に角デカい店である。
食品、雑貨、家電、家具、衣類、書籍、玩具、化粧品、スケベアイテム他多数。本当に何でも売ってる。
マスコットキャラクターはデフォルメされたアヘ顔ギョロ目の鶯『ドンホケちゃん』
だらんと舌出してるし、かなりふざけた見た目のキャラクターだが、これがなかなか人気があるらしくグッズ化され販売してる。
「ホケちゃん様カワイイですっ」
そんなドンホケちゃんのデカいぬいぐるみを笑顔で抱き締めるーーというかスリーパーホールドで締め上げる白井。いくらデカいぬいぐるみとはいえ我らが女神様のデカチチに勝ることは無く、ドンホケちゃんは女神様のデカチチに沈められていた。
控えめに非常に羨ましい。そのポジションは俺だぞとドンホケちゃんを引き裂きさいて中に詰め込まれた綿をぶちまけたい気持ちになったが、ぐっと堪えた。
とりあえず、今夜は焼き鳥が食べたいと思った。
「……まさか、そのぬいぐるみ買いに来たのか?」
なんやかんやで白井も女子学生。例に漏れずこういったモノが好きなのか。そういえば、よくよく考えると俺は白井の好きな物や嫌いな物を殆ど知らないことに気がついた。
「いえ、そういう訳では無いですよ。丁度、目に入ったので、つい」
「そういうの好きなのか?」
「そうですね。可愛くて好きですよ。見てください、このダラしなく舌を垂らした情けない顔。まるで昨日の黒田くんみたいで無様で凄いそそられますね!そっくりです!」
……昨日の俺、こんな顔してたの?普通に恥ずかしい。曖昧な記憶を引っ張り出すが、自分がどんな表情をしていたかなど分かりようもない。
気をつけよう……気をつけたところで、どうにかなる問題でも無いけども。
「うーん……。今、買ってしまうと荷物になるので、ホケちゃん様は一番最後に買うとしましょう」
買うのかよ。完全に衝動買いだ。
白井はドンホケちゃん人形を陳列棚に戻して、人形の頭を幼子をあやす様にヨシヨシと撫でる。
「後で迎えに来ますので、良い子にして待っていてくださいね黒田くん」
黒田くんはコッチだが?
ーーーーー
「うーん……。どれがいいんでしょうか」
ウンウンと唸りながら並んだ商品を吟味している白井。
「とりあえず……この盗聴器内蔵型の首輪は買うとして、あとはお家に設置する監視カメラと盗聴器ですね。やっぱりリアルタイムで監視出来るのが良いですよね。長時間バッテリーが持つのも良いですが、やっぱり画質の方を優先したいところです。あとズーム機能が付いていて細部までクッキリ見えて……ーー」
1個、1個、商品を手に取って機能を確認しながら、ぶつくさ呟く白井の表情は真剣そのものだ。一切の妥協は許さない。1番いいものを選び取ってやるという熱量を感じる。
目が本気だ。キリッと真剣な表情の白井はとても魅力的である。
ただ。問題なのは、そんな真剣に選んでいるブツが盗聴器とか監視カメラであるところであろう。
「黒田くんは白い首輪と黒い首輪のどちらがいいですか?」
「……それじゃ、黒い方」
「分かりました。白いの方ですね!」
確定白じゃねーか。なんで聞いたし。白の首輪は目立ちそうだ。買わないという選択肢は無いのだろうか?無いか。
「あっ、でも。黒い首輪に白字で私の名前を書くのも良さそうですね。むむむっ、これは黒も捨て難いかも知れません」
えっ。なに?首輪に名前書くの?白井の?これは私の所有物ですよアピール?それ大丈夫?白井の直筆サイン入りの首輪とかファングッズに見られたりしない?そんなん付けてたらイカれた狂信者扱いされない?
「いっそどちらも買って2つとも付けましょうか。そうですね。2つあれば1つが壊れても問題ありませんし。やはり予備は大切ですね!」
結局、2つ買った。
休日。
クラスメイトの女神様と2人っきりでお出かけ。
手を繋いでイチャイチャとラブラブお買い物デート(仮)。
キャッキャッウフフとハシャギながら2人で選ぶのは
盗聴器や監視カメラ。
聞いたことねえよ。
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