第12話 助けて……? お礼はするから♪


 美味しい夕食だった。

 バター醤油の生姜焼きなんてあるんだなぁ……目が治ったら自分でも作ってみよう。

 そのあとは軽く談笑しながら、俺たちは食事を終えた。


「ご馳走様でした。 本当に美味しかったよ!」

「ふふ、お粗末様でした。また作ってあげるね?」

「はは、ありがとう。俺も目が治ったらご馳走様するよ」

「出流君もけっこう料理するんだ?」

「うん、両親が共働きで二人とも帰ってくるのが遅いから、よく料理してるんだ」

「そうなんだ……出流君は偉いね。ちゃんと料理して」

「まぁ、お金はあるけど、僕のお金ってわけでもないからね。節約するようには心掛けてるよ」


「イズ偉い」

「イズっちってよく料理するんだ? そんな状態なら外食とかが多くなっても、おかしくないと思うけど」


「料理するのは嫌いじゃないからね。と言っても食べるのは自分だけだから、ちょっと寂しいんだけど……」


「……なら、あたしが一緒に食べてあげるよ。毎日は無理でもたまにならあたしも大丈夫だから」

「私も都合がつく日は出流君に声かけるから一緒に食べよ?」

「ん、一緒に料理食べよ?」


「……はは、ありがとう、輝夜、涼華、エリ」


「ふふふ、それじゃ、いい時間だからそろそろ帰らなくちゃ」

「ん、明日また来る」

「あたしもそろそろ帰るよ。またあとで連絡するね、イズっち」


「連絡……? 出流君、私にも連絡先教えてくれるかな?」

「私も」


「あ、あぁ、わかった」


 俺は携帯を取り出し、涼華とエリとも連絡先の交換をした。

 高校に入ってから女の子の連絡先が増えていくな!


「じゃあ左側には気をつけてね、イズっち」

「イズ、また明日」


「あぁ、二人ともまた明日!」


 二人を玄関まで行って見送った。


「あ、ごめん出流君、帰る前にお手洗い借りていいかな? あと、上着貸してね?」

「あぁ、わかったよ。お手洗いは玄関の右側の扉だよ」

「ありがとう」


 涼華がお手洗いに向かったけど、近くで待つのは失礼だよな、リビングでソファーに座って待ってるか。

 上着を準備して、少しの間リビングで待っていると、涼華がやってきた。

 俺はソファーから立ち上がり、涼華に駆け寄った。


「今日はありがとう、料理おいしかったよ」


「ふふふ、また作ってあげるね! それじゃ『―――♪ ―――♪』あ、電話だ。ごめん、ちょっと待って……もしもし? あ、お母さん?」


 両親からの電話か。

 なんだかんだでいい時間だし、両親が心配しているのだろう。悪いことをしてしまった。


「え、えぇぇ!? そうなの? 私、鍵持ってないんだけど―――えっ? 今友達の家だけど―――うん、うん―――わかった―――うん、大丈夫だよ。気をつけてね。それじゃ……」


 涼華の電話が終わったようだ。ちょっとだけ暗い顔をしている……やっぱり、俺の所為かな?


「あぁー……両親からだよね? ごめん遅くなったから心配してた?」


「うんん……そうじゃないんだけど……私、家に帰れなくなっちゃった」


「え、えぇ!? 何があったの?」


「うん……親戚が倒れたらしくて、今慌てて両親が病院に向かったらしいんだけど……家の鍵閉めて出ていって……私、鍵持ってきてないから、家に入れなくて……帰ってくるのが日曜日の夕方とかになるみたいなの……」


 帰れないとか大変じゃないか! どうせ俺一人だし、聞くだけ聞いてみるか?


「涼華が嫌じゃなかったら、家に泊まる?」


「……いいの?」


「うん、どうせ両親いないから泊まるのはいいけど、着替えとかないよね? 下着はさすがに無理だけど、上着とズボンなら俺ので良ければ貸せるよ? さすがに男が一人でいる家だから、無理にとは言わないけど」


「……出流君なら嫌じゃないよ。じゃあ、お言葉に甘えてもいいかな?」


「あぁ、ならお風呂準備するよ。着替えとか必要だろうし」


「本当にありがとう! さすがに急に他の子にお願いするのも難しいし、出流君がいてくれてよかった!」


「はは、大げさだなぁ。あとは寝る場所だけど「出流君の部屋じゃダメかな?」えっ?」


「どうせなら、出流君と一緒に寝たいなって……ダメかな?」


 涼華が上目遣いで俺のことを見てくる……まぁ、何かするつもりも無いし別にいいか。


「う、うん、大丈夫だよ」


「やった!」


「じゃあ準備してくるね」


 俺はお風呂場に向かい、お湯を溜める。

 涼華、下着はどうするんだろう……? 洗濯して乾燥できるように説明したほうがいいよね……

 俺はお湯を溜め、洗濯ネットの準備をして自分の部屋に向かった。

 えぇっと……長袖がいいかな? 両方準備しておくか。

 適当に無地のやつなら大丈夫だろう。

 無難な物を選んで、俺は涼華の元へ向かった。


「お待たせ、お湯は今入れてるから少し待ってね。着替えはこれでいいかな?」


「うん、何でもいいよ。ありがとう」


「それと下着だけど、洗濯して着る? 乾燥機能も付いてるやつだからなんとかなると思うけど」


「そうなんだ! でも、乾燥機は使えないから、どこか乾かす場所ないかな?」


「わかった。じゃあ使い方の説明するからついてきて」


 俺は涼華を連れて、脱衣所まで移動し、洗濯機の使い方といつも干している場所の説明をした。

 ついでにタオルや、シャンプーなども説明しておいた。

 

「―――ってな感じだから好きに使ってくれ。ドライヤーは俺の部屋にあるから」


「ありがとう! これで日曜日までなんとかなりそうだよ!」


「よかったよ。それでお風呂だけど、先に入る?」


「うんん、先に入ってもらえるかな?」


「わかった。じゃあ先に入らせてもらうね。リビングとか俺の部屋で待っててもらえばいいから」


「うん! ごゆっくり!」


 涼華はそう言う残すと脱衣所から出て行った。

 さて、まだお湯は―――さすがに溜まってないよね……。待たせるのも悪いし、体を洗いながら待つとしよう。

 一度部屋に戻り着替えを準備して、俺は脱衣所で服を脱いで、お風呂場に入った。

 一先ず、軽くシャワーを浴びて頭を洗い始める。

 すると、脱衣所の扉が開く音が聞こえてきた。 涼華かな?


「出流君、大丈夫? ちゃんと入れてる?」


「うん? うん、大丈夫だよ」


「心配だなぁ」


「はは、確かに左目見えないのは不便だけど、自分の家の中なら大丈夫だよ」


「……うんん、心配だよ。心配だから入るね?」


 ガチャ


「……へっ?」


 今頭洗ってて前見えないんだけど……? もしかして入ってきた?


「りょ、涼華!?」


「来ちゃった♪」


「え、えぇぇぇ!?」


「あっ、タオル巻いてるけど恥ずかしいから……あんまり見ないでね?」


「え、え、え、脱いでるの!?」


「うん、脱がないとお風呂入れないよ?」


「いや、ちがっ!? 一緒に入るの!?」


「うん、お礼させて欲しいから。とりあえず背中洗うね?」


 どどどどどどど、どういうことおおおおおおお!?


☆―――――☆

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