第15話 川
映画を見始めようとしたが……
「そうだ、お菓子と飲み物取ってくるよ。二人は待ってて」
「うん、ありがとう」
「ありがとう、イズっち」
俺は部屋を出て台所に取りに行った。
◆―――――――――◆
《SIDE 涼華》
部屋には私と聖さんだけ……何かの間違いかもしれないし、念の為聞いておこうかな。
「……聖さんはなんで出流君の家に来たの?」
「なんでって……わかりきってることを聞く必要があるの? 叶さん」
やっぱり愚問だった。
「……そっか。そうだよね」
「うん、そうだよ」
「聖さん」
「何?」
「負けるつもりはないからね?」
「……上等! イズっちは渡さないから!」
「ふふふ、出流君は私のだから」
「……なんで叶さんはイズっちのことが好きなの?」
「……出流君の……困ってる人には誰にでも手を貸す純粋な優しさに惹かれたんだよ」
「……同じだね。あたしもイズっちの底抜けの優しさに目が離せなくなったんだ」
「ふふふ、同じなんだね」
「……ねぇ、涼華って呼んでもいいかな?」
「いいよ、私も輝夜ちゃんって呼ぶね?」
「へへ、
「うん、
「それ! ……周防さんや静流はどうなんだろうね」
「……静流ちゃんは大丈夫なように見えるけど……周防さんは半々かな」
「あたしは静流もちょっと怪しいと思うけどね」
「そうなの?」
「うん。静流って入学してから何度か告白されてるけど、相手してる男子ってイズっちとイズっちの友達の男子だけだから」
「友達の男子って、高貴君のことかな? 実は高貴君のこと狙ってるとかはないの?」
「高貴って言うんだ? そっちは普通に友達として付き合ってそうだけど、イズっちのことを見る目が普段より優しそうな目をしてるからね」
「そっか……」
「うん、今後どうなるか知らないけど、今のうちに差を広げる必要があるからね」
「そうだね」
静流ちゃんも怪しいのかー……仲良さそうには見えてたけど……席が隣で気軽に話せて羨ましいなぁ……
ガチャ
「お待たせ! 適当にコーラとポテチでいいかな?」
◆―――――――――◆
《SIDE 出流》
「うん、何でもいいよ!」
「うん、イズっちも早くおいでよ」
俺は先ほどと同じ場所に座り、コップを配る。
「あぁ、ごめんね。私に注がせて?」
「あぁ、お願いしてもいいかな」
涼華にペットボトルを渡し、俺は画面を操作し、俺たちは映画を見始めた。
序盤はストーリーや登場人物を理解するため、しっかり見ていたが、ストーリーが進むに連れ、コミカルなおばけ達がコミカルに倒されていく様に、俺たちはクスッと笑ってしまう。
「ふふふ」
「はは、そりゃそうなるよ」
「あはは、今のやばいね」
これはすごいな、リメイクされるだけはあるね。
ふと俺はなにげなく、涼華の方を見ようとしたが……
いつの間にかに隣にいた……正面から画面を見たかったのかな?
輝夜は……輝夜も隣にいるな……。
うんん、ちゃんと正面から観れるように配慮するべきだったな。
俺が横側に行って二人に正面を譲るべきだった……反省。
そのままストーリーも終盤に入り、壮大な展開の末終わりを迎えた。
目を離せない展開にずっと見入っていたが、エンディングが流れ始め、ようやく肩の力を抜くことが出来た。
実に良い映画だった。
「すごくおもしろかった!」
「うん! 何回も笑っちゃった! 出流君も目を見開きながら見てたもんね」
「リメイクされるだけあって、クオリティ高かったね。あたしも思わず、笑っちゃってたよ。イズっちもちょくちょく笑顔になってたね」
うんうん……なんで二人とも俺の顔を見てるんだ?
「ははは、そ、そうだね。」
「良い時間になったけど、寝る?」
「ここでイズっちも寝るんだよね?」
「えっとー……俺もここで寝ていいのかな? あれだったら、俺は別の部屋で寝るけど」
「出流君も一緒に寝よ?」
「来週一緒に寝るんだし、今更でしょ」
「……わかった。じゃあ布団持ってくるね」
「あっ、あたしも、取りにいくよ」
「じゃあ、私はテーブル退かして、布団敷いておくね」
俺と輝夜は立ち上がり、予備の布団をもう一組取りに行った。
もう一組お客様用の布団があってよかったよ。
俺は予備の布団の場所に輝夜を案内して、輝夜に布団を持ってもらった。
布団を持って部屋に戻ると、テーブルが退かしてあり、既に布団が敷いてあった。
輝夜は布団を置くとそのまま敷いて準備完了だ。
「じゃあ、準備も出来たし寝ようか」
俺はそのままベッドで寝ようと移動するが……あれ、俺の枕は?
「出流君、一緒に寝ようよ!」
「イズっちも寝るんでしょ?」
「ん? 同じ部屋で寝るよ?」
「じゃなくて、一緒にこっちのお布団で寝よ?」
「イズっちは真ん中ね!」
えっ……?
「いや、俺はこっちで大丈夫だよ。あっ、もしくはどっちかベッド使う?」
「ベッドだとお話するにはちょっと遠いからこっちにしよ? ほらほら」
「そうだよ。心配だからこっちにおいでって」
涼華と輝夜は立ち上がり、俺の手を引っ張って、布団まで連れてこられた。
……俺の枕ここにあったか。
そのまま涼華と輝夜は両サイドで寝転がりだした。
俺も釣られて、同じように真ん中に寝転がった。
3人で川の字で寝ているような状態だ。
「ふふふ、出流君が横にいるって変な感じ」
「う、うん、俺もだよ。誰かと一緒に寝るなんて……いつぶりだろ」
「へへへ、イズっちもなんだ。あたしも誰かと一緒に寝るなんて幼稚園以来だよ。小学生から一人で寝てたし」
「そうなんだ! 俺は……どうだったかな……」
「思い出せないってことは、出流君はもしかしたら幼稚園の頃から一人で寝てたのかな?」
「んー……そうかも?」
「へぇー、イズっちすごいね! 幼稚園の頃から一人で寝てたなんて」
「と言うよりも、両親の帰りが遅かったからさ、必然的に一人で寝てたんだ」
「……そっか、その頃からもう、出流君の家は共働きなんだね」
「うん」
「寂しくなかった?」
「……寂しかったような気がするよ。でも、父さんも母さんも別に俺のことが嫌いな訳じゃないし、時間が合う時はずっと傍にいてくれたから」
「……そっか!」
そのまま電気を消して、俺たちは他愛のない話をしているといつの間にかに眠ってしまっていた。
☆―――――☆
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