第4話

「ナツメ、家にあった古代魔術書よ。これ薬品作るやつみたいだけど作ってみるの?」

由貴が父の本棚から何冊か持ってきた。最近の流行りではないので廃れようとしている魔法薬の研究がしたかった。

「ありがと。魔力ない時に使える魔法が欲しかったんだ。」

「……行くから?」

由貴がナツメをまっすぐみる。ナツメは真剣な顔をして頷く。

「父さんずっとこの世界に降ってくるマイナスエネルギーを止めたいと思っていた。ずっと調べてたんだって。でも俺とういはその源の場所が分かる。そこに行ってチャレンジしてみたい」

由貴は俯いてから自分の手を握りしめナツメに言った。

「私も力になりたい。一緒に行くのは駄目?」

「……父さんにも言ってないんだ。由貴の父さんと母さんが心配するぞ」

そうナツメが言うと由貴は涙を流した。ナツメは戸惑ったが真顔で由貴を見つめる。

「ずっと待ってるのは性にあわない。着いてくるなって言ったって、ういに聞いて着いていくから。何か力になりたい。私も同じ日に生まれた子供だよ!ひとりぼっちにしないで」

由貴は涙が止まらなかった。ナツメはため息をついた。まずは魔法を覚えようと。

「力がなかったら連れて行けない。だから連れていこうと思えるぐらいの魔力をつけて欲しい」

連れていくには何があるか分からない。自分を守る事が出来るのか、何があるのか分からない。一緒に行きたいとは思っている。だからこそ力をつけて欲しいと思った。

「私ね、お母さんが龍使いの最上の真龍帝位なの。だからね、龍になれるんだよ」

由貴が少し悲しそうに話し出す。自分が龍に変化出来ることが嫌だった。みんなと違うから。だけど着いていく為なら役に立つはず。だから告白した。

「凄いじゃん。龍になれるなら、龍の鱗なら並の攻撃じゃ傷つかない」

ナツメはほっとした。ういは不思議な存在で魔術もデタラメに見える。だけどきちんと動く。そんな不思議な魔法使いだったから、ナツメがういと由貴を守るのは難しいと思っていたから。

「でも、必要以上に言わないでね。私そんなに教えたくないの」

悲しそうに話す由貴をみて頷く。誰にだって言いたくないことはある。そうナツメが言う。

「ナツメにもあるの?」

「今はないかな。でもいつ出来るか分からないから。俺も……分かんないけど。言わないよ」

何か胸に引っかかるような言い方だったが由貴はそのまま頷いた。

「何があるんだろうね」

「分からない。向こうにいく方法を考えないと」

ナツメは空を仰いで眩しそうな顔をする。明るい時はナツメもういにも力の源の方向が分かりにくかった。夜、月の光の中だと簡単に分かるのに。

「ナツメとういは月の力が強いの?」

ある時由貴がういに尋ねた。ういはよく分からないけど、新しい魔法を思いつくのは夜が多いと言っていた。

「夜の力か月の力か星の力か分からないんだけど、夜はね。力がわいてくる。新しい自分になる感じがするんだ」

ういは空に手を伸ばして語る。由貴は時間帯で力が変わることはない。不思議に思った。

「お父さんお母さん、時間帯によって能力変わる?」

由貴が両親に問うとまりあが朝が1番エネルギーを感じるかもと言った。でも能力が変わるのは分からないとも言った。

ナツメとういはやっぱり特別なんだなと思った。

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