第6話 まさかの出世
「レオンよ、その部隊に所属してみるか?」
「!!」
こ、これは昇進のチャンス!?
いやいや、魔王軍には細かい職階は無いんだよな。四天王とその他大勢、みたいな。
でもまぁ暗黙の上下関係はある。
その観点から考えると、街を見張っている騎士よりも、姫の護衛の方が上と見なされる。
これは間違いない。
問題はそれが俺の身の丈にあっているかどうか……。
ここは変に前のめりになるよりも、一旦身を引いた姿勢を見せるべきか?
うん。そのほうが良い気がしてきた。
ひょっとしたらコレって魔王様による、娘に近づこうとする
俺は神妙な顔をしながら、魔王様の提案に対して口を開いた。
「大変光栄なことではありますが、自分程度では務まるかどうか……」
「ほう?
まるで物珍しいものでも見るように、魔王様が目を細めた。
むむむ。
顔色にわずかだが喜色が含まれている!
正解だ。これ絶対正解だぞ。
やっぱりこれは食いついたらダメな提案だったんだ。
俺の命がさらに繋がった気がする。
「ふむ。しかし何か褒美をやらねばならんのだが……レオンよ。何か希望はあるか?」
ここだ。ここがチャンスだ。
今日という日を無難に乗り越えるためのターニングポイント。
それがここだ。
狙うは今よりもちょっとだけマシな部署への配置換えだ。
もう少しだけ重要な拠点を守る部隊に移動できれば、仕事内容も街の治安維持よりはマシになるはず。
「はっ。
奥義ザ・低姿勢。ここで欲張ったら
何も願わないのは褒美を与えようとしている方々の顔に泥を塗ってしまうことだ。だけど大きく望むとそれだけ調整や反動が大きくなってしまうからな。
これぐらいの低い感じを願えば若干の上ブレで着地できて万々歳ってもんよ。
悪くても王城外壁部隊、良ければ王城内部隊だな。
ふふふ、これはツイてるぞ。死ぬ確率がさらに低くなった。
俺は期待の
すると魔王様は自身の顎を撫でて、ニヤリと口角を上げた。
「ならば、レオンよ。お前にはアナスタシアを護衛する専属部隊に任命する」
えぇぇぇぇぇ!?
さっきのは俺を試すために言ったんじゃないの!?
予想よりもずっと上ブレちゃってるんですけど!?
あ、やばいやばい。返事をしないと。
「……はっ。身に余る光栄。誠に嬉しく思います」
身に余りすぎぃ!
さすがにここまでは望んでいなかった。
というか、アナスタシア様の護衛は暗殺者にやられるリスクがあるんですが?
いやいや、良さそうなポジションに見えて一番やばいんじゃないこれ?
「くれぐれも、ワシの大事な娘に悪い虫がつかないように見張ってもらおうか」
「……この命に変えても」
魔王様怖っ!
今思いっきり釘刺されたよ?
娘に変な男を近づけるなって言いつつ、俺が近づくのもNOってことですよこれ。
確かに姫様は可愛いですが、俺みたいな平凡な騎士がお近づきになれるわけないでしょうが! この親バカ!
やっちまった。これ絶対やばい配置換えだ。
暗殺者のリスクもあるのに、魔王様の父としての目がガンガンに光っているっていうね。
これでもし、アナスタシア様に何かあったら……。
俺、魔王様にぶち殺されるんですけどぉぉぉぉぉ!
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