第7話 新たな日常
アナスタシア様の護衛部隊に配属されて1週間が経過した。
喜ぶべきは、この1週間なんの危険もなかったことだ。
そしてこの間に色々と調べてわかったことがある。
やっぱりここは『エンシェントクエスト』の世界だってことだ。
暗殺者の
そう思って訓練をいつも以上にがんばっていたんだが、ふとある時思いついたんだ。
『エンシェントクエスト』のスキル取得条件を満たしたら、この世界でも使えるんだろうかと。
これが見事に当てはまってしまった。
ただのモブの暗黒騎士が持っていないスキルが、ぽんぽんゲットできてしまったんだ。
おかげで普通の兵士よりもちょっと強いくらいには鍛えられた。これは嬉しい誤算だ。
しかし、この結果がよりはっきりと、この世界が『エンクエ』の世界であると証明してしまった。
ということはだ、ゲームの流れ通りの歴史を辿るとすると……。
一回、暗殺者を
そして俺はその
はぁぁぁぁぁぁ。
なぁにが悲しくて、異世界の暗殺者と渡りあわなきゃならんのか。
しかも負けイベの可能性濃厚です。それすなわち、俺の死。
まぁアナスタシア様は可愛いので、
だがもし運命の強制力があったとしたら、それに
とまぁ、暇を持て余した俺は、こんなことをダラダラと考えていた。
ええそうです。妄想乙です。
ちなみに、暇なのは俺が無能だからじゃないぞ。
アナスタシア様の専属護衛部隊のやることが無さすぎるんだ。
この部隊は20人がそれぞれ持ち回りで護衛をやっている。
その護衛内容の大半がアナスタシア様のいる部屋の扉の前の警備だ。
おまけに、街の治安維持部隊からの転属は俺一人で、あとは結構なエリートが揃っているもんだから、ややこしい仕事や難しい任務は俺には回ってこない。
楽でいいが暇。なので色々と考えちゃうわけだ。
ふわぁあぁ。
思わずあくびが出てしまう。
全身真っ黒の
流石に寝るのはまずいが。
そんなこんなで、今日も平和にアナスタシア様の部屋の前を守っていた。
ガチャ。
扉の開く音が聞こえた瞬間に、シュッと背筋を伸ばす。
こういうところも俺は抜かりないぞ?
部屋の中から出てきたのは護衛部隊の隊長だ。ちなみに女性である。
アナスタシア様をすぐそばで守る役目。身辺警護を担当する者は全員が女性で固められている。重要なポジションに女性が必要なので、隊長も女性が選ばれたんだ。
そして、隊長に続いてアナスタシア様が出てこられた。
「おはようございます。今日も守ってくださってありがとうございます」
あの恐ろしい魔王様の娘とは思えない、可憐な笑顔を見せるアナスタシア様。
今日も可愛すぎるんじゃないか?
心根も優しいので、俺たちみたいな存在にまで声をかけてくれる。
だがこれはちょっとした罠でもあるんだ。
このアナスタシア様の心地よい声に反応しようものなら、あとで隊長にこっぴどく怒られてしまう。精神が緩んでいるって言われてな。
ここは直立不動の置物の構えで、どっしりとしておく。
「じー」
俺は石。俺は石。俺は石。
何やら視線を感じるが、心を無にするために頭の中で呪文を唱え続ける。
だって隊長に怒られるの嫌だもん。
隊長たち、早くどこかに行ってくれないかなぁ。
気が抜けない状態を保つのは結構疲れるんだが。
チラリとアナスタシア様の方を見てみると、彼女はこちらをじっと見つめていた。
めっちゃ見られているんですが?
アナスタシア様がガン見してくるんですが?
アナスタシア様の視線が突き刺さっているが、俺は身動きをしないようにドーンと構える。
「レオンさんですよね?」
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