第25話 レベルアップ

 おぉ!


 体に力がみなぎる感じ……これは!


 この世界で育ったレオンとしての記憶を掘り返すと、過去にもこれと同じような現象が何度かあった。


 訓練を積んでいる最中や、治安維持でモンスターを倒した時だ。


 体の奥から力が湧き上がるような感覚。

 その瞬間から体の動きが少しだけ良くなったり、今まで使えなかったスキルが使えたりするようになるんだ。


 当時はこの変化に何の疑問も持たなかったが、今の俺ならこれが何かわかる。



 レベルアップだ。



 おそらくだが、格上のデスムカデを倒したことで、俺自身のレベルが上がったのだろう。


 ゲームの数値の要素。

 例えばステータスだが、そういった能力値を表したインターフェースは、転生してから一度も見たことがない。


 だがこれで確信した。


 目に見えないだけで、内部にはレベルや能力値の概念が存在しているのだろう。


 ということは、だ。


 俺自身をゲームのように鍛えられるではないか!


 来たよ来たよ!

 俺の時代が来たよぉ!


 各種スキルが習得できることは確認済みだ。

 なんだったら、もうすでに暗黒騎士らしからぬスキル構成になっていたりする。


 おまけにレベルまで上げれるってんだから、やることは一つしかない。



 徹底的に鍛えて、少しでも死ぬ確率を下げるんだ!



 ふふふ。


 熱くなってまいりましたなぁ!




 俺がこの世界の仕組みの一端を理解し一人でニヤニヤしていると、洞窟の奥から新たなデスムカデが現れた。


 身構えた俺は少し考える。


 今なら、あの魔法が使えるかもしれん。



「キシャー!」


「アイスランス」



 アイスバレットよりも強力な氷魔法のアイスランスを唱えた。


 すると空中に氷でできた槍が出現し、デスムカデに向かって勢いよく飛び出す。



 ズブシャァァァァ!


「キ……キシャァァァ………………」



 頭に氷の槍が刺さったデスムカデは、そのまま倒れ込むと、7色の光となって消え去っていった。


 ふふふ。

 レベルアップ様様さまさまだ。


 火力のあるアイスランスはさっきまで使えなかった。

 だがレベルアップを体験して、いけるかも、と思って撃ってみたらこれだ。


 いやぁ、美味しい美味しい。


 この魔神のほこらに登場するモンスターの弱点は……うん、全属性持っている。

 これはダンジョンアタックがはかどりますなぁ!


 善は急げだ、このビッグチャンスを逃してなるものか!



 俺は意気揚々と、ダンジョンの奥へと駆け出した。 




「フレイムピラー!」


 モンスターの足元から火柱が立ち上り炎で包み込む。


「グギャァァァァァ」


 ゴブリンゾンビが汚い声を上げながら7色の光になる。


 おおぉぉ、力が!




「サンダーブレイド!」


 剣に雷属性をまとわせて、壁に張り付いたブラッドリザードに振りかざす。


「キュアァァァァァ」


 ビリビリと痺れたブラッドリザードが地面に落ちると、しばらくの間のたうちまわって、光となって消えた。


 うおおおおお、みなぎるぞぉ!




「こいつは物理が弱点」


 ミスリルゴーレムの体に飛び乗って、魔核を思いっきり殴りつけた。


「ウゴゴゴゴゴゴゴ……」


 魔核が真っ二つに割れて、ゴーレムの体が崩れ落ちる。


 キタキタキタキター!

 この感じたまんねぇ!




 俺は次々と襲いくるモンスターを倒して回る。


 4000時間プレイは伊達じゃないですよ?


 高難易度ダンジョンといえど、攻略方法がわかっていればなんの問題もない。


 むしろレベリング効率のいいダンジョンだなぁくらいの感覚だ。



 おっと、忘れてた!


 ついでに、このダンジョンで取れるお宝も全部いただくんだった。


 優秀な装備品はいくつあっても困らないからな!


 その後も俺は、魔神のほこらで出会ったモンスターは全て倒し、取れるアイテムは全部獲得して回った。






 う〜ん。

 流石にレベルももう上がらなくなってきたなぁ。


 収納空間にはここで手に入るアイテムがどっさり詰まっているが、まだまだ余裕がある。


 こうなってくると、これ以上魔神のほこらにいても意味がない。


 となると次はどうするか……。


 俺は『エンシェントクエスト』の記憶を掘り起こす。


 魔王城近くの有名なダンジョン──



 おっと、そういえばプレイヤーが入っても、宝を持ち去られた後だったダンジョンが一つあったな。


 名前は歴戦のほこら


 魔王軍四天王の強化装備が眠るとされている場所だ。

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