第8話 襲来からの三つ巴

 ふぁー……なんだかんだ昨日輝夜と色々しゃべっちゃったな。

 時間は……まだ余裕があるか。

 

 適当にパンを焼いて、その間に薬を……


 ピンポーン♪


 ……こんな朝早い時間に誰だ?

 

 俺は玄関に向かい、扉を開いた。

 そこには―――


「おっはよ! 迎えに来たよ!」


 ―――まさかの輝夜だった。


「お、おはよ。えーっと……どうしたの?」


「うん! 朝も一緒に行こうと思って、ちょっと早めに来ちゃった。お家に入ってもいい?」


「あ、あぁ、まだ準備出来てないから、リビングで待っててもらってもいいかな?」


「おっけー! お邪魔しまーす」


 そう返事すると、輝夜はズカズカと家の中に入ってきた。


「目は大丈夫そう?」


「うん、とりあえずはね。ただ塗り薬はいいんだけど、目薬注すのが難しいね……」


「ふーん、今朝はもう注したの?」


「うんん、まだだよ」


「なら、やってあげる。貸して?」


「え、えぇ? 大丈夫だよ」


「いいから貸して? 遅くなっちゃうから」


「……わ、わかったよ」


 俺は目薬を輝夜に渡し、リビングのソファーに座った。

 輝夜は目薬のキャップをはずし、こちらに近づいてくる。


「ほら、顔あげて。注すよー」


 俺は眼帯を外して上を向いた。

 すると輝夜が目に入りやすいように手で左目の瞼を少し押し上げた。


 か、顔が近い……!

 輝夜の綺麗な顔だな……目は普段鋭い目つきしてるけど、今は大きく開いていて、綺麗な瞳がよく見える。唇もプルンとしてて、それが間近に迫ってドキドキする……!

 ぬあっ!?


「はい、入ったよ! 瞼触ったけど大丈夫?」


「う、うん、大丈夫だよ」


 俺に目薬を注すと輝夜は俺から離れた。

 俺は眼帯を付け直す。


「よかった。朝食はもう済んだ?」


「うんん、まだこれからだよ」


「あたし作ろうか?」


「えぇ? 大丈夫だよ。パン食べるだけから。輝夜はゆっくりしてて?」


「……うん、じゃあ、そうするね」


 輝夜はそう答えるとソファーに座り足を組んで携帯を弄り始めた。

 待たせるのは悪いから、さっさと済ませてしまおう。

 俺は急いでパンを食べて、顔を洗い、制服に着替えた。


「ごめん、お待たせ」


「気にしないで。行こうか?」


 俺と輝夜は家を出て、学校に向かって歩き出す。

 いつもと変わらない道なのに、女の子と一緒というだけで、どこかソワソワした気持ちになる……


「イズっちって今彼女いないよね?」


「え、えぇ? う、うん。いないけど……」


「そっか、聞きそびれたから聞いておこうって思って。前はいた?」


「いないよ。欲しいとは思うけどね」


「……へぇー、彼女欲しいんだ? 気になる子とかいるの?」


「……いやー、そのー……今のところは……」


「そっか、ならいいや……ねぇ、お昼、あたしも一緒に食べていいかな?」


「ん? うん。いいんじゃないかな? 俺は問題ないけど……」


「なら、一緒に食べるから」


「……わかった」


 俺と輝夜は今日は手を繋いでいない。

 その代わり、俺の左側を歩いてくれている。

 そして、校門を過ぎ、下駄箱で上履きに履き替え、クラスに向かう。

 その間も輝夜はずっとそばにいてくれた。

 クラスに入り、自分の席へ向かおうとするが……


「! 出流君!? どうしたのその目!?」


 俺のことを見つけた涼華がすぐに駆け寄って来た。


「あぁ、うん、昨日引ったくりを捕まえたんだけど、殴られちゃって」

「え、えぇっ!? そ、そうなんだ。痛くない? 大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう涼華」


「イズ」


 横からエリが話しかけてくる。


「話聞こえてた、目、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「ん、ちょっと頭下げて」

「?」


 俺はそう言われて、頭を下げるとエリが俺の頭を撫でてきた。


「頑張った。いい子、いい子」

「エ、エリ? 恥ずかしいんだが……」

「いい子、いい子」


 俺はエリに少しの間、エリによしよしされた。


「……ところで、なんで、聖さんと一緒に登校してるのかな? たまたま会ったの?」

「あぁ、いや、「あたしが、出流の家に迎えに行ったんだよ」」

「……へぇ?」

「昨日、あたしもその引ったくり捕まえるの協力して、イズっちがこうなってるの知ってるから迎えに行ったの」

「……そうなんだ?」

「うん、しばらくそうしようかなって」

「……へぇ」


 涼華と輝夜が笑顔で見つめ合っているが……なんか、空気が張り詰めてる気がするのは気のせいか……?


「イズ」

「ん?」

「これ」


 エリは紙袋を俺に渡してきた。


「あぁ、上着か?」

「そう、ありがとう」

「いいってことよ」

「お礼したい」

「お礼?」

「明日、お出掛けしよ?」


 ピキィ


 今いる空間に亀裂が入るような音が聞こえた気がする……


「す、周防さん? 出流君は目を怪我してるんだよ? 一人で外に連れ出すのは良くないと思うなぁ?」

「そ、そうだよ、周防さん。それはイズっちに迷惑が掛かると思うよ?」


 涼華と輝夜の笑顔が若干引きつっている……


「ん……なら、明日、イズのお家に行っていい? お礼にご飯作る」

「待って、なら私も行く」

「あたしも行く」

「ん、叶も聖も好きにしたらいい」


「え、えーっと……三人とも来るのかな?」


「もちろん、あとで出流君のお家教えてね?」

「イズ、私も」

「明日も来るから」


 それだけ言い残し、三人はそれぞれの席へ戻っていった。

 既に決定事項のようなので、俺は一先ず自席に行くと待っていたかのように、二人が話しかけてきた。


「出流、目、大丈夫?」

「すまなかった出流。目、大丈夫か?」


 静流、高貴がそれぞれ、俺の目を心配してきてくれる。


「大丈夫だよ。高貴はなんで謝ってるんだ?」


「まさか本当に、ひどい目に合うとは思ってなくてな……軽はずみな発言してたから」

「それこそ気にしてないよ。本当にこんなことになるなんて思ってなかったからさ」

「必ず除霊師か霊媒師探しておくよ」

「その前に止める努力をしろよ!」

「無理言うなよ。俺の頭脳を持ってしても、数の暴力には敵わないよ」

「頭いいなら孔明として罠でも張ってくれよ?」

「チキチキ踊ったらバンバン乗ってくれるんじゃないか?」

「そんなハイテンションな連中なら呪術なんてしないだろ」

「それもそうだな」


「何の話してるの?」


 俺と高貴のくだらない話に静流が疑問に思っているようだが、気にしないで欲しい。


「まぁ、ともかく大丈夫だから」

「……なんかあったら言えよ? 友達なんだからさ」

「ありがと」

「私にも言ってね?」

「あぁ、お願いするよ」

 

 ガララッ


「よーし、朝のHRを始めるぞー、席につけー」


 担任が教室に入ってきて朝のHRが始まり、授業が始まる。

 余談だが、このあと先生から呼び出しを受け怪我の具合はどうかだとか、警察から感謝されたぞだとか話があり、何か困ったことがあれば、便宜を図るから直ぐに言うように言われた。


 そして4限目のオリエンテーション合宿の件であんな話に発展するなんて予想して、この時の俺は想像していなかった。


☆―――――☆

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