第16話 今度抱き枕買っておくよ

 朝ふと目が覚めた。

 んん……んん? なんか……腕が動かない?

 俺は原因を見るためゆっくりと顔を動かすとそこには顔があった。


「スゥー……スゥー……」


 涼華だ。

 涼華の顔が眼前にある。

 むしろ近すぎて、顔の全体が見えていない。

 

 ……………………んんん!? ち、ちかっ!?


 俺は驚き、離れようとしたが、俺の腕は涼華に抱きしめられていた。

 通りで動かない訳だ……

 じゃあこっちは……俺は顔を逆サイドに向けた。

 こっち側には顔はない……顔はないが……俺の腕ごと体に抱きついている輝夜がいた。

 いや……寝る時こんな状態ではなかったよね? 二人とも抱きつき癖があるのかな? 俺抱き枕じゃないんだけど……

 とりあえず、どちらかに起きてもらわないと動けないな……

 どちらかに起きてもらえるように、少しだけ身動ぎすると―――


「んん……んー……?」


 涼華が起きたかな?

 涼華の方に顔を向けると、薄っすらと目を開けた涼華と至近距離で目があった。


「お、おはよう、涼華」


「…………んん」


 涼華は何事もなかったかのように、再び目を閉じ、少しだけ動いてくれた。

 至近距離ではなくなった。なくなったが……俺の肩に顔をくっつけ、俺の腕が涼華の2つの大きな山の渓谷に飲み込まれ、動かなくなってしまった。位置調整したのかな?

 こうなったら輝夜側にかけるしかない。

 俺の腕が輝夜の大きな2つの山の渓谷にいるので、刺激しないように少しずつ、少しずつ移動を開始する。

 渓谷を移動し、刺激しないように抜けようとしたが……


「んん…………」


 ……刺激してしまったかな?

 輝夜はゆっくりと顔をこちらに向けて……数秒固まっていると、少しだけ体を動かし、こちらに近づいてきた。


「へへへ、おはよう。イズっち」


「お、おはよう輝夜……なんで抱きついてるんだ?」


「あたし寝る時、抱きつき癖があるみたいなんだよね。だから家では抱き枕を抱いて寝てるんだ」


「なるほどね……ところで、そろそろ離してもらえると?」


「あはは、そうだね。よいしょ……っと……んーーー! ……へぇ?」


 輝夜は上半身を起こし、伸びをすると俺の方を向いて固まった。

 いや、正確には涼華の方かな……?

 数秒涼華を見つめたあと、再び横になり俺の腕を抱きしめてきた。


「え、えっ? あれ、起きるんじゃ……?」


「……イズっち、昨日のこと覚えてる?」


「昨日?」


「あたしの下着の色の話」


「……覚えてるけど」


「今何色の下着付けてると思う?」


「えぇぇ? 今なの!?」


「うん、今。イズっちの答えは?」


 な、なんで今この状況でなんだ!? 


「え、えっとー……黒かな?」


「ぶっぶーはずれー。罰ゲームだね」


 そういうと輝夜は先ほどの涼華と同じように、俺に顔を近づけてきた。


「しばらくこのままね? あたしはもう一眠りするから」


「えっ?」


「へへ、お休み」

 

 そのまま輝夜は目を閉じてしまった。

 ……さっきと涼華と輝夜の状態が逆になっただけじゃないか?

 どうしよう……


「んー……んぁ……」


 涼華が再び目を覚ました……?


「りょ、涼華?」


「……んー?」


 俺の呼びかけに涼華が薄っすらと目を開け、顔を向けてくれた。


「おはよう、涼華」


「んー……おはよう……」


 挨拶すると涼華はまた目を閉じて、寝ようとする……

 出来れば起きて欲しいんだけど……


「朝だよー? そろそろ起きよう?」


「んー……」


 涼華が再度薄っすらと目を開いて、俺を見てきた。


「涼華ー? もしかして、朝弱いのかな?」


「…………えへへ」


 くっ……か、かわいい……


「ふぁー……おはよう、出流君」


「あぁ、おはよう。よく眠れた?」


「うん、出流君先に寝ちゃったから、寝顔見てたら私もすぐ寝ちゃった」


 は、はずかしい……


「んーーー! ハァー! それじゃ顔を洗……」


 涼華は上半身を起こし、軽く伸びをして俺に話しかけている途中で固まった。


「どうしたんだ?」


「輝夜ちゃん近いなと思ってね」


「あ、あぁ、罰ゲームでちょっと……」


「罰ゲーム? 何の?」


「あー、そのー……輝夜の……し、下着の色を当てれなかった罰」


「……ふーん、そうなんだ?」


「う、うん」


「……私の色は何色だと思う?」


「……えっ!?」


「何色の下着だと思う?」


 こ、答えなくちゃいけないのか?


「え、えっとー……し、白とか?」


「はずれー! 罰ゲームだね♪」


 涼華はそう言うと、今の輝夜と同じような状態で寝転がってきた。


「ふふふ、しばらくこのままお話しようか?」


 ち、近い近い近い!


「こ……このまま?」


「ふふふ、ちょっと恥ずかしいね」


 ちょっとどころではないんだけど……

 

「う、うん」


「出流君の目、綺麗だね」


「そ、そうかな?」


「うん、とっても綺麗だよ。もっとよく見せて?」


 そう言うと、涼華はさらに近づいて―――ぬおっ!? 

 逆サイドから体を引っ張られた。


「んー! そろそろ起きようか、イズっち」


 輝夜が起きて、俺を引っ張ったのか……た、助かった。

 今度抱き枕を買っておかないと……

 そのまま俺も起き上がると涼華も体を起こし、ニコニコした笑顔で輝夜を見ている。


「おはよう、輝夜ちゃん。随分タイミングがいいね?」


「おはよう、涼華。なんか、乙女の感が起きなきゃって言ってたからさ」


「ふーん、そうなんだ」


「うん、そうなんだよ」


「「…………ふふふふふ」」


 涼華と輝夜はお互いに笑顔で笑い合っている……うん、仲が良さそうだね?


「ははっ、それじゃあ顔洗って朝ご飯にしようか」


「うん、イズっちは先に降りてて。あたしたちは、ちょっと支度したいから」


「あぁ、わかった」


 俺は先に顔を洗うため、部屋から出て洗面所に向かった。


◆―――――――――◆

《SIDE 輝夜》


 危なかった……下手したらあのままキスするんじゃないかと思った。

 マジで油断できないんだけど。


「朝からガンガン攻めるね?」


「ふふふ、負けてられないからね? 輝夜ちゃんも寝た振りしてたみたいだし」


「もう少しイズっちを私でドキドキさせたかったんだけどなー」


「……明日は頑張って起きるようにしないと、輝夜ちゃんが何するか心配になったよ」


「別に寝てていいのに」


「そうはいかないよ」


 あぁ……厄介だなぁ……油断した隙に、先に行かれるかもしれないじゃん。

 イズっちをあたしのものにしたいのに……もう少し攻めないと……


☆―――――☆

遅くなりましたが、☆600突破しました!

星をつけて頂き、ありがとうございます!


もしよければ、応援、フォロー、星をよろしくお願い致します。

特に創作意欲に繋がるので星を何卒……!

コメントもお待ちしております!


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る