第26話 輝夜の罰ゲーム♪

《SIDE 出流》


 さて、洗い物も終わったし、お風呂に入ろう。


「お風呂だけど……誰か先に入る? エリとか」


「ん、あとでいい。着替えたから平気」

「出流君、先に入っていいよ」


「じゃあ、イズっち入ろうか? 罰ゲームの時間だよ!」


 ……そう言えばそうだった。


「そうだったね。じゃあ入ろうか」


「あ、先にイズっち入ってて! あと、まだ洗ったりせずにシャワーだけ浴びてて」


「ん? うん、わかったよ」


 とりあえず部屋に戻り、着替えを取って、脱衣所へと向かった。

 今回は輝夜が入ってくるのは分かっているので、最初から腰にタオルを巻いておく。

 脱衣所で服を脱いでお風呂場に入る。

 洗ったらダメって言ってたし……軽くシャワーを浴びて待っておこう。

 シャワーを浴びながら待っていると、お風呂場の扉が開いた。

 顔を向けると、髪はヘアゴムで止めて、タオルを巻いた輝夜が立っている。


「へへ、お待たせイズっち! まだ洗ってないよね?」


「うん、まだ何もしてないよ」


「じゃあ、頭洗うね」


「ん? 背中じゃなくて?」


「いいからいいから」


 輝夜に言われて、俺は風呂椅子に座ると輝夜がシャンプーを自分の手に出して、俺の髪を洗い始めた。

 誰かにやってもらうなんて散髪する時以外なら久しぶりだなぁ。


「イズっち、目に泡入っちゃうといけないからちゃんと目を閉じててね?」


「はは、大丈夫だよ」


 そのままシャカシャカと輝夜は頭を洗い―――


「はい、頭はOK! 次は体ね」


 今度は背中を洗い始めてくれた。

 まだ頭を流してないからわからないけど、スポンジとかタオルじゃなくて、手で洗っているようだ。

 輝夜は素手派なんだろうか?


「イズっちってけっこうガッシリしてるよね」


「そうなのかな?」


「うん、してるしてる。背中とかゴツゴツしてるもん」


 なんか手つきが洗うというより、ペタペタと触る感じになってきた。


「えっと、洗い終わったのかな?」


「まだまだ!」


 そう言うと、輝夜は背中に抱きついて来て、前側を洗い始めた。

 俺の背中に輝夜の柔らかい感触が広がる。


「え、えぇ? ま、前もするの?」


 俺が動揺すると輝夜は耳元で囁くように―――


「そうだよ。罰ゲームだからね?」


 輝夜の艶のある声が耳元で聞こえてきて、俺の心臓が速度を上がったのを実感した。


「へへ、イズっちドキドキしてる? 心臓がバクバク動いてるよ?」


 輝夜が俺の胸に手を当て、心臓の動きを確かめている。


「そ、そりゃ、さすがに……」


「ちゃんとドキドキしてたんだ? いっつも平気な顔してたけど」


「……いつもドキドキしてるよ」


「へへ、そっか。ちゃんとあたしでドキドキしてくれるんだ?」


「う、うん、そりゃ、輝夜みたいな綺麗な子にされると……ね」


「へぇー、イズっちから見てあたし綺麗なんだ? どの辺が?」


「そのー……髪が長くてすごく手入れしてあって、艶があって綺麗だと思うし……身長が高くて、目がキリッとして美人だと思うよ」


「へぇ、男の子って身長が低い女の子が好きなんじゃないの?」


「んー……そういう人もいるだろうけど、俺は気にしないかな」


「ふーん、そうなんだ? じゃあ、イズっち的にはあたしはありなの?」


◆―――――――――◆

《SIDE 輝夜》


 へへへ、イズっち、すっごくドキドキしてる。


 イズっちの胸に当ててるあたしの手が、それを教えてくれている。


 イズっちはどうなのかな?


 あたしのことを……どう見てる?


「あり?」


「あたしを……彼女にしたいって……思う?」


 ねぇ、イズっちはどう思ってるの?


 教えて? イズっち。


「そ、それは―――」


 ガチャ


「お邪魔しまーす!」

「ん、来た」


「えっ?」

「………………はっ?」


 お風呂場の入口を見ると、涼華と周防さんが立っていた。


「……輝夜ちゃん、出流君に後ろから抱きついて、何してるのかな?」


「……体を洗ってるだけだけど?」


「ふーん、そっか! じゃあ私も洗ってあげようかな♪」


 涼華がささっと、イズっちの前にやってきた。


「はっ、はぁぁ!? いやいやいやいや、なんで涼華と周防さんも入って来てるの!? 罰ゲームでしょ!?」


「ん? 一緒に入って、お互いに背中を洗うんだよね? このあとやるよ? 別に輝夜ちゃん達と一緒入っちゃダメって言ってなかったよね?」


 ……りょ……りょうかあああああああああ!


 めちゃくちゃ良いところで邪魔しにくるとか、狙ってた!?


「イズ、大丈夫? すごく痛そう」


 ふと見ると、周防さんまでイズっちの近くにいて、イズっちの目を見て心配している。


「大丈夫、ちょっと触るくらいなら平気だよ」


「痛そうだよねー? 痛そうだから、あとは私が洗ってあげるね?」


 そう言うと、涼華はイズっちの片腕を洗い始め―――


「ん、私もやる」


 もう片方の腕をエリが洗い始めた。


「い、いや、そこまでしてもらわなくても」


「いいからいいから!」

「任せて」


 涼華が強引に進め、周防さんもそれに続いていく……


「……わ、わかった。じゃあ上だけお願い。下はさすがに……」


「はーい!」

「ん」


 …………あぁー! もう! あたしの予定がむちゃくちゃだよ!!!


☆―――――☆

次回8/16更新です。


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