第2話 真夜中
「
こめかみをピキピキと言わせながらそう言う
「んなもん、確かめるまでもなく本当に決まってんだろテメェ!!……新人の
どうやら夜夏にとって
「だからっ、俺も無病様を信じたい!」
思いっきり
「その
「確かめなくても信じろよ!テメェ!」
「
思いっきり言い返せば、胸ぐらの手は
俺の言い分を少しは理解してくれたのだろうか。
眉をつり上げて、その
「わかった」
夜夏はそう言ってあっさりと俺の胸ぐらから手を
「ここでお前を、
すっかり
タコ殴りにされそうになったらどうやって逃げよう……。
「イイぜ?
ビシッとこちらを
正直コイツとの関係は今の所最悪だ。
しかし俺にはどうしても、無病様がどういう人物か確かめる必要があった。
いや、頭をよぎってしまった。
あやかし寺に出るという化け物。
それが……彼女なのでは無いかと。
真っ黒の
1ミリも動かない表情。
人間とは違う、何か別の
夜夏ももしかしたら、彼女に
こうしてその日の夜。
俺と夜夏はこっそりと、
ふもとの街と変わらない虫の
夜の寺を歩くなんて、中々ない
「……あのさ、この寺ってお前とオレ以外に他の
声を落として
「ハゲと
「ちゃんと名前で教えろよ……?」
「ハゲは今ふもとの
やはり食料や
俺は2時間以上かかった山
「イヤなら出ていくんだな」
夜夏は鼻で
「行かねえ……で、そのハゲの人以外は?」
「法師は
そう言って夜夏は小道の続く先、まっ
「ここの寺は
「今日は……そっちには行かないよな……?」
真っ暗な獣道のあまりの怖さに、俺は
「この先の小堂も敷地内だからな。寺を出るつったら
夜夏はそう言って手に持った
提灯の
「この門出たら、敷地の外だ」
夜夏は、表の門よりはずいぶんと小さな門の
「
「……そっちこそ。あ、でもちょっと待っ」
俺の言葉を
「何だよ」
「いや、オレたち……何も
夜夏は、『
「……待ってろ。無病様の
そう言って俺に提灯を押し付けた。
錫杖なんて勝手に持ち出して良いのだろうか。
そんな事を考えながら、手持ち
門の先には石の
その時だ。
ふとその小道を、何かが横切った気がした。
暗くて良く見えなかったが、人影だったように思う。
気のせいだろうか……?
何かの動物か?
「オイ」
後ろから声を掛けられて俺は飛び上がった。
「何だっ……夜夏か……」
「ビビりすぎだろ」
夜夏は『ダッセ』とでも言う風な顔で俺から提灯をひったくる。
「お前はこっち持ってろ」
そう言われて押し付けられたのは、金色に
ずっしりと重く、俺の身長よりも長い。
「
「ならお前が持てよ……」
「
夜夏はそう言うなり、さっさと門の先の階段を
「お前さっ、怖くねえの……?無病様の言う通りなら出るんだろ?」
「ちんたら行った方が怖えだろ。さっさと確かめてさっさと
夜夏にも"怖い"と思う感情はあるらしい。
俺はほっとしながら、錫杖を
「
夜夏はそう言って階段を降りた先の小道を進み始める。
「この先は……どうなってるんだ?」
「大きな
そのまま黙って真っ暗な小道を進むと。
数メートルほど先に
夜夏の言った通りの砂利道だ。
その時。
提灯に照らされた木々の先。
その広い砂利道に。
チラリと人の影が見える。
すぐさま夜夏が
俺はごくりと息を
しゃがんだまま木々の
暗がりの中にぽつんと
そう……まるで
「無病様……」
隣で夜夏が立ち上がり、俺はギョッとした。
「いやっ、絶対
慌てて夜夏の
「こんな所を出歩くなんて……お
そのまま砂利道に出ていく夜夏を、俺は口を押さえて見つめた。
どうしよう。どうする?
本物の無病様なのか……?
でも、だとしたら何でこんな所に……。
「早く寺へ戻りましょう」
夜夏がそう言えば、着物の女はゆっくりとこちらを振り向いた。
今朝見た
間違いない。
本当に、本物の無病様なのか……?
俺も出ていくべきかと慌てて足を踏み出す。
「……寺へ……
その時、無病様が口を開いた。
真っ黒な瞳に、
どこまでもそっくりなのに。
何かがおかしい。
まるで人形のような……。
いや、本当に人形そのものみたいだ。
口の下に見える薄っすらとした線。
「……何だ……その皮膚の跡……?」
夜夏がぱくぱくと口を
「……連れて行ってグレ……寺へ……行ギたい」
「左門っ!!錫杖かせっ」
夜夏の大声に、俺は慌てて草むらから錫杖を
それはもう
その瞬間。
着物の女の顔が引きつり、ビチビチと音を立てて
「ゾレを近づけるなぁぁア゛!!」
この世のものとは思えないような叫び声と
着物を
それが錫杖を叩き落としたのだ。
目の前の信じられない
「はは……化け物……ほんとに出るんだ……」
人は、本当に怖いと笑ってしまうらしい。
そんな親友の小坊主の話を思い返しながら、俺はさっそく……外に出た事を
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