第9話 グループを決め……あれ?
「と、いうことがある。各自、荷物を準備しとくように」
四限目、来週のオリエンテーション合宿の説明が担任からされている。
特に変わったこともなく、そのまま終わるかと思ったが……
「一緒に行動するグループ分けだが、お前たちで好きにしていいぞ。男子だけでも、女子だけでも、男女混合でもいい。ただし、合宿するロッジの関係上、4人グループで決めるように。組み合わせはその班の代表者が俺に報告してくれ。今日の放課後までに決めるように。以上だ」
4人か……俺と高貴と……静流は入ってくれるだろうか?
だとしてもあと一人足りないな。とりあえず、昼食食べてから高貴と静流に相談してみよう。
そして、四限目が終わり、昼食の時間になった。
静流にいつ声をかけるかと考えていると、高貴と静流の方から俺に話しかけてきた。
「出流は涼華ちゃんと今日食べるんだよな?」
「あぁ、そうだよ」
「……オリエンテーションのグループ分けだが、出流と一緒になろうと思ってたが、多分無理だと思うから、別の人と組むな?」
「えっ?」
「私も多分別の人と組むよ。あっ、別に出流が嫌ってわけじゃないからね?」
「俺もそうだ」
「……えっ?」
「いや、ただの予想だ。もし、足りないようだったら昼休み終わりに声かけてくれ」
「うん、私もどうしても揃わないようなら声かけて?」
「……う、うん。わかったよ。」
そう言う残すと高貴と静流は他の友人の元へ向かっていった。
「出流君」
そして、入れ替わるかのように涼華がやってきた。
「あぁ、お昼だよな?」
「うん、一緒に食べよ!」
「あぁ、わか「イズ」「イズっち」……ん?」
声がした方を見ると、エリと輝夜がいた。
「ご飯食べよ」
「一緒にお昼食べよう?」
「……どうして、二人がいるのかな?」
二人の出現に涼華は笑顔で固まった。
「今日学食じゃないって聞いたから、お弁当持ってきた」
「イズっちのフォローしてあげなくちゃいけないから。別にあたしたちが一緒でもいいよね、イズっち?」
「う、うん、俺は問題ないよ」
そう答えると、二人はそそくさと近くにある机を俺の机にくっつけてきた。
涼華は……笑顔のまま固まっていたが、俺の机に二人がくっつけたのを見て、同じように机をくっつけてくる。
「すぅー……い、出流君! はいこれ、お弁当! 」
涼華が俺にお弁当が入った巾着袋を渡してきた。
「おぉ、ありがとう!」
俺は受け取ると、早速巾着袋を開け、中のお弁当を取り出した。
そのまま蓋を開けると―――
「おぉ……!」
彩り鮮やかな弁当が姿を見せる。
健康を考えられ、野菜もあれば唐揚げに卵焼きなんかも入っている。
「これ、涼華が作ったのか?」
「うふふ、そうだよ! いつも自分でお弁当作ってるから」
「へぇー……涼華は料理上手なんだな! すごく美味しそうだよ!」
「よかった! さぁ、食べてみて?」
「あぁ、頂きます!」
俺は最初に卵焼きを口に運ぶ。
卵焼きは甘めに味付けされており、とても美味しい……!
「うん! この卵焼きすっごくおいしいね! 甘めの味付けだよね?」
「そうだよ。甘めの味付けが好きだから、他のも食べてみて?」
「うん、じゃあ「イズっち」……ん?」
「あたしのも食べてみて、このポテトサラダ」
輝夜が俺に自分のお弁当箱を寄せてきた。
「いいのか?」
「うん、食べてほしいから」
「はは、ありがとう。頂くよ」
俺は輝夜のお弁当からポテトサラダを少しだけ頂き、食べてみた。
「んん! おいしいね! これ輝夜が作ったのか?」
「そうだよ。自信作なんだ!」
「うん! すっごくおいしいよ!」
「イズ」
「どうした、エリ?」
「私も、これ食べて」
エリは自分のお弁当の辛そうなエビを指差している。
「もらっていいのか?」
「うん」
「ありがとう、頂くよ」
俺はエビを一匹もらい、口に運んだ。
「んんっ! ピリッとしててうまいな! これもタバスコ料理か?」
「そう」
「へぇー、こんな料理もあるんだな……ど、どうしたんだ涼華?」
ふと、涼華を見ると、ものすごく顔を引きつらせていた。
「な、何でもないの。気にしないで。ところで、左指も昨日怪我してたの?」
「ん? あぁ、いや、昨日料理してる時に左目が見えなくて、距離感が掴めなくてさ、指切っちゃったんだよね」
「え、えぇ? そんな状態で料理したの?」
「うん、昨日から1週間両親が戻らないらしくて、自分で料理しようとしたらこのざまだよ」
「……ということは、昨日からお家一人なんだ?」
「そうだよ」
「そっか……じゃあ、今日は私が晩御飯作ってあげるよ」
「え、えぇ? いや、わざわざ大丈夫だよ。今日はその辺で外食しようと思うからさ」
「今日はそうするとして、明日以降はどうするの? まさかその状態でまた料理するわけじゃないよね?」
「うっ……一応少しだけ多めにお金貰ってるから全部外食か、適当にカップ麺かパンでも食べておこうかと」
「成長期にそんなものばっかり食べちゃダメだよ? 困った時はお互い様って言ってたじゃない」
「それは…そうだけど「なら、明後日はあたしが作るよ」……えっ?」
輝夜……?
「今日は叶さんが作って、明日は周防さん、明後日があたしの番でいいでしょ」
「え、えぇ? あの、さすがに皆悪いんじゃ「いいから」……」
「出流君がそんな状態なのにほっとけないよ」
「ん、イズは頑張った。今度はこっちの番」
「あたしも、もらってばかりじゃいられないから」
お、押しが強い…… まぁ、実際今日から3日間だけならお願いするか……
「……わかった。申し訳ないけど、よろしくお願いします」
「うん、任せて! あと出流君は誰とオリエンテーションのグループ組むのかな?」
「あー……まだ誰も決まってないんだ」
「なら、私と一緒のグループになってもらえないかな?」
「おぉ! ぜひ頼むよ」
「ふふ、ありがとう! 楽しみ!」
涼華が仲間になった!
「イズ、私も一緒にして」
「お、エリも一緒に組んでくれるのか?」
「うん」
「なら、お願いするよ」
「よろしく」
エリが仲間になった!
「イズっち、誰も決まってないなら、あたしもいいよね?」
「おぉ、輝夜も一緒になってくれるのか?」
「うん、左目のサポートもするから」
「……あぁ、よろしく頼むよ」
「へへ、よろしくね!」
輝夜が仲間になった!
あれ……? 男子俺一人なの……?
「あー、その……俺だけ男なんだが……それでもいいのか? 全員女子とかじゃなくて」
「出流君が入ればいいからいいよ」
「ん、イズと一緒がいい」
「イズっちは気にしなくていいよ」
なんかトントン拍子でグループが決まったが……いいのだろうか?
そのあと、俺たちはお昼ご飯を食べ、みんなでおしゃべりしていた。
◆―――――――――◆
《SIDE 涼華》
なんで出流君の周りは、こんなにライバルが多いのかな……?
せっかくお弁当作ってきたのに、他の子も食べさせたから台無しになっちゃった……
何か手を打たないと……
☆―――――☆
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