第23話 エリの罰ゲーム

 涼華が薬を塗り終わったあとも、俺の胸の上でゴロゴロして、満足してから解放された頃には、もう料理が出来上がり始めた頃だった。


「ん、もうすぐ出来る」

「ずいぶん熱心に薬塗ってたみたいだね?」


 エリはなんとも思ってなさそうだが、輝夜の方は不満を溜めているようだった。


「ふふふ、ごめんね? 出流君が可愛かったから♪」


「……へぇ〜? 明日の朝はあたしの番だからね?」


 それだけ言うと、輝夜は調理に戻り、涼華も手伝いに行った。

 せめてお茶の準備だけしておこう。

 俺がテーブルにお茶の準備をしていると―――


「お待たせ」


 エリが料理を持ってきてくれた。

 今日の晩御飯は―――


「丼?」


「ん、挽肉とピーマンのチリトマト丼」


 エリはそれだけ言うとテーブルの上に丼を置いた。

 エリの後ろから涼華と輝夜もやってきて、残りの丼とサラダを持ってきて、準備完了だ。


「「「「いただきます!」」」」


 ニンニクの香ばしい香りが食欲をそそり、俺はスプーンで挽肉とご飯を掬うと口の中に―――!!


「んん! ピリッとして挽肉の旨味が口の中に広がって酸味が合わさり、めちゃくちゃ美味しい!」


 これはまたおかわりしたくなる味だ!


「うん! 昼と同じでこっちもピリっとして美味しい!」

「これは食欲進むね」


 涼華と輝夜にも好評のようだ。


「イズ」


「ん?」


「罰ゲーム」


「あぁ、そうだったね。じゃあ一口もら「あーん?」あーん?」


 エリは俺に自分のスプーンに一口分乗せて差し出してきた。

 その一口には挽肉も乗っているが、俺らの分より赤身がかっている。

 辛過ぎるのは得意じゃないんだけど……罰ゲームだしな。

 俺は思わず唾を飲み込み、意を決してエリのスプーンに乗ったチリトマト丼を食べた。


「モグモグ……んん? 意外と辛くな……いや、カラッ!?」


 おぉぉぉ……あとから辛味が襲ってくる!

 だけど―――


「辛いけど……意外といけるね!」


「ふふ、よかった」


 エリのことだから、すっごい激辛だと思ったけど、意外と大丈夫だった。

 これなら、エリと同じ物でもいけるかも!


「今回は少しだけ辛味抑えたから」


 ……やっぱり無理かも。


「んでも、このぐらいなら食べれそうだよ」


「もう少しだけ入れてみる?」


 エリはポケットからタバスコを取り出し、俺に見せてきた。


「……じゃあ、ちょっとだけ」


「ん」


 俺のチリトマト丼に軽くタバスコがパッパと振りかけられたので、軽く混ぜて一口……


「うん、これぐらいなら大丈夫!」


「……出流君、私も一口貰ってもいいかな? どれぐらい辛いのか気になるから!」


 涼華が俺のタバスコが掛かった分に興味を持ったようだ。


「うん、いいよ。はい、どう「あーん」あーん?」


 俺は丼ごと涼華に差し出すが、涼華は目を閉じて、俺に向けて口を開き、雛鳥のようにして待っている。

 俺は一口分スプーンで掬うと涼華の口の中に入れてあげた。


「モグモグ……うん、私のより辛いけど、この位なら大丈夫!」


「イズっち! あたしにも! あーん!」


 輝夜も涼華と同じ様に口を開けたので、俺はまた一口掬って口に入れてあげる。


「モグモグ……んー……ちょっと辛すぎるかも?」


「あれ? そうかな?」


 この位なら大丈夫かと思ったけど、輝夜はお気に召さなかったようだ。


「うん、ほら、元のこっち食べてみて、あーん?」


◆―――――――――◆

《SIDE 涼華》


 うまいなー、輝夜ちゃん。


 うまく誘導して、出流君にあーんしてあげてる。


 出流君は出流君で平然と食べてるし……それ、間接キスだよ?


 さっきから普通にしてるけど、何とも思わないのかな?


 いいなー……私もしたいけど……どうしよう……


 出流君のことだし……強引にでもいけるかな?


「はい、出流君、あーん?」


 私は自分の丼から一口分掬い、出流君に差し出した。


「ん、うん? 涼華も?」


「うん、出流君の一口貰っちゃったし、私も出流君にあーんしたいから♪ あーん?」


「あ、あーん」


 出流君が私の分を食べてモグモグしている。


 ふふ、出流君は押しに弱くて、可愛いなぁ♪


「美味しい?」


「う、うん、美味しいよ」


 これで私も間接キスできたから一先満足かな♪


「イズ、私も」


「ん、んん? あーん?」


「ん、あーん」


 周防さんも皆と同じように、口を開けて、出流君から運ばれてくるのを待っている。

 ……やっぱり、周防さんも狙ってるのかな? それとも自分もやってほしかっただけ?

 わかんないなー……


「美味しい」


「はは、うん、美味しいよエリ。作ってくれてありがとうね」


「ん、今度はイズが作って?」


「あぁ、今度美味しそうなタバスコ料理調べておくよ」


 ちゃっかり次の約束って……

 うーん……やっぱり周防さんも聞いてみた方が良さそうだよねー……

 

 ガチャン ただいまー!


 ……えっ? 誰だろう? ご両親は帰ってこないって言ってなかったっけ?


「出流! ただい……ま……」


「あれ、母さんお帰り。帰ってこないんじゃなかったの?」


「貴方が怪我したって言ったから、お父さんに仕事押し付けて帰ってきたのよ」


「お父さんに押し付けちゃダメでしょ……」


 えっ? お、お、お母様!?


☆―――――☆

お待たせしました! 不定期更新ですが、頑張ります!


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特に創作意欲に繋がるので星を何卒……!

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