第3話 三暴魔


    1


 魔族には魔族の様式がある。

 暗い玉座の間。紫の明かり。そこに集まりし三人の魔族。

 三暴魔さんぼうまと呼ばれる者達は、ただならないオーラを放っていた。


「我らが集められるとは。シーラ。何か懸案事項でもあるのか?」


 全身鎧を着込んだタイード──鉄塊のタイードは金属で、全身を包み込んでいる魔族。覗いている眼光を除いては彼をうかがい知ることは出来ない。


「ええ。その通り。敵の出現よ。それも既に被害を出している」


 金髪の少女。氷魔のシーラ──一見すると子供の様である。だが魔法を操る専門家だ。


「しゃっしゃっしゃ。そいつは大変だ。じゃ、俺っちがサクっといってくら」


 槍を持った人型トカゲ魔族。旋風のサバカドが三人目──自然を思わせる装飾を着け、いかにも身軽そうな男である。


 この三人が魔王軍精鋭。三暴魔と呼ばれる魔族達。

 しかし、王たる者はまだいない。そのためシーラが取り仕切っている。


「待ちなさいサバカド。どこへ行くの? まだ説明も済んでいないでしょう?」

「おっと失敬。そういやそうだった」


 シーラが言うとサバカドは止まった。そして頭を軽くコツンとした。

 そんなサバカド、そしてタイードに、シーラは呼びつけた理由を告げる。


「部下達から、報告があったわ。拠点が二つほど制圧された」

「人類の騎士か?」

「いいえ違う。敵は勇者を名乗っていたそうよ」


 シーラはタイードに聞かれ答えた。

 だがタイードは納得していない。


「勇者など人類の言うまやかし。実在するものではないはずだ」

「しかし現実に拠点は落ちた。対処すべき事案と言えるでしょう」


 それでもシーラはタイードに言った。


「へーどんな奴だ?」

「人の男。小さな竜を一匹連れている。数日前に洞窟を制圧。わかっている情報はこれだけよ」


 サバカドにも同じように伝える。

 シーラにはそうすべき理由が有る。


「魔王ザメクの復活は近いわ。人類の妨害は許せない。しかし私は儀式でかかりきり。貴方達で対処をするしかない」


 シーラは儀式を担当していた。魔王を復活させる重責だ。

 故に二人に指示を出している。それは二人共理解をしていた。


「じゃあやっぱり俺っちが行ってくる。タイードの旦那は休んでてくれ」


 トカゲ男、閃風のサバカドが槍を肩に担いで歩き出す。

 二人はそれを無言で見送った。文句はない──と、そう言う事だ。


    2


 魔王軍の邪なる企み。

 そんなことは知らないクサナギは、木に実った果実を取っていた。

 拳大の赤く熟した果実。クサナギは木から下りてかぶりつく。


「ジューシー!」


 そして感想を言った。


「勇者クサナギ。我にも分けてくれ」

「やだよ。自分で取れ。飛んでるだろ?」


 チビにも果実は渡さない。それがクサナギの、流儀であった。


 入手アイテム:特に無し

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