第7話 君が悪いんだよ?

《SIDE 輝夜》


「うん、ひとまず応急処置はしたから、大丈夫だよ。何か異常があったら直ぐにまた病院においで」


「「「ありがとうございました」」」


 イズっちが病院に運ばれるので付き添いであたしとシズっちが同行した。

 先生の話によると、イズっちの左目は腫れているが、恐らく大丈夫だろうとのことで、一週間から二週間ほど左目が見えない状態らしい。

 診察室から出て帰るために、片目が塞がり歩きづらいだろうから、あたしとシズっちでイズっちを挟んで歩いている。


「よかったよ。出流の目が無事で」


「無事ってか無事じゃない気がするけどね。イズっち痛む?」


「あぁ、まだズキズキしてるけど、少しずつ痛みが引いてる気がするよ」


「そっか……。ごめんねイズっち」


「えっ? なんで?」


「……あたしが、放課後出掛けようなんて言ったから」


 そう、あたしは、イズっちにお礼がしたかったんだ。

 あたしの為にずっと一緒に家の鍵を探してくれて、わざわざ学校まで戻って探しに行ってくれた。

 けっきょく、あたしの鍵は猫が咥えて持ち去ってたみたいなんだけど、イズっちが汚れることを恐れずに飛びついてくれたおかげで、無事に鍵を回収することができた。

 そのお礼の為に今日は誘ったのに、今回は怪我をさせてしまった。


「輝夜は何も悪くないだろ。むしろ、犯人の頭を蹴り上げてくれたお陰で、俺の目はこの程度で済んだんだ。だから、ありがとう輝夜」


「!? なんであんたがお礼を言うのさ! あたしがお礼言わなくちゃいけないのに!」


「なんでって輝夜に助けられたのは事実だろ? それに……」


「……それに?」


「……その……女の子と放課後に何処かに出掛けるのって、デートみたいでうれしかったしさ。今回は行けなかったけど、また別の日に誘ってくれないか? 輝夜が言ってたオススメを飲んでみたいしさ」


 ―――やさしいんだ?


 あたしのことを気遣って、また誘えるようにしてくれるんだ?


 こんな目に会って痛いだろうに、まだあたしを気遣う余裕があるんだ?


 イズっちは……ちょっと恥ずかしそうに顔を下を向いている……


 ふーん……そっか、そうなんだね……


 ただのお礼のつもりだったんだけどなー……


 じゃあ、あたしもするからね?



◆―――――――――◆

《SIDE 出流》


 病院を出て俺達は家に向かっている。

 左目は大丈夫だそうだ。

 よかった。

 ただ、しばらく目薬差したりする必要があるらしい。


「出流、歩いて帰るの?」


「うん、両親はまだ仕事中だろうからね」


「あたしが送っていく」


「えっ?」


「あたしが送って行くから」


「いや、でもわる「いいから、送らせて」……わかった」


「輝夜が一緒なら大丈夫かな。じゃあ私も帰るね。また明日!」


「またな、静流」

「バイバイ、シズっち」


 俺と輝夜は静流が帰っていくのを見送り、俺たちも家へ帰り始めようとした時、輝夜が俺の左手を握ってきた。


「え、えぇ?」


「帰ろう? 道どっち?」


「あ、あの手……」


「左目眼帯着けて見えないでしょ? だから手握っといてあげる」


「……ありがとう」


「気にしないで、行こう?」


「……うん」


 左側に立ってくれるのは助かる。助かるけど……ちょっと、ドキドキしちゃうな……


「イズっちってさ、普段何やってんの?」


「普段? 家でってこと?」


「そう」


「ゲームしたり、漫画読んだりとかかな? あとはネットで動画見たり」


「テレビとか見ないんだ?」


「うん、最近まったく見ないね。小さい時は見てたけど、映画とかネットで見れるから、見なくなっちゃった」


「そうなんだ。どんな映画見るの?」


「アクション物とかファンタジー物が多いかな」


「洋画?」


「うん、ほとんど洋画だね。吹き替えでしか見ないけどね」


「ふーん、わかった。参考にするね」


「参考?」


「うん。今度さ、一緒にお出かけしない?」


「え、えぇ? 俺と?」


「うん、イズっちと映画見に行きたいなって」


「……ははっ、ありがとう、嬉しいよ」


「じゃあ、今何が上映されてるか調べとくね。それで、面白そうなの見に行こう?」


「うん、喜んで!」


「そうだ。今日調べて連絡するから、連絡先教えてくれない?」


「ん? 明日でも大丈夫だよ?」


「……あたしに連絡先教えたくない?」


「えぇ!? そ、そんなことないよ! 俺も輝夜と交換したいから全然問題ないよ!」


「そっか! なら今交換しよ?」


「う、うん、いいよ」


 輝夜と連絡先を交換するため、携帯を取り出し輝夜と連絡先を交換した。


「ねぇ、連絡きた時に誰から連絡がきたか、一目でわかるようにしたいからさ、写真撮ってもいいかな?」


「う、うん、ちょっと恥ずかしいけど……いいよ」


「あんがと!」


 輝夜はお礼を言うと携帯で写真を撮ろうとする。

 こういう時ってどんなポーズしたらいいんだろ? ピースしとけばいいのかな?

 そんな感じのことを考えていたら……


 パシャ


 撮られてしまった……


「もう一枚撮るね」


 そう言うと輝夜は俺の左側に移動し、俺の横に来た……?

 そのまま俺の肩が輝夜の柔らかい体に包まれた。

 ……あの、当たってませんか?


「じゃ、じゃあもう一枚撮るね」


 ……なんか輝夜の声が近い気がする?


 正面に輝夜の携帯が自撮りモードで現れた。

 携帯に今の状況が写ってるけど……!

 俺の顔の真横に笑顔の輝夜の顔が!


「ち、ちか『パシャ』「撮れたよ! あんがとね!」……」


 そう言って輝夜は俺から離れた。


「へへへ、じゃ、帰ろうか!」


「う、うん」


 そして、輝夜はまた俺と手を繋いで歩き始めた。

 そのあと輝夜と他愛もない話をしながら歩き続け、家の前に到着した。


「ここが俺の家だよ。送ってくれてありがとう」


「ここがイズっちの家ね。意外とあたしの家から近いね」


「そうなんだ? 本当は俺が送らないと行けないんだろうけど……」


「そんな状態で送られても逆に心配になるからやめて。気にしなくていいから。じゃ、帰ったら、連絡するからね!」


「うん、気を付けて帰ってね!」


「うん、またあとでねー!」


 輝夜は俺に笑顔で手を振りながら帰っていった。


 俺は鍵を開けて家の中に入った。

 そのままリビングに行くと、書置きとお金が置いてあった。


『出流へ 一週間ほどお母さんとお父さんは仕事で家に戻れませんので、晩御飯は外食出来るように、お金を多めに置いておきます。何かあったらすぐに連絡して下さい。 母より』


 一週間帰って来れないのか。

 まぁ、たまにあることだし、いいけど、晩御飯どうしようかな……

 この状態で外出するのもあれだし……晩御飯作るか。

 材料は……うん、解凍した鳥肉があるし、チキンステーキにしようかな。


 米は作るのめんどくさいし、冷凍したのを使おう。

 俺はチキンを取り出し、包丁で皮と身に切り目を入れていく。

 左目が見えないだけで、なんか距離感? が掴みにくいな……

 

 いっったぁぁぁぁ!?


 ……手元が狂って、左手の中指を少し切ってしまった。


 とりあえず、洗って絆創膏……明日は絶対外食にしよう。


 そのあとなんとか、料理を作り、食事を終え、お風呂……は沸かすのがめんどうだからシャワーでいいか。

 さて、適当にネットサーフィンでも―――


 ピロン♪


 ん?

 あぁ、輝夜からだ。


輝夜『そろそろ連絡してもいい?』

出流『うん、大丈夫だよ』


 ―――♪


『もしもし』


『こんばんわ、輝夜』


『へへ、こんばんわ、イズっち』


『ごめん、今色々終わったばかりで、まだ映画のこと調べれてないや』


『ううん、あたしもまだ調べてないから、調べながら、しゃべろ?』


 そして、俺と輝夜は今度見る映画と他愛のないことを寝る前まで話し続けた。


☆―――――☆

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