第24話 ダンジョンアタック

 なんとか魔王城の門を通ることに成功した。


 苦労は……しましたよ。

 風当たり強いんで。


 まぁ無事に出られたのでそれはいい。

 疲れたけど。



 で、だ。


 苦労をして魔王城の外に出たのには訳がある。


 ダンジョン探索だ。


 魔王城周辺にはゲーム終盤に相応しい高難易度のダンジョンが多数ある。


 俺はこの難しいダンジョンから得られる報酬に目をつけたってわけだ。


 高難易度で自身の強化をしながら、強い装備も集めちゃえという一石二鳥の奥義。これはかなり完璧な作戦のはず。


 俺の実力が足りるのかという問題はあるが、まぁなんとかなるだろう。


 やり込み勢の地力を見せてやんよ!





 さてさて、やってきたのは、魔王城から1時間ほど歩いた場所にある小さな丘。

 ここに魔神のほこらというダンジョンがある。


 大変物騒な名前だが安心してほしい。

 このゲームに魔神なんて存在しない。


 ゲーム後半のダンジョンなので、それっぽいカッコイイ名前をつけただけというのが、開発者インタビューで語られていた。


 名前がインフレしちゃうことはあるよね。


 そんな厨二心あふれたダンジョンだが、難易度は意外と本格的だったりする。


 出てくるモンスターは弱点属性以外のダメージを無効にし、特定のタイミングで初見殺しの必殺技を放ってくる。


 何の情報もなく突っ込んだら、まず間違いなくボコられる。それも理不尽に。

 だが逆に、戦い方を知っていれば安定して攻略できるダンジョンでもあるんだ。


 何度も死に戻って学んだ俺の経験よ。

 今こそ活躍の時だ!


 ということで、俺は丘にある2メートルほどの横穴へと突っ込んでいった。




 おぉ〜。

 この景色見たことあるぞ!


 岩肌の壁が薄っすらと光っていて、通路が奥まで伸びているのがわかる。

 これはこれは、幻想的な雰囲気が出てますなぁ。


 ここが安全な場所だったなら、観光名所やデートスポットにでもなっていただろうに。

 残念ながら物騒なんですよね、ここ。

 


「キシャーーーーーー!」



 はい、きましたー。

 この声は、デスムカデさんですね。


 全長が3メートルほどあるデカイムカデだ。

 硬い外殻を持っていて、攻撃が通りづらい相手ではあるが、弱点の氷属性はよく効く。

 戦闘になると純粋な物理で攻めてくるだけのモンスターなので、見た目のキモさに目を瞑れば、戦いやすいモンスターだ。



「アイスバレット」



 空中に氷の塊を複数個作り出し、これを相手に向けて放つ。

 高速で飛んだ氷塊は、威嚇いかく動作中のデスムカデに簡単にぶつかった。


 弱点属性の攻撃を受けデスムカデは大きくのけぞる。



「キ、キシャ!」



 この隙にデスムカデから距離を取った俺は、再び魔法を唱える。



「アイスバレット」



 俺の周囲に新たな氷のつぶてが出現。


 今度はすぐ飛ばさずに保持して、デスムカデの動きをじっと観察する。


 のけぞりモーションが終わって、デスムカデがこちらに向かってこようとした瞬間に頭を狙い撃つ。


 デスムカデの頭は特にダメージの通りがいいんだ。


 俺の狙いすました氷の弾がデスムカデの頭に命中。



「キ、キシャ〜〜」



 またまたのけぞるデスムカデさん。


 こいつはアイスバレットを全弾頭に当てることで、毎回のけぞりダウンを取ることが可能なんだ。



 すまぬ。

 俺にもやらないといけないことがあるんだ。


 ここは無慈悲にハメ殺しをさせてもらう。



「アイスバレット」


「キシャー」


「アイスバレット」


「……キ、キシャ……」


「アイスバレット」


「…………」



 ピクリとも動かなくなったデスムカデに近づく。


 能力的には普通に戦ったらただの暗黒騎士なんてひとたまりもないくらい強い相手だが……。


 いやぁ『エンクエ』やり込んでおいて良かったぁ。


 ハメ技が効かなかったら、ぶっちぎりで逃げる気満々だったが、なんとかなった。


 さす俺。

 プレイヤースキルの塊だ。



 俺が勝利に余韻よいんひたっていると、デスムカデの死体が7色の光を放って消えていった。


 相変わらずゲーミングな死に方だなぁと思いつつ眺めていると、俺の体に違和感が……。

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