第1話 配属
雨がしとしとと
立派な
どんよりとした
その寺はずいぶんと
本当に化け物が出そうな見た目だ。
親友にからかわれたせいでそんな事を思ってしまうのだろう。
「こんちは〜……今日からお世話になる
声を上げてみるが返事はない。
ここまで来るのにだいぶ
2時間ほど歩いた山道の中で、いきなり霧が立ち込め始めた時は本当に
目の前が全く見えない。
足元の道を
霧を抜けた後は、寺へと続く
お
すっかり
食料品とか、日々の生活用品とか、どうやって
毎回この霧山を
とりあえず、大きな門の前でもう少し声を
「あの〜〜!」
「誰かおりませんか!」
そこでやっと、門の
続いて真っ白な髪の少年がぬっと顔を出す。
少年はこちらを見るとギョッと目を
「誰?つーかお前、どうやってここまで登ってきた」
「えと……今日からこの寺に
俺がそう答えると少年は目を細めた。
「ふ〜ん……
「ついて来い。
への字に
ずいぶんと
どこの国の
真っ白なツンと
少年はそうそう見かけない見た目をしていた。
黒い髪に
俺は
丸い小石の
「和尚は変わってっから。気に入られなかったら帰れよ」
少年は
どうやらあまり
「そんなこと言われても、帰る場所がない……」
俺がそう
「オレ捨て子だから。15になるまでの期限付きで、街の寺に育てて
『ヤバかったらいつでも帰ってこいよ』だなんて、親友の小坊主は言ってくれたが。
あいつの寺に俺を受け入れる
街の寺はどこもギリギリで小坊主たちを
「ふはっ、その年でホームレスかよ」
少年に
「悪いかよ」
「いやベツに。おもしれーなって」
少年は、庭に面した渡り廊下の先に広がる
「
少年が声をかけると、
「入っておいで」
あれ?
ひょっとすると、気に入られるのって難しいことなのか?
「オラッ、入って良いとよ」
少年の
急いで顔を上げれば、そこは
中央に
「良く来た。左門だね?」
声の主は布団に横たわっている人物のようだ。
「もっと近くへおいで」
言われるがままに、俺は布団の
そこには、
真っ黒な長い髪。
それから
下まつ毛の
しかしまるで人形のように見える。
何かの
客が来ても起き上がれないだなんて、そうとう重い病気なのだろう。
「無病様、今日の体調はいかがです?」
後ろから近寄ってきた少年がそう
黒髪の女性はゆっくりとその目を開いた。
「うん。……良い方だ。客人が来てくれたお
そう言って無病様は俺の方へと目を向ける。
俺はなんだか人ではない何かと話しているような気分になった。
無病様は、眉の一つもピクリとも動かさないのだ。
何を考えているのか全く分からない。
「よし気に入った」
ぼ〜っと無病様の表情を
「左門、私はお前が気に入った。今日からここで寺の小坊主をやってくれるか?」
「はいもちろん……そのつもりで、やって来ましたから……」
俺が
気のせいだろうか。
「
無病様がそう言えば、後ろの少年が口の
どうやら
「ハァ〜イ……教えます……」
その顔には、メンドクセ……と書いてあるようだ。
「
そう言う夜夏に
「
広間の襖を閉めてから、夜夏はそう言った。
「そんなに
「まぁな」
夜夏はそのまま廊下をスタスタと歩いていく。
そして広間からだいぶ
「……左門って言ったか?お前」
「そうだけど」
「始めに言っとくが、夜中にこの寺の敷地の外に出るなよ」
「何で」
「出るからだよ」
「何が……?」
「バケモン」
「へぇ〜……」
俺が話半分に頷くと、夜夏はたちまち眉を吊り上げた。
「ヘェ〜……じゃねぇよテメェ!!信じてねえなぁ!?」
「……だってそれほんとかよ。見たのか?」
「無病様が言ったんだ!間違いねぇ!」
どうやら夜夏は無病様の事を
「正確には無病様はなんて……?」
「『夜の12時を過ぎてこの寺の外に出ることは
無駄に抑揚のない
そっくりなのだ。無病様の話し方に。
長く
「……じゃあ確かめてみようぜ」
「ハ??」
「無病様が言ってる事が本当なのか」
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