第17話 兄弟問題

「暑い…ねっ!」

「よっと…そーねっ!」

パシンッ、パシンッとボールがグローブに当たる音がする。

「努は最近何してたっ?」

「うーん、宿題かなっ!明は、遊んでたんでしょっ!」

公園…子供たちが遊び回る中、私たちはキャッチボールをしていた。明が部屋の掃除をしてたら、グローブがでてきたからやろうと誘われたのだ。

「失礼なっ!…合ってるけど。」

「でしょ?どうせ、宿題は進んでないんでしょっ?」

「掃除してたからね!仕方ないよっ!」

明が投げたボールが遠くへ飛んでいく。 ガサッと草むらに落ちる音がした。

「あーあ…」

「しまった!」

私たちは草むらの方へ向かう。

「あー、お兄ちゃんのボールなのになあ。」

「まあ、探せばあるでしょ。にしても、キャッチボールなんて懐かしいね。」

「だよね~!昔、お兄ちゃんとよくしてたなあ。」

「あー、だからグローブも二つあったのね。」

「そ!」

草むらの外から見ても、ボールがどこにあるか分からない。

「結構奥かな……努は、お姉ちゃんがいるんだっけ?」

「…うん。まあ、仲良くはないけどね。」

「そっか……案外異性の方が仲いいのかな。」

「どうだろ?同性の方が話し盛り上がりそうだけど…、年の差もあるかもね。」

「たしかに!お兄ちゃん大学生だからね。可愛がって貰えるよ。たまにうざいけど。」

「私の姉も大学生なんだけどなあ。」

「そっか……あっ、あった!」

明は手を突っ込み、ボールを取り出す。

「ふぅ、けどちょっと疲れたね。コンビニでジュースでも買う?」

「そうね。」

私は帽子を取って、パタパタする。夏は蒸れる。明もそれを見て、帽子を外して同じようにパタパタした。

「明は、弟もいたよね?」

「うん、小5。かわいいよー!」

「えー、もうそんなもんか。早いなあ。自分も同じだけ年を取ってるはずなのに、なんか…子供の成長って早く感じるよね。」

「まあ、私は家で一緒だからなあ。そんなに早いって感じはしないけど。」

「けど、弟ってよくない?妹でも…年下の子が欲しいな。」

「いたらいたで、大変だよ?生意気だしー、うざいしー。」

「確かに…友達もお姉ちゃんいいなって言うけど、私からしたら全然だしね。」

「隣の芝生はなんとやらだね!兄弟姉妹はいないと羨ましく思うけど、いたら別にだよね。……でも、いなくなったら寂しいか!」

「……そうかもね。」

どうだろうか。もし姉がいなくなったら、私は悲しむだろうか?あまり想像がつかないな。

「でも、お姉ちゃんだから我慢しなさいとか言われると、ムッとするよね。弟ばっか可愛がられたりしてさ。」

「それは分かるかも。私もお姉ちゃんばかり可愛がられてたし…」

「……」

「なんでなのかな……案外、できない子の方が可愛がられる。私は努力できたから、なにも言わずともやったから……たまになんで頑張ってるんだろうって、思うよ…」

「私は、努力できる努が好きだよ!かっこいいし……尊敬できりゅっ」

「あはは!どこで噛んでんの!ほらコンビニついたよ?アイスも買う?」

「うん!」

私たちがコンビニに入ると、明はなにやらニヤニヤしだした。

「どうしたの?」

「いやあ、なんだか…努はお姉ちゃんみたいだなって。」

「そう?ってか、兄弟うざいって話の後だと、悪口かと思うよ。」

「そんなことないよっ!」

「それに……明と兄弟は嫌かな。」

「えっーー!なんでなんで!」

「友達だから?」

「……確かに。」

「それに、駄々こねそうだし。お世話大変そー」

「えー、そっちが本音じゃない?」

「あはは、かもねー!」

私たちは飲み物とアイスを買うと、再度公園へ向かった。

「そういや、先輩たちは兄弟いるのかな?」

「イメージ無いね。望先輩はいなそうだけど…」

「確かに!けど、晴先輩は妹いそう!お姉ちゃんっぽいし!」

「あー分かるかも。」

「次遊ぶときに聞いてみよっか!ふふったのしみー!」

「……」

明はらんらんとスキップをしだした。

「やっぱり、弟がいるって信じられないね。明は…妹っぽい。」

「ほめてる?」

「ほめてる、ほめてる。」

私はお茶をひとくち飲むと、明と一緒に駆け出した。

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2025年12月23日 06:00 毎週 火曜日 06:00

1たす1は? 有部 根号 @aruberoot1879

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