第79話 真実の断片
「始原の暁!?なんだそれは?」
ブラックオーガは俺の質問に完全に見下した表情をした。
「さすがは無知な中坊だな。洞察力が通常のガキより余計にあるとはいえ肝心なところは知らない、のも無理はないがな!」
「“始原の暁”とは 我らが全能の“教祖様” を頂点に現実世界のあらゆる領域を支配する宗教団体の事だ。その支配領域は特定の業界、組織、国籍すらをも超える」
「クソガキ。貴様はこの世で最も強い権力とは何かを知っているか?」
「この世には3つの権力がある。教祖様はその3つのすべてを支配しておられる」
「!?」
いぶかし気な須藤をよそにブラックオーガは続ける。
「第一権力は軍事を含めた政治権力。軍事は政治の延長であるからその中に含まれる」
「第二権力は経済権力」
「そしてそれらに次ぐ権力にして最強の権力、人の心を支配する権力、それが第三権力である宗教権力だ」
「我らの主にして絶対的な救世主であられる教祖様はその第三権力を掌握しておられるのだ!」
「・・・・・何を言っているおっさん!?」
「ハッハッハッハ!!!!中2のガキに理解するには少し早すぎたか!!ガキにはちと難しかったか?まあいい、詳しく知りたきゃあの世か転生先で勉強しな!」
「何言ってんのか分かんないけど、俺がこの世界に転生したのはお前ら日本の政府がやったことだというのか?」
「ご名答、と言いたいところだがややおしい。お前のような特殊な着目点を持つ子供は教祖様のこれからの計画に重大な支障をきたす恐れがあるとAIが判断してな。我らが特公が秘密裏にお前のような将来厄介になりそうなガキや、使い物にならん奴らをうまく利用する事業を展開しているだけさ」
「言っておくが誰に訴えようと無駄なことだ。これは秘密裏に“傘下”の政府の方針として決定されたことだ。なにせ“現実の世界においてもすでに”政界、経済界、司法界、芸能界どこもすべて既に9割以上は我が“始原の暁”の支配下にある。当然この世界のどの政府もだ!どこへ訴えようともお前のような虫けらが何をほざこうともそれに耳を傾ける者などどこにもおらんぞ!」
「質問に答えろ!日本政府がお前らの飼い主で、俺をこの世界へ転生させたのは政府なのか!?それと“特公”ってなんだ!?」
「“日本政府”など我が“教祖様”の下請け団体に過ぎん!“特公”もだ!」
「そして、 “組織”の区別など我ら“始原の暁”の前には“意味”をなさない”。“現実の世界“においても、この”ルミナバール“においても。とだけ言っておいてやろう」
「???・・・いったいどういうことだ・・・・!?」
「・・・・・・・」
「衝撃のあまり口もきけなくなったか!それじゃおしゃべりもここまでにして・・」
「まあ、いいことを聞いたぜ」
「ん~!?何を言っとるんじゃ貴様!!!!己の置かれた状況に絶望して気が触れたか!?」
「まるで分っていないようだなデカブツ。これから処刑されるのはお前なんだよ」
俺はマブクロから例の謹製魔導機雷を取り出した。
取り出してもシャドウの衣で覆われたそれは奴には見えない。
瞬時に奴の魔力周波数を測定する。
脳内のステータスに奴のデータが表示され、魔力周波数が映し出された。
「魔力そのものは兄弟でも、見かけと同様、実に単純な波長の魔力だ。これは機雷にインプットしやすい」
魔導機雷に敵をホーミングさせるにはその魔力周波数を入力する必要があるが、その周波数は相手によって波長が当然異なる。
力任せに戦う奴や、未熟な者、補助程度でしか魔法を使わない者は周波数の波長が単純なので機雷に入力しやすい。
しかし、熟練したレベルの高い魔導士などの魔力に熟達した者の魔力周波数は複雑だ。
前にベルリオーネさんの魔力周波数をひそかに計測したことがあるが、複雑怪奇である上にかなりの部分測定ができなかった。
恐らくベルリオーネさんクラスの魔導士となると敵から自分の魔力周波数を探知されぬよう何らかのプロテクトをかけているのだろう。
よってレベルの高い魔力持ちの奴の周波数を探知するにはさらに俺自身が実力を上げなければならない。
もっともガトリングさんのおかげでそんな心配もそれほどしなくてよい奥義を得ることができたからそれほど気にすることでもないが・・・。
目の前のスコットこと正体は黒い醜悪なオーガは魔力を使うが基本は打撃主体のバケモノ。
周波数を特定して機雷に入力するのは一瞬で済んだ!
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