第17話 レオン VS 四天王ウルガイン3
困った。
このままウルガインのスタミナ切れを狙うのもアリだなと思っていた。
未知の攻撃をしてくるまではね!
読めない攻撃を避け続けるのは至難の業だ。
ウルガインとのステータス差を考えると、一回失敗して被弾しようものなら、そこからボコられる未来しか見えない。
ワンミスでドボンです。ドボン。
そんなリスキーな戦いをずっと続けられるほど、俺は狂っちゃいねぇよ!
すぐそばでこの戦いを見守っているアナスタシア様の様子を伺うと、彼女は心配そうな表情でこちらを見ていた。
……負けるって選択肢は無いよな。
なら先手必勝だ。
今さらだけど先手必勝!
そしてボコられる前にボコる!
うおぉぉ! 見てろよぉぉこの狼男がぁぁ!
スキル無し縛り上等じゃぁ!
気合いを入れた俺はじっとウルガインの動きを見つめる。
ゲームとは違うパターンを使い始めたウルガイン。
でもなぁ!
ちょっと攻撃が変わった程度で4000時間というプレイの差は埋まらないぜ!
距離を詰めてきたウルガインの動きを見る。
まずは右手を避ける。
で、次は左足ね。
オーケーオーケー。
そこからさらに飛び蹴りに繋ぐと。
よしよし。
ここが隙になっているな。
飛び蹴りを避けたことで、無防備な姿を晒すウルガインに剣を振るう。
「ぐあっ」
隙を突いた一撃を食らって、ウルガインが苦悶の表情を浮かべる。
同時に外野のどよめきが俺の耳にまで届いてきた。
「あの騎士が一撃入れたぞ!?」
「ウルガイン様が血を!」
「なんて理想的な後手の取り方だ!」
驚く観客たちの声を聞くと、つい顔がニヤけてしまいそうになるがここは我慢だ。
あれ? 今、後手って言ってた?
先手必しょ……、えぇい、どっちでもいい!
集中だ集中!
ミスったら死ぬんだから!
追撃を加えたいところだが、ここで無理はしない。
適切に距離を取り、ウルガインの出方を待つ。
「この野郎ぉぉぉ。やりやがったなぁぁ!」
「……」
いや、まぁ、死にたくないんでやりますよ?
俺に斬られたことで、ウルガインのボルテージがさらに上がってしまった。
え? 待って。
ウルガインのやつ、頭に血が上って怒り状態になってないか?
俺が一撃入れただけなのに、もう怒ってんの!?
!!
っち!
ブオンッ!!
脊髄反射で横っ飛びをしたら、俺のいた場所をウルガインの爪が通り過ぎていった。
やっぱり怒り状態じゃねぇか!
あの動きもよく知っている。
そのおかげで避けられたんだが。
俺は怒った状態のウルガインを観察する。
…………。
うわぁ。
リアル怒り状態はちょっと引くわぁ。
頭を振り乱してよだれを撒き散らしてやがる。
怖い、この絵面、怖いんですが。
「うぐぉがぁぁらぁあ!」
掛け声も奇声になっているんですが!
ダメだダメだ。ビビっても冷静に。
頑張れ俺!
怒り状態の動きは速い。
おまけにパターンが変化しているので、一手ずつ見極めなきゃいけない。
それでも、やるしかねぇってか!
ブオンッブオンッ!
眼前で空を切るウルガインの爪。
うおおおおおおお!
いける! しっかり見ればいけるぞ!
どれだけコンボに変化があっても、ウルガインの攻撃のリーチは分かりきってんだ。
爪、蹴り、噛みつきもタックルも、全ての攻撃のどこに当たり判定があるかなんて知り尽くしてるっての!
次々と振るわれるウルガインの攻撃を避け、時にはいなす。
そして大振りの攻撃を
「ふっ!」
「ぐあぁぁぁ!」
わずかな隙をついて斬りつける。
「ぐごががががあぁぁ!」
するとまた奇声を上げるので、俺はドン引きしつつも、防御に専念させてもらう。
そして隙ができたらまた剣を振るう。
「ぐはぁ!」
張り詰めた緊張感の中、ギリギリで攻撃を避けて、わずかな隙をついて攻撃をする。
当たったら死ぬ! 避けろ!
よし、回避成功! 反撃!
何度かこの攻防を繰り返した結果……。
「ぜぇぜぇ」
「はぁはぁ」
俺もウルガインも満身創痍な状態になってしまった。
酸素、酸素が欲しい。
当たったら即終了のスリルがヤバすぎる。
俺はウルガインを全力で見張りながら、必死に肩で息をする。
対するウルガインは、俺の攻撃が積み重なり、全身から血を流れさせている状態だ。
あいつも俺と同じく、もうフラフラなんだよな。
「ぐおぉあぁぁぁぁ!!」
そんなにボロボロなのに、まだやるってのか!
獣人の戦闘への執念をなめてた。
でもなぁ。
もうおまえに勝ち目はねぇよ。
俺はウルガインの振るったヨロヨロの爪を避けると、隙だらけの体に盛大な一撃を入れた。
「……ぐふっ」
バタン!
血で染まったウルガインはそのまま地面に倒れ伏した。
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