第84話 残敵掃討!

「す・・・・、スドウさん・・・・。あなた…いったい何を!?」


ルイーゼは目の前で起きた状況を呑み込めない様子だった。


さきほどまでいたはずのブラックオーガの姿はそこになかった。


あるのはグロテスクな黒い肉塊と化した死体と、肉が焼ける生々しい臭いだけだった。


須藤の開発した魔導機雷にブラックオーガはまんまと引っかかったのだ。


回天冥獄陣が解かれた後であっただけに魔力周波数もスコットことブラックオーガの固有の周波数に戻っていたのだった。


最もブラックオーガは最後まで回天冥獄陣の具体的な性質を知る由もないまま冥府へと旅立ったが。


ブラックーガの爆散した肉片と死体から耐えがたい臭いが立ち込める中、ルイーゼは須藤に質問する。


「“回天冥獄陣”という技。それを発動した直後、あのブラックオーガから魔力が消えたというか・・・、あなたのコントロール下に置かれた・・・」


「あなたが発動したあの魔法・・・。まさに伝説の禁術・回天冥獄陣!!伝説の魔女ガトリングのみが会得できたというあの禁術をなぜあなたが!?」


「話は後だ、ルイーゼさん!まだスコットことブラックオーガの部下どもが残っている」



爆散した黒い肉塊と化した元スコットのブラックオーガの死体を見て、部下たちは明らかに右往左往していた。


「スッ、スコット様がやられるなんて!!」


「マジかよ、あの人間何者?」


「どうする!?とりあえずここは撤退してスコットさんが倒されたってモールス局長とイーストマン団長に報告すべきでは!?」


「バカやろう、そんなことしたら俺らが局長や団長どころかスキ・・・いや女王陛下直々に八つ裂きにされちまう!!!!」


「そっ、それじゃ戦うしか・・・・」


動揺する人間の兵士をオーガ兵とデーモン兵が一喝する。


「何をビビってる!あんなの何かのハッタリまぐれに決まってる!!ぶち殺せ!!」


「おまけにさっきの大技。あれだけの技をくりだしゃ残りの魔法力はそれほど残ってねえ!!俺らは魔法力も体力もぴんぴんしてんだぜえ!!!!」


甲冑に身を包んだ人間の兵士と、デーモン族及び、スコットよりやや小柄だがやたら図体の大きいオーガ種が妙にカラ元気を出してきた。


そして連中は。




「かかれえええええ!!!!!!!!!!」


「うおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!」


「相手は人間のガキとエルフだけ。魔法力も残存はそれほどねえだろ!!!!」


「ガキさえ殺しゃエルフちゃんたちと今夜もたっぷりおねんねだあああああ!!!!!!!!!」




しかし、兵士とモンスター兵の怪気炎とは裏腹に須藤はいたって冷静な姿勢を崩さない。


たしかに連中の言う通り回天冥獄陣を発動して魔法力はかなり消耗した。


ポーションで回復もできるが、奴らがそれを流暢に待ってはくれないだろう。


それでは。


残存兵力が一斉に剣やら金属棍棒を振り回し、デーモン族は攻撃魔法を放ってきた!


奴らのファイアボールやブリザード系の攻撃魔法が飛んで俺やルイーゼさんに至近距離にまで着弾してきた!


「スドウさん!こいつら一個小隊(約50名)くらいいるわ!今の私たちじゃ迎撃しきれな・・・」


ルイーゼさんが叫んでいる途中、俺がマブクロに手を突っ込んだ。


重く鈍い輝きと中心部分がくりぬかれて軽量化された銃床(ストック)を持つ物を取り出したのと、ルイーゼさんの表情が変わったのは同時だった。


手にするはブラッディデーモンの洞窟で鹵獲した旧ソ連製PK汎用機関銃。


即座に銃下部に弾薬箱を装着し、機関部上部のカヴァーを開けて7.62mm×54R弾を装着済み250連非分離式金属弾帯をセットし、カヴァーを閉じた。


コッキングハンドルを手前に引き、7.62mm×54Rの第1弾を薬室(チュンバー)に送り込む。


近くにあった小さな岩の上に2脚(バイポッド)を載せて安定させ、俺も伏射の姿勢をとった。


迫りくる50名ほどの凶暴な暴力へ向けて俺は引き金を絞った。



ドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!


ドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

ドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!


甲高い金属と火薬が入り混じった鉄の突風が須藤の前方に向かって放たれた!


反動は彼の体を大きく揺らし、撃つたびに後ろにのけぞりそうになったが彼は耐える。


強烈な反動が右肩に来るが、関係なく迫りくる目の前の暴力に向かって引き金を絞り続ける。


長篠の戦いの要領で乱射する7.62mm×54R弾は兵士たちの甲冑を容易く貫通していく。


「ぶげええっ!!!!」


「あぎゃっ!!!!」


「ひいいいいいっっ!!!!なんだよあれっぶっ!!!」


7.62mm×54R弾が兵士もモンスター兵も関係なくその胴体や頭に穴を開け、あるいは吹き飛ばした。


赤い血と魔族の青い血が絵具のように地面に叩きつけられていく。


「ううっくそったれがああああ!!!!」


デーモン兵の中には防御魔法を全開にして弾丸を防ぐ者がいる。


だが、集中射撃によりコンクリートをも粉砕する7.62mm弾の前に防御魔法の魔法陣にひびが入り、あっけなく貫通してデーモンの頭と腕を吹き飛ばし、地面に倒れたそれはしばらくびくびく痙攣した後で動かなくなった。


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