第11話 じゃあ私の番だね!

 

 俺たちはそれぞれスーパーで買い物を行い、俺の家を目指して歩いている。

 下手にこんな目の状態じゃ外に出れないし、オリエンテーションのお菓子も買っておいた。

 もちろん支払いは全て俺が払っている。

 最初はみんな出そうとしたが、俺が作ってもらう立場なのにお金まで出させる訳にはいかない。


「こんなスーパーあったんだね。けっこう安かったよ!」

「うん、色々安くて重宝してるんだ」

「野菜も普通のところより、数十円安かったね」

「そうなんだ? ここにしか来ないからわかんないや」

「私お母さんと一緒に買い物に行くんだけど、全然安いよ! 今度お母さんに教えなきゃ」


 俺の行きつけのスーパー『ヤースイヨー』は、涼華に気に入ってもらえたようだ。


「いいお店だった。私もまたあそこ行く」

「あぁ……ちょっと予想外だったなあれは……」

「ん、隠れた名店」


 エリと一緒にタバスココーナーを覗いてみたのだが、無駄に充実していた。

 どのぐらい充実していたかと言うと、エリの目がキラキラしてそのコーナーのタバスコをじっくり見ていた位だ。

 というか、なんであんなにタバスコあるんだ……?

 タバスコというか唐辛子ソースの亜種が大量にあった。


「あたしもあそこ行くけど、安くていいよね。惣菜なんかも安くてたまに買ってるよ」

「惣菜も安いよね、カツ丼とかあの量で298円とか休みの日お昼とかに買って食べてるよ」

「わかる! あのカツ丼甘めの味付けで安くて意外とおいしいんだよね」

「そうそう! 思わずパクパク食べちゃうんだよ!」

「あはは、イズっちと一緒だ!」


 正直あの価格で利益は出ているのだろうか?

 薄利多売でやってるんだろうけど、あのスーパーにはずっとあそこでお店をやって欲しいものだ。


 そんな会話をしながら、俺たちは俺の家にたどり着いた。


「ここが俺の家だよ」


「ここが出流君の家なんだ!」

「ん、イズの家覚えた」


 涼華、エリにも俺の家の場所を覚えてもらったので、明日は来れるだろう。


「あぁ、じゃあ中に入ろうか」


 俺は家の鍵を開け、玄関で靴を脱ぎ、みんなをリビングに案内した。


「ここがリビングだよ。とりあえず、俺は着替えてきていいかな?」

「じゃあ、その間にお料理作り始めちゃうね」

「うん、よろしくお願いします」

「あたしも叶さんが料理作るの手伝おうかな、何もしないって言うのは違うと思うし」


「私、イズの部屋みたい」


 ………時が止まったのだろうか。

 エリの発言に涼華と輝夜の動きが止まった。


「俺の部屋って……普通の物しかないよ?」


「見たい……ダメ?」


 エリが首を傾げながら俺を見てくる……


「ま、まぁ、別にいいけど」


「出流君、料理はお部屋を見てからするね?」

「イズっちの部屋見てから手伝うね」


「わ、わかったよ」


 そこまでして、俺の部屋を見る必要あるのか?

 俺の部屋は二階にある。

 みんなを引き連れ、階段を上り、俺の部屋の前までやってきた。

 俺は部屋の扉を開けて、中に入った。


「ここが俺の部屋だよ。特に変わった物はないと思うけど……」


 そういうとみんなゾロゾロと俺の部屋の中に入ってきた。


「ここが出流君の部屋なんだ!」

「ん、普通」

「ちゃんと綺麗にしてんだ? 偉いね」


 涼華、エリ、輝夜がそれぞれ俺の部屋のコメントをする。


「さてと、やっぱり定番はここだよね」


 輝夜はそう言うと、しゃがみ込み俺のベッドの下に腕を突っ込み物色し始めた。


「何してるんだ?」

「男の子ってここに置くんでしょ?」

「何を?」

「エッチな本」

「考え方がベタというか古くない?」

「漫画だとここにあるって書いてあったんだけどなー」

「そんなとこには置かないよ」

「じゃあどこに置いてるの?」

「……それ答えると思う?」

「ってことはあるんだ! あとあるとしたらタンスとか机の引き出しかな?」


 輝夜は察してタンスや机を調べようとするが……

 俺は輝夜の腕を掴み、探すのをやめさせる。


「そんなとこないから! 探さなくていいから!」

「えー、見ないとイズっちの好みがわかんないじゃん」

「好み?」

「どんな女の子が好きなのか」

「……優しい子がいいかな」

「うんうん、それで?」

「えっ?」

「見た目とかは? 清楚系とか、ギャル系とかさ、あと髪の長さとか色とか胸が大きさとか」

「あの……特にこだわりはないです……」


 輝夜がジト目で俺のことを見てくるので視線を逸らすと…


「あの、何をしてるの?」


 涼華は俺の机を物色し、エリは漫画が置いてある本棚を物色していた。


「あっ、あはは……私も……出流君の好みが気になるから……ね? 机の引き出しにそういうの隠してあるって聞いたことあるから……」

「イズ、明日この辺り読みたい」


 涼華は輝夜と一緒で、エリは漫画を見ていたようだ……


「そんなとこにないよ、あきらめてくれ。漫画は明日好きにしてくれ。というか……そろそろ着替えたいんだけど……?」


 3人は俺を見て顔を見合わせると……


「「「おかまいなく?」」」


「いや、かまうよ! さすがに恥ずかしいから!」


 そういうと3人は渋々部屋から出ていってくれた。

 それから俺は部屋で着替えて、リビングに戻ると3人は料理をしてくれていた。


「あ、けっきょくみんなで料理してるんだ?」


「あはは……私だけでもよかったんだけどね?」

「ん、何もしないのは暇だから」

「そうだね。一緒に食べるのにじっと待ってるのは性に合わないし」


 涼華、エリ、輝夜がそれぞれ返答してくれた。


「そっか、俺も何か手伝えることあるかな?」


「出流君は待ってて」

「ん、不要」

「イズっちを助けるために来てるのにイズっちが手伝ったら本末転倒じゃん。大人しく待ってて!」


 そう言われると、どうしようにもないな……


 俺は大人しく、ソファーで携帯を弄りながら待つことにした。


 そしてご飯は予めセットしていたので、20分程で料理が出来た。

 出てきた料理は―――


「おぉ! 豚の生姜焼きか!」

「うん! 豚が安かったからね」


「付け合せのサラダと味噌汁はあたしと周防さんで作ったよ」

「ん、そう」


「ははっ、そっちもおいしそうだ! それじゃ」


「「「「いただきます!」」」」


 俺はさっそく、豚の生姜焼きを一口……!?


「んん! なんかバターの味がする!?」


「ふふ、この間ネットで見て美味しそうにだったから作ってみたんだ! バター醤油生姜焼き」


「美味しいよ! ご飯が進むね!」


「よかった!」


「ん、うまい」

「これは叶さんに一本取られたね」


 エリは美味しそうに、輝夜はちょっと悔しそうにしながら食べている。


 うんうん、サラダと味噌汁も美味しいし、最高の晩御飯だな。

 でも、それよりも……こうやって誰かと晩御飯食べるのは久しぶりだから、ちょっと嬉しいな……


☆―――――☆

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