第14話 3人でお泊り会

 輝夜が来るのは早かった。

 何かを入れたカバンを持って自転車でやってきたからだ。

 俺は輝夜をリビングまで迎え入れた。


「イズっち! 今日明日よろしくね!」

「あ、あぁ、本当に来たんだな?」

「叶さんだけ泊まるとかズルいじゃん! あたしもイズっちと寝ながらおしゃべりしたいし」

「ズルいのか……? まぁ、いいや。多分お風呂入ってないんだよな? お風呂も入ってきなよ」

「あんがと! お風呂借りるね」

「あぁ、案内するよ」


 俺は輝夜にお風呂場を案内し、シャンプーや、ボディーソープの案内をして……気づいてしまった。

 まだ洗濯機が回っていることに。


「…………」

「どうしたのイズっち?」

「いや……その……まだ洗濯機が回ってることに驚いて……」

「? イズっちが回してるんじゃないの?」

「俺じゃない。涼華だと思う」

「ふーん、それで?」

「いやーそのー……さっきお風呂入ってたから、多分下着を洗濯してるんだと思うんだけど……」

「……叶さんって今どんな格好なの?」

「俺のシャツとズボンを貸してるんだ。着替えなんてないから」

「……先に叶さんに会ってくるね。イズっちはリビングで待ってて」


 そう言うと、輝夜は俺の部屋に向かったようだ。

 よくよく考えたらそうだよな。こんな短時間で洗濯終わるわけないじゃん。

 乾燥機も使わないって話だし……

 そして、リビングで待っていると、輝夜が戻ってきた。


「あたしの予備貸したから、大丈夫だよ」

「あ、あぁ、ありがとう」

「じゃ、お風呂借りるね」

「ごゆっくり」


 輝夜もお風呂に行ったので、俺は自分の部屋へと戻った。

 部屋に戻ると涼華は俺の部屋のテーブルの傍に座っていた。


「あ、おかえり、出流君。ドライヤー使わせてもらったよ」

「ただいま。自由に使ってくれ」

「本当に聖さん来たんだね。家近いのかな? 来るの早かったし」

「近いっぽいことは言ってたよ。あと自転車で来たみたい」

「ふーん……そっか、いいなぁ」

「? 何が?」

「何でもないよ。それより何しようか? いつもは出流君何してるの?」

「うーん、いつもは動画見たり、漫画読んだり、ゲームしたりかな?」

「動画って?」

「ほら、Nile Riverって映画配信してたりするから、そこで映画漁って見たりとか、『Me Tube』とかで実況動画見たりとかかな」

「なら、映画見ない?」

「うん、いいよ。輝夜が戻ってきてから見ようか」

「うん! じゃあその間お話しよ? 私出流君のことまだ知らないことばっかりだから」

「うん、なんだかんだで俺も涼華のこと知らないから、色々知りたいな」

「えへへ、じゃあ―――」


 涼華がニコニコと笑顔で俺に質問をしてくるので、涼華から見て俺はテーブルの横側に座り、俺はひとつひとつ答えていく。

 笑顔が可愛いなぁ……

 俺も、涼華のことを色々聞いてみた。

 中学の頃の話だとか、いつも帰って何してるのかとか、涼華にちょくちょく質問しているが……涼華の質問が多くなってきた。


「あとはねぇ……出流君って彼女いたことはある?」

「うんん、ないよ」

「そっか! 好きな人はいないの?」

「う、うん。特には居ないかな」

「そうなんだね! じゃあ、私とかどうかな?」

「え、えぇ!?」

「出流君から見て、私はどう見える?」

 

 涼華は俺の隣までゆっくりと近づいてきて顔を覗き込んでくる。

 ち、近い近い近い!?


「え、えぇっと……」

「うん?」

「それは「お風呂あがったよー」お、お帰り!」


「……おかえり、聖さん」


「……何やってたの?」


「ただ質問しておしゃべりしてただけだよ?」


「……ふーん」


 輝夜が部屋に入ってきたことで、涼華も元の位置に戻った。

 輝夜は涼華から見て、対面になるように座った。


「あ、ドライヤー必要だよね?」

「うん、先にドライヤー貸してもらえるかな?」

「あぁ、そこにあるから使っていいよ」


 俺はドライヤーを指差して、輝夜に教えると輝夜はドライヤーを使い始めた。

 このタイミングで思い出すのもあれだけど、まだ目薬差してないや。

 俺は鞄から目薬を取り出し、眼帯をはずして目薬を注そうとするが……うまく注せない……


「出流君、一人で出来る?」

「……ちょっと難しいかも」

「貸して? 私が注してあげるよ」

「うん、お願い」


 俺は目薬を涼華に渡して、上を向くと涼華が近づいてきた。


「うわぁ……初めてちゃんと見たけど、すっごく痛そう……」

「あはは、ごめんね。ちょっと気持ち悪いよね」

「うんん!? そんなことないよ! 出流君が頑張った証だもん」

「はは、ありがとう」

「本当に痛くない?」

「うん、大丈夫だよ。初日に比べれば少し引いた方だし」

「そっか……じゃあ、注すね?」

「うん」


 涼華が俺の瞼に触れ少しだけ目を開けると、そこに目薬を注してくれた。


「終わったよ。これで終わり?」

「あぁ、あとは塗り薬だね」

「そっちもやってあげる。貸して?」


 そう言って涼華は俺から塗り薬を取ると、俺の瞼を刺激しないように優しく薬を塗り始める。


「優しく塗ってるつもりだけど、痛かったら言ってね?」

「大丈夫だよ。ありがとう」


 涼華は俺の目を労わるように薬を塗り……


「……痛いの痛いの飛んでけー!」


 涼華が可愛らしく、子供をあやすようにおまじないまでかけてくれた。


「ははは、ありがとう、涼華」

「えへへ」


 これで薬は終わった。

 さて、輝夜もドライヤー終わったかな? 俺は輝夜の様子を見ると……


「…………」


 こ、こわっ!? なんかこっちを射殺しそうな目で見てるんだけど!?


「イズっち」

「は、はい!」

「明日の朝はあたしがやるから」

「い、イエスマム!」

「塗り薬もやるからね?」

「りょ、了解であります!」


 そう言うと輝夜は俺の隣までやってきた。


「じゃ、じゃあ映画でも見ようか?」


「うん、そうだね!」

「いいね! 何見る?」


「うーん、特に決めてないからなぁ」


「いつもはどんなの見てるのかな?」


 涼華の質問に何を見ているか考え……


「いつもはアクションとかホラーとかファンタジーとかかな」


「あ、なら『ゴーストハンターズ』ってやつ見ない?」


 輝夜が提案してきたのは昔のコメディホラー映画だ。それのリメイク作品が最近配信されていた。


「いいんじゃないか?」

「うん、それでいいよ」


 俺は画面を操作して、映画の視聴し始めた。


☆―――――☆

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