第13話 はっ?


 おおおおおお、落ち着け、落ち着こう。

 俺は一人で入ること前提だったからタオルを巻いてない! とりあえず、タオルを巻かせてもらえないだろうか!?


「あの、俺のことは気にしなくて大丈夫だよ!?」


「うんん、ダメ、私にもお礼させて? それとも……私と一緒にお風呂入るのは嫌?」


 その聞き方はずるくないかな!?


「いやいやいや、嫌とかじゃないけど、俺タオル巻いてないし、恥ずかしいというかなんというか……」


「あぁ、そうだよね。ちょっと待ってね」


 涼華はお風呂場から出てタオルを持ってきてくれた。

 俺はすぐさま腰にタオルを巻き、なんとか最低限の装備をした。


「じゃあ、背中洗うね。痛かったり、強くして欲しい場所があったら言ってね?」


 そう言うと、涼華は俺の背中をスポンジで洗い始めた。

 ……へ、平常心だ。平常心を保つんだ!

 とりあえず、頭を洗わないと前が見えない……

 どうしようにもないので、俺は髪を洗うことにした。

 

「ふふふ、出流君の背中ってこんな感じなんだね。ガッシリしてて逞しいよ」


「そ、そうかな?」


「うん」


 俺はなんとか頭を洗い終わり、涼華の方も終わったようなので、シャワーを浴びて泡を落とした。

 一度深呼吸をしよう……理性を保つんだ……スゥ―――ハァ―――


「あ、ありがとう、涼華。あとは自分でできるから湯船に浸かって。そのままじゃ風引いちゃうから」


「うん、そうさせてもらうね」


 なんとか冷静さを取り戻した俺はお湯を止め、体を洗い始める。


「はぁー……お風呂って気持ちいいよねー」


「うん、そうだね」


「危うくお風呂どころか、公園で寝ることになる所だったよ。本当にありがとうね?」


「ん? 別に俺のところじゃなくても他の女子の友人とかにお願いも出来たんじゃないか?」


「んー、私ね、人にお願いするのって苦手なんだ」


「あー、わかる気がする。なんか申し訳なくなっちゃうんだよね」


「そう! いっつもオロオロしちゃうの。だからね、この間日直手伝ってくれた時はすごく嬉しかったんだよ?」


「ははっ、ならよかったよ。お願いするのが苦手なら困った時、気づいたら俺が手助けするからさ、何でも言ってね」


「……ふふふ、出流君は優しいね?」


「そうかな?」


「そうだよ」


 優しいのかな……? ただ見過ごせないだけなんだけど……

 俺は洗い終わり、シャワーを浴びて……湯船に浸れるわけないじゃないか!

 まぁ、シャワーも浴びたし今日はこれでいいや。


「よし、じゃあ、俺は上がるからゆっくりしていってね」


「えぇ? 湯船に浸からないの?」


「うん、髪乾かしたりとかもしたいからさ、一緒に出るわけにもいかないし、先に上がるよ」


「……わかった。じゃあお部屋で待ってて?」


「うん、ごゆっくり」


 俺はお風呂場を出て扉を閉めると同時にため息をついた。

 まだ心臓がドキドキしてる……

 まさか涼華が入ってくるとは思わなかったよ……

 俺は服を着て自分の部屋に戻……る前に布団を準備しておこう。

 たしかこっちの部屋に予備の布団が……あった!

 俺は布団を抱え、自分の部屋に戻り、布団を敷いた。

 ……今更だけど、女の子と一緒の空間で寝るのか。ちゃんと寝れるだろうか?

 まぁ、明日は休みだし、なんとでもなるか。


 ピロン♪


 ん? あぁ、輝夜か。


輝夜『今帰ってきたんだけど、通話しても大丈夫かな?』

出流『うん、大丈夫だよ』


 ―――♪


『もしもし』

『へへ、さっきぶり!』

『さっきぶり、さっきは涼華の料理手伝ってくれてありがとう』

『いいんだよ別に。それより今何してたの?』

『あぁ、お風呂から上がって布団の準備してたんだ』

『ふーん? そっか。あたしもお風呂入らなくちゃ。イズっちはお風呂は浸かる派? シャワー派?』

『できれば浸かりたいかな。体が温まるし、ゆったり入れるからね』

『わかる! あたしも浸かって1日の疲れを落としたいんだよね。通話したままお風呂入ろうかな』

『通話したまま? のぼせない?』

『大丈夫大丈夫!』


 ガサゴソと引き出しを開ける音が聞こえてくる。本当に通話したままお風呂に入るつもりなのかな?


『イズっちは何色が好き?』

『色? うーん、黒とか白かな。赤とかも捨てがたいけど』

『へぇー? 黒とか赤とかセクシーな感じがいいんだ?』

『セクシー? 色の話じゃないの?』

『何色の下着にしようかなと思って』

『ぶっっっっっ!? ししししし下着の話だったの!?』

『そうだよ。イズっちが好きな色にしようと思って』

『……それは、なんというか……その……』

『あはは! ドキドキした?』

『びっくりしたよ!』

『あはは! じゃあ明日何色か当ててね? 当たったらご褒美あげる』

『えっ!?』

『ハズレたら罰ゲームね』

『そんなの当たらないよ!』

『さっきの3つのどれかにしてあげるよ』

『3分の1か』

『それなら当てれるでしょ?』

『う、うーん? 当たるかなぁ? それより、ご褒美と罰ゲームって?』

『内緒♪ 楽しみにしてて』

『う、うん。わかったよ』

『じゃあそろそろお風呂に入ろうかな』

『本当に通話したまま入るんだ?』

『うん、そしたらイズっちとおしゃべりしながら入れるから楽しいし』

『水に濡れないように気をつけなよ?』

『わかってるって!』

『それで「出流君あがったよ」「あぁ、おかえり」』

『ん? イズっち誰かいるの? 両親帰ってこないんじゃなかったっけ?』

『あぁ、涼華が家に泊まることになったんだ』


『……はっ?』


「出流君、誰と話してるの?」

「輝夜とだよ。今からお風呂に入るからおしゃべりしたいって」


 俺はスピーカーモードにして涼華にも聞こえるようにする。


『……なんで叶さんがイズっちの家でお泊りしてるの?』


「家に帰れなくなっちゃって、今日明日出流君の家に泊めてもらうことになったの」


『はあっ!? 今日明日!?』


「あぁ、帰れないって話を聞いたから、幸い両親もいないし、泊めてあげることにしたんだ」


『……しも』


「ん?」


『あたしも泊まる!』


「え、えぇ!?」


『叶さんが泊まるなら、あたしもいいよね!?』


「う、うん。別に泊まるのはいいけど」


『今から行くから!』


 ブツッ―――


 通話が切れた……

 え、明日からじゃなくて今から来るの?


◆―――――――――◆

《SIDE 涼華》


 静流ちゃんや周防さんはわからないけど、聖さんはもう確定だよね?


 お風呂通話に、何の理由もなく泊まりに来るとか……


 ライバルが四天王かー……


 負けるつもりはないからね? 聖さん……!


☆―――――☆

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2024年7月2日 00:01
2024年7月5日 00:01

不運な美少女たちを助け続けたら、いつの間にか狙われていました 黒蜘蛛 @eruruku

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