第4話 四天王

 

 翌日、俺は普通に学校にやってきた。

 連日何かあるわけじゃないから、よかったよ。


 俺は自分の席に着くといつものように友人達に挨拶をする。


「おはよう、高貴」


「おはようさん、今日は何もなかったか?」


「流石に連日はないよ」


「昨日は大変だったね」


 横から静流も会話に参加してきた。

 

「おはよう、静流。昨日は……なんだったんだろうな?」


「災難だったよね?」


「まぁ、そんな日もあるさ」


「ふふ、そんな出流にプレゼントだよ」


 静流は鞄から小さなかわいらしいピンクの袋を取り出すと、俺の机にポンと置いて来た。


「……これは?」


「昨日頑張ったご褒美。クッキー焼いてきたの」


「おぉ! ありがとう、静流!」


「昨日そんなに大変だったのか?」


 高貴が訝しげにこちらを見てくるが、静流が答えてくれた。


「昨日涼華の日直の手伝いしてたでしょ? そのあと鍵を無くした輝夜の手伝いもしてたんだよ。それで服のボタンも取れちゃってさ」


「……輝夜って聖輝夜か?」


「そうだよ」


 高貴が静流に問いかけたあと、俺をマジマジと見てくる……


「出流すげぇな……」


「何が?」


「何がって、この学年の四天王のうち3人と知り合ってるじゃねぇか」


「……四天王? そんなこの学年を牛耳ってるやつがいるのか?」


「違う違う、美少女四天王のことだよ」


「なんだ、それ?」


「知らないのか? 1年生で美少女と呼ばれる子がこのクラスに4人も集まってるんだぜ?」


「それが、輝夜なのか?」


「もう名前呼びなのか……そうだよ」


「へぇー」


「涼華ちゃんと静流も四天王の一人だぞ」


 えっ?

 俺は静流を見ると嫌そうな顔をしていた。


「別に、私はそう呼ばれたいわけじゃないんだけどね……」


「いいじゃないか、美少女って呼ばれて」


「いい迷惑だよ。それで知らない人から入学して3日間くらい告白が続いたんだから」


「それはなんというか……ご愁傷様です?」


「告白を断るのだって勇気がいるんだから、精神的にきつかったよ」


「あー……そう聞くと確かにそうかも」


「でしょ?」


「それで? あと一人の四天王は誰なんだ?」


 残り一人が気になったので高貴に尋ねてみた。


「あと一人は「イズ」」


 俺の後ろにエリが来ていた。

 

「お、エリ、おはよう」


「これ、返す」


 エリは俺が貸した千円を渡してきた。


「お、確かに受け取ったよ」


「あと、これ」


 エリも俺の机の上に小さな赤い袋を置いた。


「これは?」


「昨日のお礼」


「おぉ、わざわざありがとうな!」


「チーズ煎餅作ってきたの」


「へぇ、おいしそうだな!」


「中には色んなタバスコ入れてるから、食べてみてね」


「おぉ、チーズにタバスコか、おいしそうだね」


「うん、自信作」


「じゃあ大事に食べさせてもらうよ」


「うん……今日も学食?」


「そうだぞ」


「なら、一緒に食べよ」


「あぁ、いいよ!」


「今日は別のもの持ってきた」


「……まさか昨日話してた物を持ってきたのか?」


「うん、楽しみにしてて」


「わ、わかったよ」


「じゃ」


 それだけ言い残すとエリは自分の席に帰っていった。


「い、出流?」


 ……なんで高貴は動揺してるんだ?


「ん?」


「なんで周防さんとも仲良さげなんだ? しかもエリって……」


「昨日財布忘れて、学食の券売機で悲嘆に暮れてたからお金を貸したんだ」


「……まさか、周防さんにも人助けしてるなんて」

 

 静流が目を見開き、驚愕した顔をしている。 


「……エリがどうかしたのか?」


「その周防さんが四天王の一人なんだよ」


「……へぇー」


「なんで四天王全員と友達になれたんだ……?」


 高貴も驚愕の表情で俺に聞いてくるが、知ったことではない。


「……成り行きとしか言いようがないな」


「出流君」


 この声は……


「涼華、おはよう」


「おはよう出流君、これ昨日のお礼」


 そう言うと同時に涼華は俺の机に淡い青色の小袋を置いた。


「マドレーヌ作ったんだ。よかったら食べてくれるかな?」


「あぁ、ありがとう! 帰って食べさせてもらうよ」


「……他にも袋あるけどこれは?」


「あ、あぁ、昨日のお礼ってことでみんながくれたんだ」


「……お礼? ……もしかして私以外にも人助けしてたの?」


「うん、ちょうど見つけちゃったから」


「……そっか」


 なぜか涼華は下を向き、考える様に目を閉じている。

 どうかしたのかな? と思っていると、急に目を見開き、俺を見つめてくる。


「出流君ってお昼ご飯はいつもどうしてるの?」


「う、うん? いつもは学食だよ」


「そっか。ねぇ、出流君、明日私にお弁当作らせてくれないかな?」


「えぇ!?」


「お礼がしたいの」


「このお菓子で十分だよ?」


「うんん、それだけだと足りなさそうだから。明日は一緒にお昼食べようね! じゃあね」


 涼華は俺の返事を聞かずに自分の席へ戻っていった。

 そして、入れ違いのように四天王の最後の一人がやってくる。


「イズっち!」


 そう、輝夜だ。


「あ、あぁ、輝夜、おはよう」


「はいこれ」


 輝夜は俺に紙袋を渡してくる。中を覗くと昨日俺が渡した上着が入っている、それと一緒に綺麗な黄色い小袋が入っていた。


「一緒にチョコマフィン作って入れといたから、よかったら食べてよ!」


「おぉ、おいしそうだ。ありがとな!」


「……その机の小袋は何かな?」


「あー、うん、昨日のお礼ってことでみんなから」


「お礼? みんな? 具体的には誰?」


「えっ、静流と涼華とエリ……智恵理から貰ったんだ」


「えっ、四天王全員なの?」


「……四天王って、みんなの共通認識なのか?」


「少なくともあたしはそう聞いてる」


「まじか」


「うん、昨日私以外にも人助けしてたんだ?」


「まぁ、そうだね」


「ふーん……」


 なぜか輝夜は俺のことを睨んでくる……なぜだ……


「な、なんで睨んでくるんだ?」


「別に……」


 急に不機嫌になったんですが……?


「ねぇ」


「はい」


「今日の放課後予定空いてる?」


「放課後? あぁ、特に予定はないよ」


「なら、一緒に帰ろう。お礼させてよ」


「このお菓子だけで十分だぞ? 上着のボタンも直してもらったし」


「いいから、一緒に帰ろう?」


「……わかった。予定空けとくよ」


「うん! じゃあそろそろホームルームだからまたね!」


 輝夜もホームルームが始まりそうなので席に帰っていった。


「出流……」


 高貴が俺を真剣な表情で俺を見つめてきた。


「……なんだ?」


「夜道には気を付けろよ?」


「洒落になってないんだが……」


☆―――――☆

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