第26話 自己表現とは

 昨日の本音の話と関連して、今日は自己表現について書いてみます。


 私は自己表現が怖かった人間です。目立たないように、余計なことを言わないように、当たり障りなく生きてきました。


 幼少期や小学校低学年辺りまでは、本当に怖くて幼稚園や学校で何もしゃべれないという事象に苛まれ、まあまあ苦労しました。特に人間関係がヤバかった。


 幼稚園・小学校低学年まで、普通の人が当たり前にやっていることである『話すこと』が幼稚園や学校でほぼできなかったため、自分は誰より劣っているのだろうと自信を持てずに生きてきました。ちなみに家では普通に話していました。


 こうして文章を書こうと思ったのはそういう背景があるのかもしれません。表現が怖いという気持ちと、でも表現がしたい、という強い思いが心の奥底に残っているのでしょうか。


* 


 先日『アンリ・マティス』の展示を見て思ったことを書いてみます。

 

 なぜ人は芸術を鑑賞しようと思うのでしょう。理由は人それぞれあると思いますが、私は多くの人から称賛される芸術に実際に触れることで、自分が何を感じるか知りたいと思いました。


 色使いが好きだ、画風が好きだなどの好みはあります。何となく見ていて気持ちが良いということも感じることがあります。


 でも、それ以上の何か、人を魅了する何かがあるはずだ、それを自分も感じてみたいという想いもありました。


 美術館などに行くと何かしらのインスピレーションを得られることがあります。そのインスピレーションは芸術と自分との対話から生み出されたもの。それは面白いと思います。


 アンリ・マティスはもともと好きな画家さんだったので、見に行って良かったと思いますが、今回は、国立新美術館の外の庭?に展示されていた、みかんやぶどうの作品について書いてみます。


 みかんやぶどうの木が展示されていて、さらにプラスティックのアクリル板のような仕切りにじかに本物のみかんの実やぶどうがくっついていたりする作品でした。


私はその作品を見て思いました。


『何でもアリだな』


 プラスティックの仕切りに直に本物のみかんがくっついていた。なんで? その板に直にボンドかなんかでくっつけたの?


 果実は木の枝から成るものだ、という常識を覆す表現だったので、目を引いたのです。


 学校で作ったら先生に怒られそうな勇気ある表現だな、とも思いました。


 私は幼稚園の時、自分なりの自由な画風で絵を描いたら廊下に立たされたことがあります。自分はなんで立たされたのか全く心当たりもなく、理解できなくて、すごく悲しかったし、若干恥ずかしかったです。親にも言わなかったな。

 立たされている私を園長先生がたまたま見つけてくれて、教室に戻してくれました。たしか黒のクレヨンでぐちゃぐちゃに何かを書いたような絵だった気がします。その幼稚園の先生は私がふざけて書いたと思ったのかもしれません。でも私は大真面目に書いてました。


 その経験は、小さい子どもながらに、評価を下す人の意向に沿ったことをやらなければならないと強く思わせるものでした。自分を主張することが怖くなった経験だったと思います。


 みかんの木の作品について話を戻します。私は芸術の勉強もしたことないし、鑑賞の場数も少ない、何の知識もない素人です。

 そんな私の正直な感想は「芸術ってなんでもアリなんだな」でした。はっきり言ってよくわからないです。


 ただ、わかることもありました。それはその意味不明さを全面に出しながら、『これでいいのだ』と、堂々たる作品として発表していく強さがあるなーと。


 エネルギーや確信や情熱がそこに込められていて、その見えない部分を感じて私は感動したり何かを感じとっているのかもしれないと思いました。


『これでいいのだ』は、天才バカボンの名言ですね。そうです。『これでいい』のです。


 その確信と肯定の強いエネルギーで、作品に価値を付与する強さが芸術なのかもしれないとおぼろげに思い巡らせました。


 そして、芸術やその解釈には正解はなく、人の数だけ解釈があっていいのだと思います。


 冒頭の話に戻りますが、自分に対して確信と肯定の強いエネルギーが向けられていれば、『自己表現』を楽しめたり、もちろん『話すこと』だって楽しめるのでしょう。


 そのみかんの作品の画像をノートに貼っておきます!

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