第30話 報酬とエリー

 あースッキリした。


 降霊術なのかネクロマンシーなのかわからないが、先代四天王の動く死体を片付けたことで、俺の心は非常に晴れやかになった。


 やれ、矯正きょうせいしてやるだの、アナスタシア様は小娘だのと、好き放題言ってくれた先代四天王だったが、相手が悪かったな。


 ただの補佐役じゃないんですよ。

 知識チート万歳のスペシャル補佐役なんですよ!


 でも、先代四天王と戦うなんて、ゲームでは経験できなかったことだけに、ちょっと楽しかったなぁ。


 もう少し、粘って戦っても良かったかも知れない。


 さて、のんびり感想を語っている場合じゃないな。

 ここに来た目的を果たさないと。



 大部屋の奥に設置されている祭壇のような場所に向かった。


 俺が近づくと祭壇に光が集まり、まぶしく光ったかと思うと四天王の強化武具が出現していた。


 うん、間違いない。


 漆黒の剣、野獣の小手、星の宝珠、古代樹の弓の4つに……あれ?


 もうひとつ何かあるぞ?

 

 赤黒くてめちゃでかい剣。

 俺の身長ぐらい長くて幅も広いんだが。


 こんな装備あったかな?


 うーん。



 ……。



 はっ!


 まさか?


 いやいや、え? マジで?


 これって先代魔王様が最終形態で使用する剣じゃないのか!?


 名前はたしか魔剣グラムだったはず。


 マジか! マジかマジか。


 こんなところに安置されていたなんて知らなかった!


 四天王強化装備を取りに来たんだけど、これも貰っちゃっていいよね?

 うん、いい。きっといい。


 

 うひょー!

 こんな武器ゲーム時代には手に入らなかったぜー!


 俺はそそくさと戦利品をかき集めると、スキルの収納空間に収め、歴戦のほこらを足早に去ることにした。






 無事に魔王城の自室に辿たどり着いた俺。


 ウキウキで帰ってきたので変な目で見られはしたが問題はない。


 今回、四天王強化装備のみならず、宝箱から強力な装備品も獲得している。

 他にも各種アイテム系を豊富に得ることができた。


 魔神のほこらは高難易度なこともあって、結構珍しい物が手に入ったんだよな。


 貴重な魔法薬の材料なんかもあるので、これで四天王のマッド魔女っ子エリーを懐柔かいじゅうする作戦が実行できる。


 よしよし、魔王軍をまとめるのにまた一歩近づいたな。


 予定外のお宝まで手に入ったので、今回の遠征は大成功と言っていいだろう。


 ただ、魔剣グラムに関しては見た目がデカいんだよなぁ。

 試しに振ってみたが、使う分には問題はなかった。


 でもこんなデカい剣を背負っていたら、バカみたいに目立ってしまうんだ。


 なんか急にイキリだして、いい剣をかついだように見えなくもないので、そっとしまっておこうと思う。


 補佐役になった途端デカい剣を持ち出すとか、めっちゃ痛い奴じゃん。

 そういう空気は読めるんです。はい。


 まぁ、ぱっと見でわからない部分の装備は更新できたのでヨシとしよう。


 戦利品の確認も終わったところで、次の行動に移ろうと思う。


 エリーの興味をきそうなアイテムを片っ端から集めると、俺は彼女の研究室へと向かった。






 魔王城から1番遠い場所にエリーの研究室は存在している。


 なぜ遠いのかというとだな。



 ドゴーーン!



「ぎゃああぁぁぁ! また爆発したのじゃああぁぁぁ!」



 バゴーーーン!



「あぁぁぁぁ、貴重な素材があぁぁぁぁ!」



 一体何の研究をしているのかはわからないが、こんな感じで毎日うるさいんだ。



「失礼します」



 俺は半開きのドアを開けて中へと踏み込んでいく。


 爆発音と共に建物が揺れて、天井からパラパラと何かが振ってくる。


 ……この建物いつか崩れるんじゃないだろうか?


 魔王城内の安全を考えたら、こんな研究室は真っ先に追い出すべきなんだがなぁ。


 そんな危険な建物の中をしばらく進むと、この場所の主人の元へと辿たどり着いた。



「そんなぁ、あんまりなのじゃぁぁぁ」



 何かが爆発した跡を、四つん這いになって見つめている少女。


 彼女が四天王のエリーだが、これはちょっと気まずいかもしれん。



「高級素材じゃったのにぃぃぃぃ」



 多分だが、貴重な素材をゴミにしてしまったんだろうな。


 落胆らくたんする彼女を見て日を改めようと思った瞬間、彼女がこちらを振り返った。



「ん? 誰じゃ?」



 彼女と目が合う。


 しまった。

 ここで見つかったら気まずい。

 ガチ凹みしている姿を見たばっかりなだけに、超気まずいんだが。



「補佐役のレオンです……取り込み中のようですね」



 何も言わないと不自然になるので、それは避けつつ、しれっと見なかった事にしてこの場を離れよう。


 俺がススっと向きを変えようとしたら、エリーは大きく目を見開いた。



「ま、待つのじゃ!」

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