12.墜落現場の謎

  震えが止まらない類は、純希と明彦に支えられ、一同とともに家庭科室から倉庫に移動した。鏡の前に腰を下ろした三人を中心にして、一同も腰を下ろした。


 その後、理沙が鏡を覗き込んだ。姿が見えないからこそ、なおさら心配だ。

 「類、大丈夫なの?」


 寒気が止まらないのだ。鏡に文字を書こうとしても指先が震えてうまく書けない。

 「どうなっちゃうんだろう……俺……」


 明彦が類に訊いた。

 「魔鏡の世界で何があったんだ? 説明してくれなきゃわからないよ」


 綾香が明彦に言った。

 「そう焦らないで。類は怯えてる。気持ちが落ち着いてからでもいいんじゃない?」


 みんなを殺してしまうかもしれない、と類は大きな不安を感じていた。魔鏡の世界で見てきたことのすべてをいますぐに伝えなければならない。

 「いや、いいんだ。俺からもみんなに話さなきゃいけないことがある」


 綾香は類に言った。

 「無理しないで」


 「でも休んでる場合じゃないんだ」


 重大な何かを言おうとしている……と、綾香は類の真剣な面持ちから察した。

 「わかったよ……」

 

 自分から理沙に無事を伝えたい。類は鏡に息を吐きかけて文字を書いた。

 《心配かけてごめん》


 理沙は、鏡に現れた文字を確認した。つきあいが長いふたり。文字を見るだけで、類の心の動揺が伝わってくる。それでも何も訊かずに優しい表情を浮かべた。


 「無事ならいいの」

 

 《みんなと話があるんだ》


 話に参加したくてもできない。鏡の世界で起きたこと知りたい。だがそれは、類の気持ちが落ち着き次第いつでも訊ける。本当は支えてあげたい。でも、いまの自分できることは笑顔を忘れないこと、そして類に従うことだけ。


 「うん。じつはいま、パズルゲームにはまってるんだ。しばらく遊んでるから用事があったら呼んでね」


 《ありがとう》


 理沙の優しさに感謝した類は、真剣な面持ちで話を切り出した。

 「みんな、覚悟して聞いてほしい。とはいえ、謎が多すぎて、理解できないことのほうが多かったけど……」


 一同はうなずいた。


 明彦が言った。

 「どんなに恐ろしいことでも受け止める覚悟ができてる」


 まずは、小夜子が行方不明となっている死神屋敷の元所有者の娘であることを伝えた。その後、細かい情報を伝える。


 小夜子はツアー客のアメリカ人四人と共にジャングルに墜落していた軽飛行機に乗り、操縦士のみ死亡。その観光客が利用したツアーはネバーランド海外なのかは謎のままだが、すべての条件は自分たちと同じ。


 操縦士が彼らから貰ったリーフレットを壊れた手提小型金庫の中に収めた。それさえ見つかれば、ツアー会社についてはっきりする。が、しかし、三十年も昔者落ちている可能性は低い。


 現在、小夜子は鏡の中にいるが、突然、魔物となった。この鏡の世界が思い出深い場所であるのと同時に殺人を犯した者が幽閉される牢屋だと言う。ひとことで言えば彼女は魔鏡の住人であり、肉体に戻ることはないように思えた。どこかで眠っているのか、どうなっているのか、彼女の身体の様子を知る術はない。


 もっといろいろ訊きたかったが、彼女が魔物になってしまったので、詳しくは訊けなかった。なので聞いた範囲で教える。とは言え、類も理解できる部分が少ない。


 ツアー客四人はゲートを通れたが、小夜子は十七歳のまま鏡の世界に幽閉された。島の時は止まっているので滞在中は永遠の十七歳となる。そしてゲートはいつでも存在する。それを見ることができればいつでも通れる。但し確実な答えがわからないとゲートは目に映らない。その答えとは、自分たちの身に起きたことであり、それが島の謎の共通点となる。共通点イコール答え。


 島の謎には共通点がある。自分たちの身に起きたことがわかれば、その共通点の答えがわかる。真実の中に現実がある。自分たちの身に起きたことは真実であり現実だと言う。島で起きていることを合わせてカラクリなのだ、と。


 彼女はこれを人生最大のなぞなぞだと言った。だが答えは教えてくれなかった。各々が解かなければ意味がない。答えがわからないかぎり島に滞在することになる。ゲートを見るためには確実な答えが必要になる。それは墜落現場にある。


 そして、七人の仮説どおり、島の生体は守られており、生魚を火の中に放り投げても絶命することはなかった。生命線が切れている者に関しては脆く、生体に関しては傷つけることさえできない。


 ちなみにゲートが現われると、空の割れ目から光が差す。それは太陽でもなく月の光でもない、見たこともない金色の光。カラクリがわからない彼女は、彼らに答えを説明されても理解したくなかったし、受け入れたくなかったので、その光を見ていない。


 一番の不安要素を口にする。あのときは殺人なんて犯すはずないと思っていたが、恐ろしい魔物を見てから、急に怖くなったのだ。


 「いずれおまえも殺人を犯して魔物となる、そう言われたんだ。俺が殺人なんて犯すはずない。だけどあの眼を思い出すと怖いんだ。それに島の生体は守られている。それなのにどうやって人を殺す……彼女の戯言なのか……だけど嘘を言っているようには思えなかった。理沙や友達を殺すって脅された」


 類が人を殺すはずがないので、純希はそれについて否定する。

 「自分たちが不死身なのか、それを確認するのはリスクが大きい。明彦が拾ったナイフ代わりの鉄屑を胸に刺してみるなんて怖くてできない。類が俺たちを襲うはずないし、それに関しては重要視しなくていいんじゃないの?」


 綾香は周囲を見回してから、疑問を口にした。

 「たしかに類はあたしたちを襲ってこない。そんなのわかってる。だけどここが殺人を犯した者の牢屋になるなら、小夜子は誰かを殺したってことになる。だから幽閉されて魔物になった」


 「殺人を犯すような子に見えなかった。ごく普通の女の子だ」最後に彼女が叫んでいた意味深長な台詞を教える。「もうひとりの自分の囁きに抗えなかった、って言っていた」


 綾香は訝しげな表情を浮かべた。

 「もひとりの自分の囁き? 何それ?」


 「わからない。そのあとすぐに魔物と入れ替わったから」


 「ツアー客が利用したツアー会社さえわかれば、小夜子と同じ状況にいる何よりの証拠になるのに」


 「これだけ状況が同じなんだ。疑う余地はない」


 自分たちの身に起きたこと、島の謎を合わせてカラクリと言うなら、自分たちがいま体験していることは何なんだ?

 「真実の中の現実って何だ?」明彦は疑問を口にする。「それに何故、墜落現場に答えがあるんだ? 俺たちはあの場所になんらかのヒントがあるとは思っていた。まさかゲートを見るための答えがあるなんて考えもしなかった」


 類は答える。

 「真実の中にある現実こそ、自分たちの身に起きたこと……らしい」


 「一緒にいたツアー客はゲートを通ったんだろ?」


 「うん。彼女の話だとゲートを通って島から消えたそうだ。カラクリが解ければ空に金色の光が差す。それがゲートだ。答えさえわかればゲートはどこにでもあるみたいなんだ。ただ俺たちの目に見えていないだけらしい」


 「謎の共通点を探さないといけない。だけど希望が持てた。だって答えを探せば確実にゲートを通ることができる」

 

 「たしかにこんな場所の住人になりたくないし、永遠の十七歳なんて勘弁してほしい。さっさと現実世界に帰るために、人生最大のなぞなぞを解くしかない」


 「人生最大のなぞなぞ、そういうの嫌いじゃない」


 「おまえの得意分野だな。期待してる」


 深刻な面持ちで純希に話した。

 「去年の夏に、俺と純希が死神屋敷に侵入した姿を、死神は魔鏡から見ていた」死神屋敷の化け物なので、死神と呼んだ。「魔鏡のそばで衰弱死して発見された若者は、自殺じゃなくてやつの仕業だ。俺たちのことも殺そうしたらしいけど、純希に死の影が見えたから手を下すのをやめたって言ってた……」


 訝し気な表情を浮かべ、聞き返す。

 「俺に死の影? どういう意味だ?」


 「たぶん……俺が吸い込まれた鏡の破片に渦巻いていた黒い靄のことだ。お前の目の中にはすでに魔物が棲んでいる、じき死神になるって脅された。俺はおまえを襲ったりしない。だけど、なんだか不安なんだよ」


 「俺はいつもどおりだ。死の影が見えているなら、とっくに死んでる」両手を広げて、五体満足な身体を強調した。「どうだ? 問題ない」


 道子が類に話しかける。

 「魔物はね、人間の弱った心に取り憑くものなの。気を強く持たないと死神の思う壺だよ。引っ張られないようにしないと」


 「死神は、地縛霊でもあるって言っていた」


 「地縛霊? 死んだ場所から動けない怨霊みたいな存在だよね。それなら尚更、強い心を持たないと呪われる。大丈夫、幸いみんな揃ってる」


 道子に勇気づけられた類は、気持ちを切り替えた。もともとポジティブなほうなので、前向きに考えることにした。

 「そうだな。いつもどおりにしているのが一番だな」


 明彦が言った。

 「その小夜子なんだけど……ツアー会社が関係しているなら、操縦士とともに彼女も死んだはずだ。だって俺たちだけが生き残ってるのはそういうことだろ? 

 でも死んだのは操縦士だけ。もしかしたら俺たちとはちがうかたちでツアー会社が関係していたのか、それとも偶発的に島へワープしたのか、それを知りたいんだ」


 「せめてツアー会社の名前さえわかればなとは思うけど、そんな古いリーフレット見つからないかも。手提小型金庫さえ見つかれば、あるかもしれないけど」

 

 綾香も明彦と同じ考えだ。

 「もし、小夜子と同乗したツアー会社がネバーランド海外なら、あたしたちはツアー会社によって、意図的に島へ送り込まれたことになる。だけどバミューダトライアングルの伝説みたいに偶発的に島へワープしたのか、あたしとしてはそれをはっきりさせたいの」


 類は綾香と明彦に言った。

 「どっちにしても俺たちは墜落現場に戻るんだ。その途中に軽飛行機があるから調べてみるよ。たとえ出口が同じでも、それは俺も気になるからね」


 類は男子に訊いた。

 「俺に同行するやつは?」


 恐怖心よりも好奇心。明彦が手を挙げた。

 「俺が行く。小夜子たちはわざわざ軽飛行機の墜落現場に戻った。答えがそこにあるなら、この目で確かめてみたいんだ」


 純希は翔太に顔を向けた。

 「どこにでもゲートがあるなら、答えの確認は俺らでじゅうぶん。おまえは女子を守ってあげてほしい。あんな島で女子だけなのは心配だから」


 翔太は頷く。

 「わかった任せとけ」


 そのとき、理沙が鏡をノックしてきた。

 「類? ミーティングの最中にごめん。パズルゲームをクリアしちゃったから、ツアー会社について調べてみたんだけど」


 類が鏡に息を吐きかけて文字を書いて訊く。

 《どうだった?》


 理沙は首を横に振り、残念そうに言った。

 「それが……ツアー会社は雲隠れ」


 《どういうこと?》


 「ホームページが削除されてる」


 予想どおりの展開だ。類たちは理沙の報告に肩を落す様子はなかった。

 「やっぱりな……」


 純希が言った。

 「ふつうの会社なら責任逃れだな」


 「そうだ」綾香が閃く。「削除されたホームページを検索する方法があるよ」


 類は綾香に言った。

 「俺が魔鏡の世界に行ってなければ、鏡を割る実験のあとツアー会社について話し合う予定だったけど、その必要もなさそうだから検索するだけ時間の無駄だよ」

 

 綾香は言う。

 「でも検索してもらうだけ、してもらったら?」


 類は言った。

 「ごくふつうのツアー会社にできることじゃない。それに普通のツアー会社なら眼中にない」


 「たしかに、それもそうね」


 「ごめんね、役に立てなくて」と理沙が申し訳なさそうに言ってきた。


 現実の世界から鏡の世界の様子は窺えない。たいした情報を得られなかったので、みんながっかりしていると思い込んでしまったようだ。


 類は鏡に息を吐きかけて、すぐに返事を書いた。

 《理沙は悪くない》


 理沙は言った。

 「みんなの役に立ちたかった」


 《おれたちを支えてくれてる それだけでじゅうぶんだよ》


 明彦が、鏡に返事を書く類を見た。疲れた表情をしている。魔鏡の中で恐ろしい体験をしたのだ。心の休息が必要だろう。

 「俺たちは廊下にいるから、気持ちが落ち着くまで理沙と仲良くしてろよ」


 類は明彦に顔を向けた。

 「でも、大事なときなのにいいの?」


 「大事なときだからこそ冷静になる必要がある。それに元気がない類なんて、類らしくないから」明彦は類に言ってから、一同に顔を向けた。「みんな、俺たちは廊下に出よう」


 一同も明彦の考えに賛成だ。


 綾香も優しい笑みを浮かべて類に言った。

 「あたしたちは廊下で待ってる」


 みんなの心遣いに感謝した。

 「ありがとう」


 明彦は鏡に息を吐きかけて文字を書いた。

 《ドアを開けて》


 理沙は倉庫のドアを開けた。腰を上げた一同が倉庫から廊下に出ると、類が《閉めていいよ》と鏡に文字を書いた。文字を確認した理沙はドアを閉めた。


 廊下に出た一同は、窓越しから空を見上げた。もう日が昇り始めている。きょうの東京は気温が高そうだ……と、見慣れた東京の景色を眺めた。


 だが、景色ばかり眺めていても、なんの解決にもならないので、綾香は倉庫での話の続きをした。


 「真実が明らかになったときにゲートを見ることができる。導き出した答えが確実なものなのかを確認するために墜落現場に戻ったアメリカ人は、小夜子に答えを説明しようとしていたにもかかわらず島から消えた。

 つまり、自らゲートに飛び込んだわけじゃない。これって、カラクリが解けて答えを確認したあと、導き出した答えが正しければ、否応なしにわずかな時間でゲートに吸い込まれるってことじゃない?」


 明彦も同じ考えだった。

 「類の話から推理すると、おそらくな……」


 純希が前向きな発言をする。

 「導き出した答えと墜落現場にある答えが一致すれば、島から脱出できるってことじゃん。自分たちで頑張らなくてもゲートが勝手に吸い込んでくれるならそれでいいよ。とにかく現実世界に戻れたらそれでいい」


 ふたりは純希の言葉に納得する。

 (手間が省ける)


 翔太が墜落現場の光景を思い出す。

 「だけどさぁ、答えって言われても、墜落現場にあるものなんて、どれだけ考えても乗客の死体と飛行機の残骸だけだった」


 「そうなんだよ」と、明彦も胸の前で腕を組んで考える。「俺たちが墜落現場に戻ろうした理由は、カラクリを解くためのヒントが欲しかったからだ。それなのに答えそのものがあるなんて……信じられない。あの悲惨な場所に何が隠されているっていうんだ?」


 「俺たちは周囲全体をくまなく確認したわけじゃない。それでも、もし目立ったものがあったら気づけたはずだ」


 「目立ったものねぇ。なんていうか……墜落現場に到着する前にカラクリのヒントくらい掴んでないと、答えに気づけないような気がするんだよ」


 結菜が明彦に言った。

 「学校のテストみたいなかんじなんじゃないの?  正解だって思い込んで回答欄に記入しても、教師が導き出した答えと同じじゃないかぎり完璧とは言えない。それこそ明彦が言うように、カラクリが解けていない場合は、墜落現場にある答えに気づけないのかもしれない」


 「島のカラクリを解いたアメリカ人は、何をきっかけにして解いたんだろう?」


 道子が言った。

 「明彦たちは墜落現場に向かいながらカラクリを考え、あたしたちは浜辺で待機しながら考える。みんなで考えたらちゃんと解けるよ。絶対に現実世界に帰れる」


 そのとき廊下に類の笑い声が聞こえた。腰を上げた綾香が倉庫を覗いてみると、楽しそうな類の姿が見えた。類を元気づけるには理沙が一番だと思い、ふたたび廊下に腰を下ろした。


 「いつもの類に戻ったみたい。これであしたから、なぞなぞカラクリに集中できると思う」


 道子は微笑んだ。

 「よかった。類は元気が一番だもの。それに魔物は類だけじゃなくて、みんなの心に棲みついてしまう可能性もある。だから笑顔だけは失わないようにしなきゃね」


 綾香は微笑み返す。

 「そうだね」


 類の心の状態を心配していたのは一同だけではない。類には笑顔が一番だ、と理沙も同じことを考えていた。いつもの類に戻ってほしい、その一心で明るく振る舞っていた。


 どうすれば類が元気を取り戻せるだろうか……彼女の自分にしかできない会話をしていた。


 「ゲームクリエーターになって楽しいゲームをたくさん創るんでしょ?」


 鏡に息を吐きかけて返事を書く。

 《うん》


 「そのためには島から脱出しないとね」微笑んだ。「早く類やみんなに逢いたいから、あたしにできることがあったらなんでも言ってね」


 《ありがとう》十代のカップルらしい質問をした。《おれのもうひとつの夢なんだかわかる?》


 照れ笑いして答えた。

 「あたしをお嫁さんにする、でしょ?」


 《正解》


 理沙は女の子らしい願いを言った。

 「結婚したら子供はふたり欲しい」


 《ひとりっこだったからおれも》


 「子供とキャッチボールしてる類が目に浮かぶよ」


 《おれはオムライスを作ってるりさが目に浮かぶ》


 オムライスは理沙の得意料理だ。細かく切った鶏肉とみじん切りの玉葱や人参をたっぷり入れてご飯を炒め、ケッチャプと塩コショウで味をつける。そのあと、少量のピザソースを加えると、プロのような味になるんだとか。そして、お皿に盛りつけたチキンライスに、オムレツ風の“フワトロ”の卵を載せ、その上にケチャップでハートを描く。これが理沙定番のメニュー。大好きで何度も作ってもらった愛しい味。


 「オムライスが食べたいなら絶対に戻ってきて。約束だよ」

 

 《絶対に戻るから安心して》


 理沙は鏡に手のひらを押し当てた。類はその上に息を吐きかけて手を重ねると、理沙は鏡にキスをした。


 鏡なんかなくなればいいのに―――


 類も鏡に映る理沙の唇に、自分の唇を重ねた。


 愛してる―――

 

 類は鏡から唇を離した。ずっとここにいるわけにはいかない。現実世界に戻って理沙を抱きしめるためにも、墜落現場に向かわなくてはならない。


 《みんなのところに行くよ》


 「うん」理沙は微笑んだ。「あたしはいつもここにいるから安心して」


 《また来るから》


 「いつでも待ってる」


 倉庫から出た類が廊下に足を踏み出すと、一同の姿が見えた。

 「みんな、心配かけてごめん」


 恐怖を払拭した類の表情を見て安心した純希が言った。

 「元気が出たならそれでいいよ」

 (いつもの類だ)


 綾香も言う。

 「類は元気が取り柄なんだから」


 「ありがとう」純希と綾香に言ってから、一同に言った。「そろそろ目覚めの時間だな」


 純希が類に言った。

 「そうだな、起きるとしようか」


 不思議と自由自在に島とここを行き来できるようになっていた。簡単に意識が落ち、簡単にジャングルに戻れる。


 一同は一斉に目を覚ました。




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