第20話 副作用って凄いね
「うがぁぁぁぁ!!!ご飯!ご飯くださあああああい!!」
「あ、ちょっと暴れないでください今作ってますので!」
「ぐぉぉぉ、空腹がッ!空腹が私を狂わせるですぅぅ!!!」
暴れ狂うハルを、比較的副作用がマシな同僚が抑え込んでいる。
なぜこのようなカオスな状況になったのかといえば、力を限界まで使った反動が副作用として発症し、こんな状態になったわけである。
「ユウさんご飯くださいよぉぉ!!私はもう限界です!!!」
「わかったわかった、今やるからちょっと待ってろ」
「無理ぃぃぃぃ!!!!我慢無理ぃぃぃ」
「こりゃヒデェな…」
とりあえずうるさいハルを黙らせるべく、山盛りのチャーハンを与えた。
「うみゃーーーー!生き返りますぜコレはぁぁぁ!美味しいです!!!」
涙を流しながらバクバクとチャーハンをかきこむハルは、とても幸せそうにご飯を食べていた。
「おかわり!!!!ください早くしろぉぉぉ!!」
「落ち着け!情緒不安定すぎだろ!!!」
ハルの上半身が埋もれるほど大量に作ったはずのチャーハンが、もう綺麗サッパリ消えていた。
「どこに消えたんだよさっきのチャーハン」
「もう食べ終わりました」
「もぉぉぉ!!!間に合わねぇって!」
副作用の戦いはまだまだ続く。
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ガラガラと救助車担架に乗せられ運ばれる二人のマギア
どちらも意識ははっきりとしているが、怪我の具合がひどい
「なぁ、ウチらなんで運ばれてんやろな」
「怪我したから…」
二人並んで仲良く運ばれているのは、シロとカナミである
シロは駅で、カナミは地下で戦っていたのだが、どちらも洒落にならない怪我をおっていた。
「いや〜、流石にウチもビビったわ。なんせ地下から赤いのがどんどんよってくるんやもん、死んだ思ってんねんであれは」
「それは、大変だった」
「そっちはどうなん?うちは全身ピクリとも動かんわ、流石に100倒したあたりから記憶ないねん」
「でかいのと戦った、硬かった」
「硬かったな〜、さすがのウチでも数の暴力には勝てんかったわ」
「そういえば、副作用がきてない」
「あ〜、うち魔女に助けてもうたんやけど、その時ちょちょいってなんかされたわ」
そんな会話をしている二人は気づけば医療室まで運ばれており、治療が始まる
「コレ毎回思うんやけど、このぎゅにょぎゅにょしてるのなんとかならんの?」
「私も気持ち悪いと思う」
「シロ班長、あなたがそれ言っちゃだめですよ!それに怪我人は黙って治療を受けて下さい!!!」
シロ班副隊長 早坂コトリは眉間に手を当てながらため息を出した。
シロとカナミにくっついているゼリー状の液体は、ベノムの研究を進める内に開発されたゼリー状の完全回復薬である。
壊れた細胞や不足している部位に溶け込み、その隙間を埋める性質を持ち、ある程度の怪我はコレでなんとかなるわけだ。
ただ欠点として、時間がかかるので洗浄では使えず、適度に調節を加えないと大変なことになるので、このゼリーを扱うにはそれ相応の資格が必要となる。
シロの班は大半がその資格を有しているので、こういった大規模な作戦での治療も任されていた。
「魔女様からの伝言ですけど、あなた達は治療が終わり次第隔離です」
「えぇ〜ウチら何したってんねん!」
「あなた達は力を行使しすぎてて反動がえげつないことになるんですよ!今は魔女様の能力で抑えられているらしいですけど、それもいつまで続くかわからないんですから」
「ほーん、ならそれまでにご飯用意しといてや」
「手が足りない状況で、暴食魔がもう一人増えたらたまったもんじゃありません」
「もう一人ってことはすでに一人おるやん」
「あれは仕方ないです、食べなきゃ死んじゃうんで」
「ほなウチも死んでまうわ〜」
「と に か く!あなた達は安全のための隔離です。カナミさんはちゃんとご飯が来ますから、脱走して他の子のご飯奪わないで下さいね!」
「ちぇ、大人しくしとけばええんやろ?」
不服そうにふてくされるカナミの治療が先に終わったようで、そのまま隔離部屋(ご飯を安全に与える場所)へと連れて行かれた。
「ねぇ、私はなんで隔離?」
そんな疑問を口にしたシロに、コトリが口を開こうとしたときだ。
「君の副作用って性欲でしょう?ここにいる男子を片っ端から襲われたら大変だからね」
黒いローブを纏った魔女が、先にその質問に答えてきた。
いつ現れたのか、いつからいたのかは誰もわからない
感覚の魔女は、神出鬼没である。
「我慢するから大丈夫」
「無理だね、今回のは死ぬよ君」
「むぅ、じゃあ誰が私の治療を……まさか」
「えぇ、例の彼が立候補してくれたんで、君はその人と隔離でぇす。ヤるまで出られないからそのつもりでね、くふふ」
「そ、それだけは…だめ」
「なんでだい?彼もカウンセラーだ、覚悟ぐらいあって当然じゃないか」
「私の都合で、ユウを巻き込んじゃだめ」
「あっそう、じゃあ別の子の相手してもらうよ。君以外にも性欲の副作用持ちはいるし、手が足りないって言いったでしょ?」
「………ッ⁉️」
「どうしたの?なにか希望があれば、こちらは配慮できるよ。君は今回の作戦で大きく成果を残したんだ、僕の優しさで相手を選ばせてあげるって話だぜ?」
「それでも……」
「彼が気に入らないなら別の子をあてがってあげようか?ショタ系?それとも俺様系?優しそうなメガネの少年もいたね……、で誰がいい」
答えを迫られたシロは、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ふむ、わかってないみたいだね」
そういった魔女は指をパチンと鳴らす
「ぐぁッ……ふぅっく……ふぅっ…ふぅ…」
指を鳴らしたと同時に、シロが突然胸を抑える。
頬は火照り、辛そうに眉をハの字に曲げていた。
「今の三倍ぐらいのが反動だよ、わかるでしょ?それを抑えようとしたら死ぬぜ君」
魔女の問いかけにシロは最後まで粘ったが、結局死ぬわけにはいかないと、希望を口にするのだった。
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「はいはい、やってまいりました!感覚の魔女による観察バラエティのお時間です!解説はこの私と…」
「悪趣味な魔女にさらわれた早坂コトリと」
「ふぃらめふほうはい、はうがはんほうしまふ(煌めく後輩、ハルが担当します)」
なにかもうすべてを諦めたような表情のコトリが、マイクと謎の機械をもった魔女の横に座っており、その横にはホットドックを食べながら目を輝かせるハルが座っていた。
「いや〜ホントは情事の内容を見ていきたかったんだけど、流石に見せられないからね!私だけ堪能しちゃいます!!!」
「ほんと最低ですよ魔女様、シロ班長にもプライバシーがあるんです…」
「僕は魔女だぜぇ?権力こそ正義!僕に逆らいたければ女王にでもなるんだな!あっはっはっはっはっは!!!」
ケタケタと笑う魔女は、今回の作戦で一番楽しそうである。
「まぁ流石に君たちに尊敬するシロちゃんの乱れる姿は見せられないから、こちら!用意しちゃいました!!」
ババーンとどこからともなく効果音が鳴り響き、どでかいモニターと、波形グラフが映し出される。
「コレはね、シロちゃんが感じた感覚の波グラフでーす!幸せっ!とか気持ちいい!とかの感情をグラフにしてます!!!すごくね?僕凄いよね!!」
「う、うわぁ……」
「あおもにふぁーはなんへふあ?(あのモニターはなんですか?)」
「飲み込んでから喋ってくださいよハルさん…」
「うんうん!よくぞ聞いてくれました!あれはねシロちゃんがピー(自主規制)した数を数えてくれる優れモノさ!」
「今すぐ消してくださいこの変態魔女がぁあああ!」
「まぁまぁ、僕の副作用は性欲と幸福。コレが一気に満たされるのはコレしかないんだ!!!」
「せめて周りを巻き込まないでくださいお願いします!」
「ふぁあやふぇしまえ!(しゃあ!ヤッてしまえ!)」
「なんであんたもノリノリなのぉぉぉ!!!!!」
こうして魔女の悪癖大会が始まる
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