　2日目の野営では、エレナの強い希望があり、見張りのローテーションに組み込むことになった。彼女の真っ直ぐな目を見てしまい、3人しかいないその現実を無視できなくなっていたのもあり受け入れた。

　負担を軽減するためにエレナには一番負担の少ない最初の見張りを担当させることにした。健斗とリサリアは彼女の意志を尊重し、少し心配しながらも休息を取ることにした。しかし、健斗の感覚はこの世界に来てから鋭くなっており、寝ていても魔物の接近に気づくことができた。

　夜が更ける中、リサリアが見張りをする時間になった。彼女は疲れからか、うとうとし始めてしまった。突然、健斗は20メートルほどの距離で魔物の気配を感じ取り、ぱっと跳ね起きた。ラケットとボールを持ってリサリアのそばに駆け寄り、気配のする方にフォアハンドでボールを打った。

「キャイーン！」と悲鳴が上がり、魔物が霧散するのを確認した。リサリアははっとなり、何度も「申し訳ありません」と謝った。

「ごめんなさい、健斗様。私が見張りを怠ってしまった・・・」

　リサリアは頭を下げた。

　健斗は彼女の肩に手を置き、優しく言った。「いや、俺のミスだ。リサリアしか御者ができないから、ずっとやってもらっていて疲れていて当たり前だよ。明日はエレナには申し訳ないけど、俺は道中しっかり寝て、見張りの時間を増やすようにするよ。」

　翌日、馬車は街道を進んでいたが、健斗は昨夜の出来事が頭をよぎり、リサリアの疲労を気にかけていた。エレナも少し不機嫌そうだったが、皆で協力して無事に旅を続けることに専念した。

　その日の午後、街道を進んでいると、10名ほどの集団が道を塞いでいた。健斗は瞬時に警戒心を抱き、戦闘の準備をした。先日の魔物のこともあり、彼は綺麗事を言っていられない状況だと悟った。

「リサリア、エレナ。気をつけて。あれは賊かもしれない。」と健斗は小声で警告した。

　リサリアは馬車を止めて、エレナを守るために近くに寄った。健斗はラケットとボールをしっかりと握りしめ、いつでも戦闘態勢に入れるよう準備を整えた。

　集団のリーダーと思しき男が前に出てきた。「おい、お前たち。ここを通るには通行料が必要だ。金貨を出せ。」と冷笑を浮かべた。

　健斗は冷静に相手を見据え、「俺たちにはそんな余裕はない。通してもらう。」と言い放った。

　リーダーは嘲笑しなが、告げた。

「そうか、じゃあ力ずくでいただくとしよう。」と言いながら武器を取り出した。

　その瞬間、健斗は一気に前に出て、ラケットを振りかざしてボールをショットした。ボールは鋭い音を立ててリーダーに向かい、彼を吹き飛ばした。

「次は誰だ？」と健斗は冷静に問いかけた。賊たちは一瞬怯んだが、次々と武器を構えた。

「リサリア、エレナを守ってくれ！」

　健斗は叫びながら、次々とボールをショットし、賊たちを圧倒した。リサリアも剣を抜き、エレナを守りながら戦闘に加わった。

　賊たちは次々と倒れ、最後の一人が逃げ出した。「覚えていろ、この借りは必ず返す！」と叫びながら、森の中に消えた。

　健斗は深呼吸をし、リサリアとエレナの無事を確認した。「みんな無事か？」

　エレナは少し震えながらも、「はい、大丈夫です。」と答えた。リサリアも微笑んで、「健斗様、素晴らしい戦いでした。」と言った。

　健斗はホッとしながら、「これからも気をつけて進もう。エレナとリサリアを守るのが俺の役目だから。」と決意を新たにした。

　再び馬車に乗り込み、彼らは道を進み続けた。健斗はエレナのためにさらに気を引き締め、旅の安全を確保することを誓った。そして、彼らの冒険は続いていった。

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