第28話 レオン VS 先代四天王1

 こんな時代遅れの連中、必要ないよな?

 うん、いらんいらん。


 ここにギャラリーがいなくて良かった。


 歴戦のほこらの最奥部の大部屋にいるのは、俺と先代四天王(動く死体)のみ。


 つまり。


 俺が持っているスキルをフルに使って戦っても問題ないわけだ。


 頭の悪い先代四天王を見据えて剣を構える。



「もう帰るのはやめにしました」


『何を言っておる。我々が貴様を帰さんのだ』



 相手は先代四天王。


 先ほどの動きを見たところ、今の四天王と同程度の実力だろう。

 それが全員相手。


 ……はぁ、舐められたもんだぜ。


 『エンクエ』を馬鹿みたいにやり込んだ俺が、人目を気にする縛り無しで戦ったらどうなるか。

 しかも、今の俺は魔神のほこらでレベルアップ済みだ。


 俺は彼らを視界に収めながら魔法を唱える。



「マルチスペル」



 一度に複数の魔法を使うことができる補助魔法だ。

 『エンクエ』やり込み勢の基本動作だな。


 さらに能力値を底上げする付加魔法をかける。



「マキシマムパワー」「エクストラブースト」「ハイパーガード」



 これで下準備は完了。



『なんだ? その見た目で魔法使いだったのか』


『はっはっは! 後衛の魔法使いが盾役も無しにどう立ち回るというのだ?』



 そう言って嘲笑あざわらう先代四天王たち。


 魔法を使ったから魔法使いだとさ。

 この世界の連中は本当にわかってない。


 『エンクエ』は自由度の高いゲームだ。


 キャラクターの育成は、決められたレールというのが無く、プレイヤーが自由にスキルを取得し、自分好みに鍛えられるようになっているんだ。


 様々なスキルの組み合わせは、それこそ星の数ほどある。

 その中から、選りすぐりのスキル構成を作り上げるのが『エンクエ』の楽しみ方の一つだ。



 俺はすでに自分用のスキル構成は練り上げてある。


 剣を構え、四天王を見据みすえると、またまた彼らの笑い声が聞こえてきた。


 どうやら魔法使いの俺が剣を取り出したのが滑稽こっけいだったらしい。


 はいはい。

 じゃ、反撃といこうか。



縮地しゅくち



 戦士系が使う高速移動スキル。

 正確には、素手で戦う武道家タイプのスキルだ。


 この縮地を使って、先代四天王の1人、魔法使いとの間合いを一気に詰めた。



『!!!』



 いきなり俺が現れて、驚いた顔をしている魔法使い。


 その体目掛けて剣を横なぎに振るう。



「クラッシュインパクト」



 剣が当たった瞬間にスキルを発動。


 ドパンッ!


 魔法使いの腰から上の部分が一瞬で弾け飛ぶ。


 残った下半身が時間差で地面に倒れ込むと、光となって消えた。



 まずは1人。


 やっぱり防御が低く鈍足な魔法使いには、物理火力が良く刺さるなぁ。



『なんだと!!?』



 やっと事態を認識した他の先代四天王が驚きの声を上げた。


 あー遅い遅い。


 そんな隙をさらしたらこっちの思うツボだ。



「アースジャベリン」



 この部屋の地面を対象に魔法を発動。


 俺の周囲を除いた全ての地面が波打ったかと思うと、次の瞬間には地面から無数の石の槍が突き出してきた。



『こんな広範囲を一瞬で!?』



 慌てて飛び上がる先代四天王たち。

 獣人と騎士とダークエルフの3人。


 今度は警戒していたからか、俺の魔法が当たることはなかった。


 だが狙い通り、彼らは今空中にいる。

 次は騎士だ。



「エアハンマー」



 空気を圧縮した巨大なハンマーが、ジャンプ中の騎士をはたき落とすように殴りつけた。



『グガァ!』



 ものすごい速さで落とされた騎士は、地面に生えた石の槍を砕きながら激突。


 アースジャベリンの強度じゃつらぬけないか。

 相変わらず騎士系は硬いなぁ。


 やっぱり仕留めるなら大火力の魔法で一気にやるべきだな。



「クイックキャスト」「メテオスウォーム」



 エアハンマーと落下のダメージで起き上がれない騎士の頭上に3メートルほどの黒い渦のようなものが現れた。


 これは次元のゆがみだ。


 その次元のゆがみの中から、赤熱化した巨大な隕石が出現。


 ゴゴゴゴゴという、とてつもない轟音を響かせて騎士へと落ちていく。



『な、なんだこれは! おい! やめろおおおおおおおお』



 身動きの出来ない騎士の上に隕石が落下。

 周囲に爆風が吹き荒れる。


 やば、これリアルに見るとめっちゃ派手やん。

 潰れてしまった相手に思わず同情を……しないかな。うん、しない。


 ちなみにこの魔法、小さい的に当てるにはちょっと工夫が必要だったりする。

 だが、こうやって完璧に決まるとスカッとするなぁ。


 よし、これで2人目。

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