15
「名前は村崎零菜。隣のクラス。髪色は菖蒲色。それをなんか編み込んでる。顔の造形は比較的に整ってるが性格悪そうな顔つき。性格は控えめに言って悪い。他人の失敗を指差して笑うような奴。背は白井さんと同じぐらい。スラッとしてて身体の凹凸はあまり無い。好きな物は多分甘いもの。嫌いなものは知らない。趣味も知らない。誕生日も知らない。家族構成も知らない。成績は良い。運動もおそらく出来る。出会ったのは中学の時で、村崎がガラの悪い連中と絡んでる時に声をかけた。てっきり絡まれて困ってるのかと思って声をかけたんだが、実際は村崎が不良を煽り散らかして遊んでたってオチだった。それ以来、目をつけられて、ちょくちょく絡まれる。知り合い以上友達未満の関係。好きか嫌いかと言えば嫌いだ。息を吸うように煽ってくるクソ生意気な奴。人の神経を逆撫でするのが得意で、話してるだけで他人をイラつかせるクソ女」
「なるほど。それは所謂メスガキというヤツですね!」
「まあ……そう言われるとそうだな……」
「それで煽り耐性皆無なザコオスの黒田くんは、そのメスガキのことを「このメスガキッ!わからせてやる!」と押し倒してブチ犯す機会を伺っているというわけですね?これは去勢ですね!おチンぽ大切断です!」
「待って。そんなこと思ってないから」
「嘘ですね。歪んだ性癖を拗らせている黒田くんがメスガキをわからせたくない筈がありません。仕方がないので私がメスガキになって黒田くんを罵ってあげますね」
「それ、白井さんに出来んの?」
「出来ますよ!」
フンスと意気込む白井。一生懸命さが滲み出ている。メスガキとは対極の位置に陣取っているであろう天使様が何を言ってるのだろうか。片腹痛い。
「ざーこ♡ざーこ♡」
耳元で優しく囁かれた。これは糖分過多。脳みそが糖尿病になる。インスリン打ってくれ。ただの天使。
しかし、メスガキと言うにはあまりにもお粗末だ。
メスガキとはなんたるかをしっかり勉強してから出直して欲しい。
ただ「ざーこ♡」って言えばいいってもんじゃない。そんな全てを優しく包み込むような抱擁力のある「ざーこ♡」はメスガキでもなんでもない。メスガキならもっと蔑み、見下し、人を小馬鹿に、突き放し、踏みしめるように「ざーこ♡」と言わないとメスガキ足り得ないのだ。
まあ、それはともかく、とりあえず、もう1回言って欲しい。
ーーーーー
「メスガキの所まで案内してください。少々、お話があります」
放課後となり、当然のように俺の元までやって来た白井は笑顔を携え開口一番そう言った。
お話ね……。白井は村崎に一体どんなお話をするのだろうか。あまり考えたくは無い。
結論から言うと村崎に会うことは出来なかった。
村崎の居るクラスに向かったが奴は既に姿をくらませており、行き先を掴むことも出来なかった。
村崎側から俺に連絡を寄こすことは出来るが、俺から村崎に連絡を送ることは出来ない。なんせ白井以外の連絡先全消しされている。昼のメッセージも息を吸うような消された。連絡のしようがなかった。
自分から放課後会おうなんて連絡を寄こしながら俺に接触すること無くバックレた。おそらくはアレの場合は全て確信犯だろう。
俺と白井の状況を面白がった村崎が場が荒れそうな
思わせぶりで悪質なメッセージを送り付けてきた線で間違いない。実際、ニコニコはしながら白井は大荒れした。いろいろ怖かった。村崎に関することは全部吐くことになったし。でも「ざーこ♡」とは定期的に言って欲しいと思った。アレは効く。
「黒田くんは金輪際、二度とメスガキと会ってはいけませんよ。わかりましたね?」
白井に言い含められて了承するが、内心でそれは無理だろうと思った。
俺が会おうとしなくとも村崎側からの接触は今後も考えられるーーというか、まず間違いなく何かしらちょっかいを出してくる事だろう。アレはそういう女だ。
どうしたものか。
いや、俺にどうこう出来る事もないが。考えるだけで無駄か。
流れに身を任せるしかない。
というか、流れが大災害並の濁流すぎて抗っても容赦なく押し流される。抵抗は無駄。自然災害の前に人類は無力。俺の行動が原因で発生した人災だけど。
「家に帰らなくていいのか?昨日から帰ってないだろ」
村崎が捕まらなかったので白井と腕を組んでラブラブ下校なう(失笑)。
ふと思ったことを白井に問いかけた。
「大丈夫です。両親にはちゃんと事情を説明してありますのでなにも問題はありませんよ。それに私の帰るところは黒田くんのところなので、帰るという表現は間違ってますよ」
両親にどう説明したのか。それで両親はどんな許可を出したのか。
白井の両親だ。おそらくまともな理屈が通じない人なんだろうと失礼な想像をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます